アメリカ西海岸ハリウッド生まれのスタンダード・ホテルズは、常識にとらわれない独自のサービス精神と、芸術文化や地域コミュニティーが色濃く深く絡み合う個性派ホテルブランドだ。約20 年前に世界に先駆けてスタイリッシュなブティック系のコンセプトを打ち出したホテルとしても知られ、現在、アメリカ主要都市に5 軒のホテルを展開している。今後、ロンドンの新ホテル開業を皮切りに、ヨーロッパや日本を含むアジアへの本格進出を狙う。
聞き手 本誌・岩本 大輝　　文 福嶋 美香

スタンダード・ホテルズ スタンダード・インターナショナル CEO 兼マネージング・パートナー アマール・ラルヴァーニ 氏

文化芸術を絡め合わせ
コミュニティー拠点に
 
❒ まず、スタンダード・ホテルズについてお聞かせください。
 
　スタンダード・ホテルズは、約20 年前にアンドレ・バラズによってアメリカ西海岸ハリウッド サンセット通りの一画に設立されたのに端を発します。当初より、お客さまが宿泊する場としてだけでなく、人種や国籍といった異なる背景を持つすべての人々がともに楽しめるコミュニティーの場をご提供し、これが開業後間もなく話題を呼び、地域コミュニティーの中心的存在として知られるようになりました。
 
　以来今日まで、伝統的なホスピタリティーのルールにとどまることなく、独自のデザイン性の表現や、作家やアーティスト、活動家などの文化人を交えたカルチャー・イベント・プログラム、アクティビティーやナイトライフといったさまざまな要素を通して、ふつうのホテルでは味わえない、スタンダードゆえに夢中になれるようなホテル体験を作り続けています。
 
❒ 競合ホテルに比べ、具体的にはどんなところがスタンダード・ホテルズの強みとなるのでしょうか。
 
　スタンダード・ホテルズは、ほかのホテル企業ができない、あるいは、あえてやろうとしないことをするホテルブランドであるという自負があります。ほかのホテルでは不可能なことでも、ユニークな個人の集合体としてチーム力を結集し、予想を超える、はっとするような素晴らしい体験をつくり上げるにはどうしたらいいかを常に考え、知恵を絞ります。そして、他の企業が尻込みするようなことでも、進んでそれをやることでスタンダードならではの個性を発揮し続けています。
 
　ホテルの既成概念を超えるサービスの提供がスタンダード・ホテルズの大きな特徴の一つでもあります。例えば、チェックイン・チェックアウトの時間帯は通常ホテルにおいて決まっているものですが、スタンダードではそうした従来のやり方にとらわれず、新しいサービスの一つとして独自の「スタンダード・タイム」を可能にしています。これはお客さまが宿泊をご予約の際、ご自分の好きなチェックイン・チェックアウトの時間を選べるもので、より自由に思い思いのスタイルでスタンダード・ホテルズをご利用いただけるようになっています。
 
　チェックイン・デスク背面にライブ・アートを展示するといったように、デザインにも工夫を凝らし、ホテルの隅々で独創性を表現しているのも特徴でしょう。スタンダード・ホテルズはホスピタリティー産業における、他にはない革新性にあふれた存在として、常識の境界線をとどまることなく刺激し続けています。
 
 
❒ それぞれ異なる立地に個性的なホテルを展開されていますが、そうした魅力あるホテルづくりの背景には、どのような工夫や着想点があるでしょうか。
 
　新規ホテルを建てる際には、われわれのチームが、ホテルが建つ街や、実際の立地、建物そのもの、近隣の様子や地元コミュニティーにまつわるストーリー（物語）をまず作ります。そのストーリーを編む際に、お客さま目線に立ち、お客さまがホテル滞在中に触れる、スタンダード・ホテルズならではのデザイン性やホテル体験といったあらゆる要素をあぶり出し、明確化していきます。こうした作業を重ねることによって、スタンダード・ホテルズにしかない独自のホテルをつくりあげていきます。