●分析／平尾進一
（ホテル会計システム研究所代表／公認会計士・税理士）
長谷川江利子
（事務所スタッフ）
 
当企画では、有価証券報告書を公表している日本のホテル企業から15 社の、2014 年度（2015 年3 月期など）の収益性、安全性、成長性、生産性、連結財務諸表の分析および減損会計の状況などから、5 週にわたって分析結果を掲載する。
※今回、㈱プリンスホテルが加わっている
 
 
　特に重要な№ 5 の比率の平均を見ると、1988 年度の38.6％をピークに、2001 年度の25.4％まで13 年連続下落していた。また2010 年度には、㈱ロイヤルホテルが151 億6800 万円、カラカミ観光㈱が35 億9421 万円、㈱パレスホテルが31 億5640 万円、㈱帝国ホテルが17 億600 万円など当期純損失を計上した会社が8 社もあり、15社平均で13 億6053 万円の税引後純損失という異常事態となった。そのため、15 社合計の自己資本総額は16 億6192 万円も減少し、№ 5 の平均値は28.5％へと1.9 ポイントも下落した。近年は、2013 年度は28.8％、2014 年度は30.3％、そして2015 年度は30.7％と、3 年連続で向上している。
 
 
2015 年度安全性1 位グループは、
オークラニッコー、ホテルニューグランド、
24 年連続の帝国
 
　㈱オークラニッコーホテルマネジメント（旧㈱JAL ホテルズ）は、№ 2 ～ 8 のすべての比率が1 位となっている。しかし、№ 2 ～ 4 と№ 7 の比率については、同社がホテルの土地・建物を保有していない点を割り引く必要がある。一方、№ 9、№ 10 の比率については最下位で、現預金は5820 千円しか保有しておらず15 社中最も少ない。それでも、2012 年には無借金経営、無リース料経営を達成し、№ 6 と№ 8 の比率は0％で1 位である点を高く評価し、安全性1 位グループとなった。
 
　㈱ホテル、ニューグランドは、リース料未払残高を考慮すると他社が順位を下げるため、№ 2 の比率が3 位、№ 5、№ 6 の比率が2 位となる。その他の比率も上位のものが多く、安全性1 位グループとなった。
 
　同社はかつて18 年間安全性2 位を維持し、2012 ～ 2013 年度は無借金、未払リース料ゼロで1 位に並んでいた。また、№ 5 の比率については、2007年度までの約12 年間1 位を維持していた。2007 年度には㈱帝国ホテルが1位となったが、2010 年度～ 2013 年度までは再び4 年連続1 位であった。前回2014 年度はホテル本館の大規模改修工事の影響で当期純損失を計上し、自己資本の減少、借入金の発生等により№ 5 の比率は10 ポイント減少して3位となり、安全性評価は3 位であった。同社は約85 年の歴史の中で、海外進出や地方都市への出店などを一切行なわず、横浜の山下公園前のホテルで顧客サービスと伝統による経営に徹していることが好結果となっている。
 
　㈱帝国ホテルは、重要な№ 2、№ 5、№ 6 の比率について、リース料未払残高を固定資産額、借入金額、総資産額に含めて算出しなおすと、それぞれ93.4％で2 位、61.2％で3 位、13.7％で3 位となる。また、№ 10 の比率は32.7％で15 社中1 位であり、233 億円もの現預金を保有している。同社は120 年以上の歴史の中で、地方都市への出店も1996 年の大阪以外には行なっていない。また、顧客第一主義により外国人客からの評価が非常に高く、稼働率が良く収益性が高い。このような着実な経営方針と収益性の良さで、24 年間連続安全性1 位（グループ）となっている。
 
 
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