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ミュープランニング 小吹 雄一郎社長 SELECT対談――力の源グローバルホールディングス

世界中が“ニッポンのラーメン”に注目! 2016年には「海外の売り上げが国内を上回る」時代が到来する

【月刊HOTERES 2015年05月号】
2015年05月15日(金)
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アジアへの出店は「一長一短」 
 
一方、韓国・香港・中国といった東アジアや、マレーシア・インドネシア・フィリピンなどの成長著しいASEAN も重要な都市に変わりはありませんが、欧米と比べると、アジアではその国特有の制限や商習慣が多い。現地パートナーがいた方が安定した成長が望めるので、「合弁(マレーシア・タイ・インドネシア・香港)」、「ライセンス契約(韓国・フィリピン)」で展開しています。

小吹 アジア圏進出のメリットとデメリットは?

山根 デメリットから先に言うと、一部で反日感情が高まっていたり、エリアによっては、自然災害、汚職・賄賂、政治的リスク、インフラ整備の遅れなどが挙げられます。われわれが上海1号店をオープンしたときは反日運動の最中で、現地パートナーがいて良かったと実感しました。
 逆にメリットは、中華圏における華僑や、フィリピンにおけるスペイン系移民などが、国境を越えてすごいネットワークの威力を発揮しているということです。日本企業単体では到底入れない巨大モールの一等地などに、彼らの鶴の一声で入れたりすることも。日本企業はそういったネットワークの仕組みをよく理解しておきたいものです。

小吹 アジアは欧米とはまったく違う手法が求められます。

山根 しかもアジアは国ごとにルールや商習慣がバラバラ。画一的な対応では厳しい。欧米もアジアも、それぞれに長所・短所があるということ。海外進出を一枚岩に考えていると危険かも。

グローバル企業に求められること

小吹 海外モデルを構築する上で成功のポイントは?

山根 まずはどこまでブランドを現地化するかの見極めでしょう。われわれは「日本の食文化を世界に広めたい」をミッションに掲げているので、現地の人が” 日本のラーメン” と分かるかどうかを重視しています。だから例えばタイでもトムヤムラーメンなどは出していません。まったく現地化しないという判断もあるでしょうし、その逆もあるかと。

小吹 その見極めのための「眼力」はどうやって養うのでしょう?

山根 現地でありとあらゆるところを食べ歩いて” 肌感覚” で理解することです。例えば香港の人は1 日平均3.5回食事をすると言われています。1 回に使う食事代の感覚が日本人の感覚とは違うのです。何度も食べ歩いて定量調査を重ねることで、現地で高め・低めというのが肌感覚で分かってきます。スマホのレポートアプリなどを活用して、情報をストックしています。
欧米でも同じ先進国なので米国NYの運営ノウハウをフランス・パリに持っていけばいいというわけではないです。米国にはチップ制が定着しているので、スタッフはできるだけ手厚くサービスしますが、チップ制がない欧州で何度もお冷を取り替えたらやりすぎで、違和感があります。国ごとに柔軟に対応することが大切です。

小吹 マレーシアやインドネシアなどのムスリムカントリーで豚骨ラーメン店を出す際の勝算は?

山根 マレーシアは人口2400 万人の多民族国家で、イスラム教徒であるマレー系がメインですが、華僑などの中華系やキリスト教が全体の25%系を占めています。インドネシアも多民族国家ですが、2 億8000 万人のうち5%は華僑です。国民全員が食べられるラーメンではないけれど、マーケットとしては十分、勝算があります。

小吹 御社のように世界中にスタッフがいると、教育や統括はどのようにするのが理想なのでしょう?

山根 それは日々、私も最適化に悩んでいる部分です。出店に関しては全世界で業態開発チームが縦横無尽に動いていますが、店舗運営に関しては、例えば米国・欧州・アジア・日本のようにエリアごとに分けて統括した方が効率的かなと思っています。というのも、労務や税金など、現地にしか分からない部分も少なくないから。でも現地にすべてを任せてしまうと、いざというときの対応が本部で取れないのは…という心配もあります。

 本部で全世界を一括管理するのはもはや難しく、文化圏ごとにある程度、“ エリア完結型” にするのが現実的だとは思います。でも年に何回か全体で集まる機会を作るという工夫は必要だと思います。実際、今、世界中の料理人が日本に集まって研修などを実施していますが、彼らにとっては来日すること自体がステータス。モチベーションも上がり、料理人同士が異文化交流しながらライバル意識を持って高め合っています。

 弊社の現地パートナーは現地でほかのレストランを経営していたり、飲食以外の事業を展開していますので、われわれが現地でのビジネスを逆に教えてもらうことも多いです。日本からのトップダウンではなく、互いにアイデアをシェアし合いながら、高めているところです。

小吹 最後に今後の展開は?

山根 ユネスコ無形文化遺産に和食が登録されたことやインバウンドの流れなど、今、ラーメンに世界中の関心が集まっています。この世界的なトレンドを日本人はうまく活用しない手はない。「一風堂」としては、2016 年には国内売り上げを海外売り上げが上回る予定です。今後も積極的に出店することを目指していますが、今後の成長率で言うと当然、海外の方が大きい。これからも全力投球でまい進していきます。
 

㈱力の源グローバルホールディングス
取締役事業開発本部 本部長
山根 智之
〈profile〉1977 年生まれ、アメリカやベルギーの大学、大学院を経て、2010 年フランスHEC 経営大学院MBAを卒業後、海外事業部マネージャーとして力の源カンパニー入社。ホールディング化移行の組織構築や海外事業開発に従事。親会社である㈱力の源ホールディングス執行役員兼、海外事業統括会社・Chikaranomoto Global Holdings Pte. Ltd 取締役

㈱ミュープランニング
代表取締役社長
小吹 雄一郎
〈profile〉1998 年早稲田大学政治経済学部卒業。金融機関や外食大手を経て2010 年、サントリーグループの外食向けコンサルティング会社ミュープランニングアンドオペレーターズに入社。日系外食チェーンの海外進出コンサルティングを数多く手がけた実績を持つ。14年11 月に、統括していた企画・プロデュース部門をサントリーからMBO(経営陣による買収)

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