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SPECIAL TALK 一般財団法人 日本総合研究所 会長 野田一夫氏 × 一般社団法人 日本旅行業協会 広報室長 矢嶋敏朗氏

序列社会の錯覚から脱却すれば 志を抱いた学生と観光業界の ハッピーなマッチングが実現する

【月刊HOTERES 2016年06月号】
2016年06月17日(金)
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大学の観光学科を卒業しても、観光業界に就職できない————。教育の現場とビジネスの現場の間に広がってしまった矛盾を修正するための挑戦は、観光に関わる教育者、経営者に課せられた大きな使命と言えるだろう。観光業の未来を支える人材の育成を考えたとき、日本の大学の観光学科、観光業界のどこに問題点があるのだろうか。そしてその解決に向けた取り組みは、どのような姿勢で為されるべきなのか。本来的な観光について教育とビジネス、両方の側面からあるべき形を見続けてきた野田一夫氏と矢嶋敏朗氏が、お互いの持論に基づく提言を熱く語り合った。

一般財団法人 日本総合研究所 会長 野田一夫氏
一般社団法人 日本旅行業協会 広報室長 矢嶋敏朗氏

大学に必要なのは抽象論ではなく
現場を十分知った上での教育
 
野田 この対談の前文とも言える私の一文では敢えて記述を省きましたが、日本では大学の新設のみか、既設の大学による学部・学科の新設に関しても、文科省による「大学設置基準」に基づく複雑な審査をパスすることが前提となります。日本の大学では初めてとなった立教大学の「観光学科」設立に当たって、初代学科長候補者として生まれて初めてその形式的に実に複雑な審査を経験した私は、この現実に大きな疑問を感じました。
 
 大学の学部・学科は慣習的に“ 理系”と“ 文系” に分けられていますが、文系では“ 法律”・“ 経済” 両分野に関しては学問分野としての歴史的蓄積が大きく、結果として大学設置基準に対応し易い社会的諸条件が一応整っています。ところが、“ 観光” の分野ではそれが整っていなかったことが、かえって学科設置には役立ったような気がします。
 
 ところが、開学後の時の経過につれ、個々の教員や多くの学生との接触を通してわが学科の教育の実態が分かり始めるとともに、学科長としての私の心の中には、「わが学科の卒業生は、果たして採用者側の期待に応えられるだろうか?」と言う不安が急速に広がって行ったものです。
 
 具体的に言えば、観光学科の卒業生の多くは、当然観光業界大手各社への就職を希望していたはずでしたが、「わが学科の学生が在学中に身につけた知識は、果たしてホテル・旅館業界や旅行業界大手各社側にとって、諸大学の法・経系学部卒業生に比し何が魅力的なのか?」と自問してみて、自信が持てなくなったのです。学者育ちの教員の多くは、観光業の実態にとくに通じていなかった上に、豊かな観光の経験の持ち主でもなく、業界育ちの教員の多くも、その知識や経験が時代に叶うとは言いがたいと感じたからです。
 
矢嶋 実学出身で観光を教えている先生の場合、経営者としての武勇伝を講義で語る方がいらっしゃいます。ただしそれは10 年から30 年程前のお話が中心で、毎年状況が大きく変化していく今の時代の実態とはかけ離れた内容になってしまうことが多いようです。
 
 また、企業のビジネスの現場からそのまま入ってくるため、講義に必要なコマ数(15 回)をこな させるだけの内容を持ち合わせていないという問題もあります。コマを埋めるために毎回違う元の部下をゲストスピーカーに呼ぶケースも珍しくありません。一方、アカデミックフィールド出身の先生は、旅行業の最新動向や課題を殆ど理解されていない・・・。実務家教員とアカデミック教員との連携不足。そして、うまくバランスの取れた先生が十分に確保できていないことが、日本の大学の観光学科における課題だと思います。
 

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