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第一回 柴原陽子  人を育てるコーアクティブ・コーチング® 

第一回 コーチングを文化に

【月刊HOTERES 2017年01月号】
2017年01月13日(金)
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株式会社ウエイクアップ
ラーニング事業本部チーフディレクター
柴原陽子
〈プロフィール〉大阪生まれ。1986 年ヒルトン大阪の開業時に入社し、人事部長付秘書を経てトレーニングマネージャーとして教育全般に携わる。2000年のユニバーサル・スタジオ・ジャパン® の開業時には、教育研修担当として入社し05 年パーク全体のゲストサービス統括として初代ゲストサービス・クオリティー・マネージャーとなる。就任中はゲストサービスにおいてパーク全体で様々な施策を展開してきた実績をもつ。人材育成コンサルタントとして独立後は、伊豆熱川温泉旅館の「女将」経験も活かしながら、ホテル・旅館を主としたホスピタリティ産業企業を中心にコーチング手法を取り入れた教育と企業の発展にむけた組織改革を行っている。また、「コーチング」を02 年より学び始め、現在は㈱ウエイクアップと契約し、コーアクティブ・コーチング® のプロフェッショナルコースのトレーナー兼同社ラーニング事業本部チーフディレクターとしてコーチ育成事業に携わることで広く社会に広める活動もしている。「コーアクティブ・コーチング®」は株式会社ウエイクアップ CTI ジャパンの登録商標です。より詳しくお知りになりたい方は、CTI ジャパンのホームページをご覧ください。http://www.thecoaches.co.jp/
 

~はじめに~
今週号より連載させていただくことになりました。『今、なぜホスピタリティー産業にコーチングが必要なのか?!』という大きなテーマのもと、現場で実際に起こっていることや私自身が経験したことを交えながら、読者の皆さんに役立つ情報や具体的な提案を提供していけたらと考えています。

〜コーチングを文化に〜
 現在『コーチング』は、ビジネスマンであればほとんどの方が知っている単語だと思いますが、いろいろな方と話をするとイメージはさまざまのようです。今では、コーチングを教える機関も増え、さらにいろいろなイメージを持つ方が増えたのではないでしょうか。
 
 ただ、このコーチングを効果的に活用されている現場が実際どれくらいあるか、と考えると、日本においてはまだまだ発展途上だと感じています。特にこのホスピタリティー産業においては、必要なことであると分かりつつ、現場のスピード感にはそぐわない、ほかに教えることがたくさんある、自分自身がコーチングされた経験がない、効果が見えづらい、等々の理由から研修はしてみたものの現場では浸透しないという声をよく耳にします。コーチングは高度なコミュニケーション技術であり、また人としての在り様が問われるアプローチです。私としては、コミュニケーションのプロフェッショナルであるホスピタリティー産業従事者には、ぜひとも身に付けていただきたいアプローチ方法であり、今後の人材育成や企業の発展には必要不可欠な要素だと考えます。
 
 
~コーチングとの出会い~
 
 そもそも「コーチング」という能力開発手法は1990 年ころから米国を中心に広がり、日本には2000 年ころに上陸しました。今でこそ「コーチング」と名のつく書籍や文献を探すことはたやすいことですが、私がコーチングと出会った2002 年ころには全くと言っていいほどなく、私の目にとまったのは1 冊のみでした。『部下を伸ばすコーチング―「命令型マネジメント」から「質問型マネジメント」榎本英剛 著(PHP ビジネス選書)』がそれです。トレーニングマネージャーとして組織の中で教育していく中で、この「コーチング」を取り入れることが教育体系や教育文化を大きく変えるかもしれない、という大きな期待のもと、「コーアクティブ・コーチング®」をワークショップ形式で提供しているCTI(The CoachesTraining Institute)(以下CTI)ジャパンの扉をたたきました。1992 年に米国で開設されたCTI のトレーニングを受けた前述の榎本英剛氏がCTI とのライセンサー契約を実現し、日本に導入した最初のコーチ養成機関です。研修業界に大きく変化をもたらすであろうことは想像していましたが、まさか自分自身の人生までもが大きく変化することになるとは…。これはまたおいおいお話しすることにいたしましょう。
 
~コーチングは筋トレ~
 
 ご承知のように、コーチングとは、基本的に何かを教える訳ではなく、質問をして本人から答えを引き出すコミュニケーション手法です。では、コーチングはどの能力開発分野に大きく影響を及ぼすのでしょうか。能力開発分野とは、大きく「知識」「スキル」「意識・思考」の三つですが、答えは簡単ですね。「意識・思考」分野です。「コーチングは筋トレ」と書きましたが、ここでいう筋トレとは何の筋肉を鍛えることなのかというと、「考える/思考する」筋肉を鍛える、ということです。現場ではいろいろな知識を増やし、スキル/技術を磨いていかねばなりません。管理職であれば組織を管理するための知識やマネジメントスキル、人材育成スキル等々、組織を管理成長させるための知識やスキルが求められます。そして、それらに多くの「研修」やOJT の時間を使っていると思います。ただ、一番変化をもたらすのに時間がかかり、難しいのが「意識・思考」です。この難しい分野に対してどのような時間をどれくらい設けているでしょうか。「どのような意識、思考で働くべきか」を「知識」としてティーチングしているのだとしたら、それは「知識」に対する働きかけであり「意識・思考」分野の開発には少し物足りない気がします。まずはどの分野に何をしているのか明確にする必要があります。
 
 ここで、質問です。
「あなたは部下に対して、どんな人材に育ってほしいと願っていますか?」
 
 少し考えてみてください。そして、それを言葉に出して話したり、書いたりしてみてください。言葉に出してみて、書いてみて、違うな、とか、もう少し何か言葉が必要だな、とか思ったらまた言葉に出してみたり書いたりしてみてください。
 
 こうして一つの質問に対してじっくり考え、丁寧に自分の考えを組み立てていく、この積み重ねが「考える/思考する筋肉を鍛える」ことになります。「問い」が筋トレには重要な役割になるのです。さて、この問いについて考えてみて、何か気づくことはありましたか?どんなささいなことでも構いません。「気づいたことがあるとしたら…」と考えること自体がもう筋トレになっています。
 
 大切なのは、期待している答えを話させるための「問い」ではなく、その人自身がその人自身のために何かに気付く一つのきっかけになる「問い」です。そういう意味では、普段あまり考えない、すぐには答えられない問いが効果的な「問い」です。「問い」は「思考する文化」を創ります。まずは、あなたの組織でそんな「問い」が飛び交っているかどうか見渡してみてください。そこからがコーチングのスタートであり、意識変革の始まりです。
 

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