ロボットが接客する
デスティネーションホテル
 
　変なホテルは先進技術を導入し、ワクワクと心地よさを追求したロボットを活用したホテル。第1号店となる長崎県ハウステンボスに開業した際は、フロントに設置された恐竜型ロボットを見て、世界中のメディアが大興奮。その情報は一気に拡散し、「変なホテルに泊まってみたい、ロボットが接客するシーンを体験したい！」という声が広がり、一夜にしてデスティネーションホテルとしての地位を築いたのである。と同時に、『初めてロボットがスタッフとして働いたホテル』として、ギネス世界記録に登録。今や世界中が注目するホテルである。
 
スタッフは7人
仕事内容はエマージェンシー対応
 
　変なホテルと言えば、“労働生産性の高いホテル”として、ホテル業界の期待の星。その生産性を実現したのが、サービス型ロボットである。今回の「変なホテル舞浜 東京ベイ」では、9種類140体以上のロボットが稼働。敷地面積約2000平方メートルの場所に、日本のサービス型ロボット技術が集積されている。
　では、同ホテルのスタッフは何人なのか。同ホテルの長井超生支配人は「7人（社員3人、契約社員・パートナー4人）です。主な仕事内容は、ロボットにはできないエマージェンシー対応を行ないます」とコメントした。緊急時の対応は、まだロボットにはできないようだが、ホスピタリティー業務は人が、ルーティン業務はサービス型ロボットが担当するという、すみ分けができている。

くしゃみする恐竜ロボットに脱帽
 
話をホテルに戻そう。変なホテル＝恐竜ロボットと認知している方も多いのではないだろうか。それほどまでに、ハウステンボスの変なホテルは恐竜ロボットが注目を集めていたように思う。「変なホテル舞浜 東京ベイ」でも、その恐竜ロボットは設置されている。フロントに設置された2体の恐竜ロボットがゲストのチェックイン・チェックアウトをサポート。日本語だけでなく、英語・中国語（簡体）・韓国語の計4カ国語に対応。海外のゲストはパスポートをセンサーにかざすとチェックインができる。ロボットからのアナウンスに沿って音声認識またはタッチパネルを利用し、ゲストのルームキーが自動で用意される。また、「変なホテル」のコンセプトどおり、恐竜ロボットは時折喉を唸らせ、くしゃみもする。このユニークさはさすがとしか言いようがない。
 
フォトスポットに最適?!
ティラノサウルスが襲ってくる
 
　フロントからロビーに目を向けると、今にも飛びかかってきそうなティラノサウルスがゲストをお出迎え。1/1スケールのティラノサウルス模型の前は絶好のフォトスポット。テーマパークホテルとしての人気を確立するための要素は、フォトスポットがあるかどうか。その点においては、恐竜ロボット、ティラノサウルス、魚類ロボット、ミニ恐竜ロボットなどが点在しており、フォトスポットには事欠かない。変なホテルはロボットに目が向くが、実はこうしたフォトスポットを随所に設置していることにある。つまり、どの箇所もフォトスポットになり、ゲストが情報発信を行なってくれるのだ。同ホテルであれば、「修学旅行で東京ディズニーリゾートに行ったけど、どのホテルに泊まったか覚えていない」ということはないだろう。恐竜がいた、変なホテルに泊まったという記憶が残るのである。
 

人工知能搭載ロボット「Tapia（タピア）」

AIを搭載したロボット「Tapia」を
客室に設置
 
　客室は全100室。客室構成は、スタンダードツイン（18.5㎡）、スタンダードトリプル（23.5～24.5㎡）、コーナーツイン（26㎡）。2名～4名利用の客室をそろえている。昨今、マットレスが大ブームだが、同ホテルでは、新幹線座席に使用されている東洋紡が開発したマットレスを導入。体圧分散性・通気性に優れた逸品。また、日本のホテル初であろうクローゼット型クリーニング機が導入されている。
　そして客室の目玉はなんといっても、AI（人工知能）を搭載したコミュニケーションロボット「Tapia（タピア）」の存在。タピアに話しかけることで、テレビ・空調・照明のオン・オフが、音声とタッチパネルにより操作可能。人の手の形を識別することで、じゃんけんなどの遊び機能も搭載している。なお、タピアはバッテリー式のロボット。万が一充電が切れた場合、客室内に備え付けのある充電器で充電ができる。
 
朝食は洞窟の中で
 
　朝食はロビー横に設置された1階のレストランで楽しめる。洞窟のようなデザインを取り入れたレストランでは、ブッフェ台を低めに設定したキッズ目線で設計。「パフェ作り」の体験や、流行りの「パワーサラダ」などの目玉メニューが用意されている。
営業時間は6時30分～9時30分まで。H.I.S.の関連会社がブッフェスタイルでメニューを提供する。価格は大人1800円、小学生以下900円、3歳未満は無料。席数は50席。

レストラン

ADRは2万円、客室稼働率90％
 
　記者会見で、前出の長井支配人は「ADRは2万円、客室稼働率は90％を目指す」とコメント。TDR周辺ホテルの価格を考慮すれば、決して不可能な数字ではない。小誌で毎年11月に特集『日本のベスト300ホテル』と題して、日本全国のホテルADRや稼働率をまとめているが、ディズニー直営ホテルがADRで5万円以上、オフィシャルホテルで同2万5000円台、パートナーホテルで同2万円以上となっている。その辺を考えれば、まったく根拠のない数字ではない。
 
第3号店は「ラグーナテンボス」周辺に開業予定
 
　変なホテルの第3店舗は愛知県のテーマパーク「ラグーナテンボス」周辺に建設予定。その後、東京、大阪、京都に出店していくという。H.I.S.の澤田秀雄会長は、「今後5年間で100軒のホテルを自社展開したい」と述べ、

①既存展開の「変なホテル」
②都市宿泊型LCH（ロー・コスト・ホテル）の「変なホテル（ビジネスユース）」
③既存ブランドの「WATERMARK HOTEL」

の三つのブランドでの展開を予定しているそうだ。東京や大阪に出店するタイプは前述の②となる見込みで、究極のコスパを実現するためのホテルになるとのこと。時代にあわせて、変化し、進化するホテルの展開を楽しみに待ちたい。