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第十六講 「料理人の教育論」 第十六講  ㈱ジェイアール西日本ホテル開発 常務取締役 JR 西日本ホテルズ総料理長 佐藤 伸二 氏

体系化と可視化による育成カリキュラムの作成 「環境作り」こそ、先人としての責務である。

【月刊HOTERES 2017年11月号】
2017年11月24日(金)
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佐藤伸二(さとう· しんじ)
1975 年大阪府立布施高等学校卒業後、社団法人クラブ関西入社、91 年に㈱ホテルグランヴィア大阪入社。96 年総料理長に。2004 年、ホテルグランヴィア京都の総料理長を経て、08 年取締役総料理長に就任。15 年からホテルグランヴィア京都、大阪、和歌山、岡山など西日本の8 ホテルを統括する現職に就任。ハード面、ソフト面両方からの厨房改革を遂行している。

3 つの問いと2 つのワード
そして今後求められる素養について

―初めに御社の人材育成において、重要であると考えられる点からお聞かせいただけますか。


 まずは組織人として、成長や貢献の軸となるものをしっかりと理解していただくべく、ハリネズミの概念(THEHEDGEHOG CONCEPT) である3 つの問い「情熱を持って取り組めるか」「その取り組みは利益を生むか」「その取り組みを実施することにより世界一につながるか」、この視点の重要性を伝えるようにしています。自分のやりたいことであっても会社に不利益では意味がありませんし、効率を求めるあまり対応が機械的になってはホテル経営の根幹に関わります。よってここからスタートし、ディスカッションなどで個人の口からそれぞれのイメージが具現化されるよう取り組んでいます。

―上記を理解したうえで、実際の人材育成に対する動きについてはいかがでしょうか。

 「体系化」と「可視化」、2 つのワードを意識し、料理人の育成に対する改革を現在も進めている最中にあります。そもそものきっかけとなったのは、96 年のホテルグランヴィア大阪総料理長就任。立場が変わると同時に、旧態依然の体質やアナログな管理体制など、組織に多くの問題点があることに気付きました。人材育成に対する考えや取り組みもその中の一つです。そこから問題の解決にあたるべく、まずはキーマンを集め、そのメンバーで私たちのホテルグループが「ナンバーワン」になれる取り組みを話し合いました。その後さまざまなことを行ない、早期の技術習得やサービス側の体験機会提供、勉強会や講習会への開催など、現在に至るまで取り組みを重ね続けています。

―2 つのワードを意識した目的と具体的な例や変化についてお聞かせください。

 大きな目的は、教える側の進化です。たとえばレシピには料理を作るために必要な材料、調味料、そして調理手順などが記載されています。レシピに沿った調理を行なう過程で、若手と熟練者の持つ経験や知識の差が、味や調理時間の違いとなって反映されるわけです。今までは、若手は現場で先輩からの学びや失敗を経験することでしかその差を埋めることができず、調理人の育成には結果時間が必要とされてきました。しかし調理科学の研究が進む中、火を入れる温度帯や味付けのタイミングなど、感覚で補われていた部分が言葉で説明できる環境になったことで、手順や材料だけではない、科学的根拠に基づく体系化された新たなレシピが誕生するわけです。新たなレシピを活用することで教える側は伝えるべきこと、抑えるべきポイントが理解でき、スムーズな指導が可能となり、短期間で一定の知識や技術を持った料理人を育てることにつながっていくのです。教え過ぎると「人は考えない」という意見もありますが、ある程度ベースとなる部分は指導しなければなりません。さらに申し上げますと、今後AI 化やさらなるオートメーション化が進む中で、クリエイティブな発想を料理として表現することが料理人に求められることであり、どこに時間を費やすかというのも、キャリアを意識するうえでは大切であると考えています。

―佐藤総料理長の場合は、どのような時間の使い方をされているのでしょうか。

 料理人に求められるクリエイティブな部分を「人間力」と捉えていますが、美術鑑賞やエンターテイメント体験、食べ歩き、業界外の方との交流など、外部から刺激を得られるような環境に足を運ぶようにしています。総料理長というマネジメントの立場ですと、ビジネス書から学ぶこともたくさんありますが、若手であれば料理本を中心に、中間管理職を目指す時期が訪れれば部下の管理・育成法を学ぶなど、自分の立場や役割を理解し、役に立つと思うこと、成長につながると感じることに取り組むことが一番ではないでしょうか。

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