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第一回 川尻倫明  プロフェッショナルF&Bを追い求めて

第一回 ~バトラーからメートル・ドテルへ~

【月刊HOTERES 2017年04月号】
2017年04月13日(木)
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本連載では、F&B のサービスマンにむけて、プロフェッショナルになっていくために何が必要なのかを解説していきます。職人として給仕長でありながらグローバルな感性を持ち、顧客満足と利益のバランスを兼ね備えるスペシャリストである必要があるF&Bサービスマン。そのF&Bサービスの歴史を紐解きながら解説していきます。第一回目はバトラーからメートル・ドテルへの流れを紹介しましょう。

F&B マネージメント
ホテル・レストラン運営コンサルタント
川尻倫明
〈プロフィール〉音楽の勉強に渡仏した際、フランス料理と本場のサービスに感銘をうけフレンチの世界へ。フランス料理店「銀座レカン」を皮切りに「ホテル西洋銀座」のメートル・ドテルとしてF&B に携わる。その後日本各地のホテルでF&B ディレクター、宿泊部長、総支配人等を歴任する。フランス三ツ星レストラン、ロスアンジェルスのファインダイニングなどでサービスを経験。エドモンド・ロスチャイルド夫妻、クリストファー・ヒル国務次官補(当時)などのVIP 担当も多い。1995 年「メートル・ド・セルヴィス杯」優勝。現在はホテル・レストランに特化したコンサルティングを主に活動しており、ホスピタリティ関係の講演、地元英語学校とのコラボで接客に特化した英会話講座開催など、サービススキルとビジネス感覚を持ち合わせもったグローバルなサービスパーソン育成活動を地方から発信している。「広島から世界へ」が自身の育成テーマ。
 

 
バトラーからメートル・ドテルへ
 
「おもてなし」という言葉が独り歩きして久しくなりました。私は個人的には「おもてなし」と「ホスピタリティ」は違うものとしてとらえています。まず、メートル・ドテル(給仕長)とはどういった職業ととらえれば良いのでしょうか。日本において、特に業界以外ではとても微妙で分かりづらい職業だと思いませんか?ついこの前まで水商売とよばれ、肩身の狭い思いをしていたころを覚えている先輩諸氏は多いと思います。しかし現代は違うわけです。
 
 例えばシェフは食文化の伝承者ですし、ソムリエはシェフの創り出す料理と共に食卓に貢献する職人として日本社会でも明確な立場を形成しつつあります。
 
 それに比べて「メートル・ドテル」はどうでしょうか? お客さまが来店したら「いらっしゃいませ」とお迎えし、メニューをお見せする。注文を伺い、厨房に通す。お料理ができたらテーブルまで運び、お客さまに提供する。お食事が終わったら「ありがとうございました」とお見送りする。これが給仕の主な仕事だと多くの人が誤解しています。
 
 今回は、「メートル・ドテル」という仕事の起源から見ていきましょう。その昔、王家や貴族に使えたバトラーの時代から(現代も一部活躍されています)今に至る流れを簡単に追っていきます。
 
 ヨーロッパの貴族階級の家のバトラーの役割は、現代のメートル・ドテルの領域を大きく超えています。家長は王家や多くの貴族との付き合い(仕事)に忙しく、代わりに家事全般を取り仕切り、料理の手配やテーブルのアレンジ、膨大なストックの酒庫の管理から会計、ご主人様の秘書役までこなすのです。大きな権限を家長から預かっている立場と言えます。
 
 その権限は料理にもおよびます。有名な話では、国王出席の宴席の準備をしていた「ヴァテル」というバトラーは、宴席の魚の到着が遅れたことを悩み、責任を取って刃を自身に突き立て命を絶ったと言いつがれています。それほど責任の重い立場であったわけです。宴席は家長が取り仕切るのがヨーロッパのしきたりですが、大宴会になるとご主人様には主賓や招待客のお世話で手一杯になります。それ以外の仕切りはすべてバトラーに権限移譲していたと考えられます。なんとなくホテルの総支配人のようではありませんか?
 
 いまでもフランスの裕福な家庭にお招きをいただくと、奥様が料理を作り、ご主人がワインの選定をし、丸ごとのチキンを切り分けてサーヴし、ワインをお勧めします。いにしえの時代は、その代わりをすべてバトラーが賄ったわけですね。
 
 優雅に暮らせる貴族階級が少なくなるにつれて、調理人やバトラーも街場に仕事の場所が移っていきます。調理人が街頭で屋台をひき、ブイヨンを売り始めたのがレストランの起源との説が有力ですが、寒いパリの冬に一杯のブイヨンは心も体も温まるものだったと想像がつきます。「一杯のブイヨンによって癒やされ、元気になれる」つまり「レストレ」されることから、元気になれる場所として「Restaurant」になったという説が、(諸説ありますが)私たちには一番うれしいのではないでしょうか。

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