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新連載直前インタビュー  ジャン・メデゥサン 

ニース料理のレシピ紹介  フランスと日本が共鳴する食の魅力を追求 郷土料理の歴史と文化への理解を深める

【月刊HOTERES 2018年03月号】
2018年03月02日(金)
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❐日本との出会いについてお聞かせください。
 
 わたしの父は自ら台所に立つ人で、わたしも叔母と一緒によく料理し、叔父とも料理について語り合い、祖父母とは食べることをいつも楽しんできました。とにかく料理好きな一家に育ったわたしが日本と出会ったのが2004 年です。
 
 初めて日本を“ 発見” したときには大きな衝撃を受け、運命すら感じました。日本に縁がある友人が何人かいたことから来日したのがきっかけで、当初は日本にそれほど興味を持っていたわけでもありませんでした。けれどもひとたび訪れてみると、とにかくすべてがものすごく日本的で、日本による日本独自の素晴らしさに感動しました。世界のどこを見回しても日本のような国は珍しい。芸術やスポーツはもちろんですが、料理について特にそう感じました。その国らしさが料理にこれほど強く出る国は他にないのではないでしょうか。
 
文化的背景への理解が料理に深みを与える
 
❐ 日本で料理の本を出版しようと考えた背景は。

 
 フランス人も日本人も、料理に対して賢く忍耐強いと思います。この忍耐強さはほかのどの国にも見られないもので、食べることや料理やそれにまつわるさまざまなことについて語るのが好きなのも同じです。
 
 フランス人と日本人は一見して違うようですが、実は根底にある多くの層でつながりがあると考えていて、わたしはこれを“ 共鳴” と呼んでいます。フランス人が日本を訪れたとき、あるいは日本人がフランスを訪れたとき、母国にいるわけではないと知りながら、芸術や政治、とりわけ料理といった部分に近さを感じる。フランス人に日本好きが多いのも、そういった共鳴があるからこそだと思います。
 
 また、フランス料理と言えばまずソースの存在が挙げられます。日本料理にはないものです。しかし一方で、日本にはだしの文化があります。これらは違うようで極めて共鳴するもので、異なるかたちにせよルーツを共有しています。
 
 そう考えるうちに、わたしはアラン・シャペルのような偉大なシェフではないにしても、料理を人一倍愛する家族に囲まれて育ったわたしだからこそ、独自の視点で郷土料理のあれこれについて共鳴する日本の方々に発信できないだろうかと思うようになりました。大袈裟なようですが、それが自分の使命のようにも感じられたんです。
 
❐日本とフランスでは互いにシェフが行き来して料理のヒントを得ていますね。
 
 日本とフランスの間で、料理を通じていろいろなものが交錯し、料理文化を豊かにする要素となっているのはおもしろいですね。日本もフランスも外国の要素を取り入れてそれを吸収して自分たちのものにしながら発展させるのが上手です。けれど、外からの要素を抱き込んで吸収しつつ、忘れてならないのは料理の基本的なルーツだと思います。いろいろなことを異国から柔軟に吸収しすぎて本来の料理の良さが崩れてしまうのは好ましくない。何にしてもちょうどいいバランスで取り入れていくことが大切だと思います。
 
 また、社会的に見ると働く女性が増えたため、今これまでになく料理は男性と女性の両方で強いバランスを取る時代を迎えています。偉大なシェフはこれまで90%が男性でしたが、今では女性のシェフがとても多くなりました。男女それぞれの個性や特性が生かされ文化的な彩りが増してくる。これもおもしろい現象です。すべて同じでなく、それぞれの違いや個性を生かした味覚のアプローチがあってしかるべきで、その違いがシナジー効果を生み、より良いものが育っていけばなお素晴らしい。その一方で、基本を崩してしまわないように気を付けなければならないとも思います。
 
❐ 料理文化の継承には基本の見直しも大切ですね。今後の抱負をお聞かせください。
 
 フランスでは子供のころから食育が盛んで、わたしも両親からさまざまな食べ物を試されてきました。とにかく何でも食べなさいと。例えばワインにしても良いものも悪いものも試してみる。すると違いが分かるようになります。比較する機会を持つことによって味覚も育ちます。まずいものもおいしいものも両方食べることによって味が分かるようになるという味覚教育です。
 
 日本で全国各地に特産があるようにニースにも素晴らしい素材がたくさんあります。果物ならモモやアンズ、サクランボなどが素晴らしい。祖母の庭にもこうしたものがあって昔から親しんできましたが、パリで口にするものに比べとても美味しいものでした。
 
 金融業を始めた当初の師匠が、どのプロジェクトにかかわるにも「常に情報源に戻れ」と教えてくれました。専門書はある種の意訳がなされているので当てにはならないから、あくまでも、情報源とされる原文に戻って理解し、それを活用すべしというのです。これは料理にも当てはまります。料理の基本として、その由来や背景を理解することは料理文化の発展に欠かせません。
 
 偉大なシェフの料理だけでなく家庭料理も食文化をかたちづくる上で重要です。家庭で食べられる日々のシンプルな料理、あるいは特別な機会の折々に出される料理も料理文化の大切な一部であり、これを知り、理解することにより味わいが増すはずです。料理はさまざまな要素が折り重なってできています。その深い魅力を伝えることはわたしの一家の使命のようなもので、本を書く機会を得て本当に嬉しく思います。共鳴する日本の方々が気軽に「試しに料理にとりかかろうか」という気持ちになり、料理を通して新しい発見をするきっかけをつくり、ニース料理文化の発展に少しでも貢献していければいいですね。
 

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