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連載8 “NO STAY NO LIFE” ~ オンリーワンの宿づくり ver.2 ~ 

連載8 翠嵐 ラグジュアリーコレクションホテル 京都

【月刊HOTERES 2018年08月号】
2018年08月10日(金)
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継往開来
 
❐ 次に司馬遼太郎氏は「目の前に、嵐山の翠巒が盛り上がっている。…丘としては日本としてはもっとも美しい」と言ったようですね。まずは簡単に施設の紹介をお願いいたします。
 
 翠嵐 ラグジュアリーコレクションホテル京都は、京都の奥座敷、嵐山にございます。世界遺産や風光明美な自然などに隣接する贅沢な当地の中でも一等地となるロケーションで、最高級クラスの施設やサービスと共に、ここでしか得られない、お客さまの生涯の記憶に残るような旅の体験を提供しています。
 
 嵐山は、京都の中でも、四季を通じた自然美にふれることのできる世界的な景勝地です。翡翠色の保津川、春の桜や秋の紅葉など、京都を象徴するような要素が凝縮した土地で有るばかりでなく、初夏の若葉に包まれる新緑の時期、緑・黄色・オレンジ・朱色・赤色などのグラデーションカラーに包まれる初秋、澄んだ空気の中樹々がその輪郭をはっきりと表現する冬の季節など、現在においても千年の間変わらぬ風光明美な地として、世界中の旅行者の心をとらえている唯一無二のロケーションです。
 
 ホテルが位置する場所は、ご質問の司馬遼太郎氏も書かれている通り、保津川越しに嵐山の美しい稜線が一望できる最高の場所として長年人々に愛されてきました。13 世紀頃には天皇の離宮「亀山殿」があり、保津川の岸辺に釣殿や桟敷殿が設けられ、舟遊びや歌会が優雅に繰り広げられていました。14 世紀頃には、隣接する世界遺産「臨済宗大本山 天龍寺」の敷地の一部になりました。
 
 近代においては、明治32 年に男爵川崎正蔵翁の別荘として「延命閣」が、明治43 年には「八賞軒」が建設され、各界の名士を絶景の庵いおりに迎えて歌会が開催されるなど、名士の別荘となり、千年を超える歴史を携えた風雅な社交場として利用されていたようです。
 
❐ ホテルのコンセプトである「継往開来(けいおうかいらい)」について教えてください。
 
「継往開来」とは先人の偉業・事業を受け継ぎ、発展させながら未来を切り開くことを意味する言葉です。古来より景勝地として名高く、格式高い歴史と文化が育まれた嵐山の魅力を保持し、最大限に引き出しながらも、未来を切り開くためのイノベーティブな努力を惜しまず、お客さまに今までにない体験を提供することを「継往開来」という言葉に込め、それをホテルコンセプトとしました。京都の歴史に育まれたゆるぎない伝統と洗練されたモダンの美が鮮やかに融合する空間で、世界中からこの地を訪れるお客さまをあたたかくお迎えしています。
 
京都のホテルマーケットの中での
ポジショニング
 
❐ 京都という世界的な景勝地で施設を運営しているわけですが、最近の京都マーケットはいかがですか。貴施設の動向も踏まえてお話しください。
 
 京都の不動産価値高騰と同様に、ホテル建設は3、4 年前から表立って過熱し始めましたが、今年に入って右肩上がりだった宿泊料金の伸びも安定化をみせてきており、2020 年の東京五輪前には建設ラッシュのペースも落ち着くとの見方もあります。
 
 京都市内を訪れる訪日外国人観光客は、日本政府による観光立国推進基本計画によるビザ発給要件の緩和、訪日プロモーションの積極的実施、その他のさまざまな取組みに円安の追い風なども加わり、元来からある文化都市京都としての人気・再認知の高まりを受けて急増してきました。旺盛な宿泊需要に加え歴史的な低金利も相まって、他府県の鉄道や不動産、投資会社などが融資を積極的に受けて市内にホテルを進出させてきたことも注目する要素の一つです。
 
 今後、五輪でさらに日本の知名度が上がり、ホテル数が増えれば都市としての魅力も高まるので、観光客はそう減らないだろうということも言えますが、全般的にホテル間のサービス競争が起こるので、「お客さまが選択肢を持てるクラスが整備された体制を整えた上で、各クラス内で個々のホテルが独自性を磨くことが必要になる」と感じています。私どもが属するマリオットグループというグローバル規模の圧倒的な集客力を最大限活用しつつ、ラグジュアリーカテゴリーを明確に位置づけ、その中でも唯一無二のデスティネーションとしてお客さまに選ばれるホテル造りを進めて行くことを大切にしています。マリオットグループは、アジア、特に中国マーケットにも注力しており、中国の著名な俳優を使った「ラグジュアリーコレクションホテル」のプロモーションを積極的に行なっています。当ホテルにおいても、アジア圏からお越しのお客さま比率も高く、中国からお越しのお客さまの数も多くなってきております。また、最近では、3 泊以上ご宿泊されるお客さまが増加傾向にあることは現在の動向の一つでもあります。
 
❐ ホテルで働く、アソシエイトの方々とすれ違ったのですが、ユニフォームの色合いがとても目に焼き付いています。ほかのお客さまから同じようなことを言われることが多いのでは。
 
 制服に関してですが、特に女性着用の物に関しては「きれいな色で、印象に残りますね」というコメントをよく頂戴します。男性のネクタイや女性のブラウスの色は、ホテルの前に流れる保津川をイメージした翡翠色を採用しており、この翡翠色は当ホテルのテーマカラーとなっております。
 
 世界中のラグジュアリーコレクションホテルでは、各所在地やホテルを象徴するテーマカラー、さらに紋章(クレスト)がホテルロゴとして採用されます。当ホテルのクレストテーマは「龍と月と紅葉」です。嵐山を象徴する「月」の輪郭に、天子や貴人のみが乗ることを許された龍頭船や天龍寺の名前の由来となった金龍など権威の象徴である「龍」と、ホテルの大門を抜けたら真っ先にお客さまを迎える、美しい「紅葉」をデザインに収めたものです。
 
❐ 客室を拝見させていただきました。京都らしい日本の伝統色が非常に印象的ですね。客室のコンセプトはどのようなものを。
 
 客室棟は3 階建てで、平均約44㎡のゆとりのある広さの客室が全39 室あります。先ほど伝統色と言うお話をしましたが、客室に関しては「菫色」・「藍色」・「翡翠色」・「朱色」・「黄金色」・「月白色」がキーカラーになっております。そしてそれぞれの部屋タイプにはテーマに基づいた和名をつけています。例えば、スーペリアルームは「月の音」という和名がついており、嵐山の象徴「月」をイメージして各所にそのデザインを施し表現されたお部屋です。月をかたどったブラケット照明と、水面に反射する月の光がデザインされたカーペットが優美で印象的だと思います。そして洗面ボウルは日本六古窯の一つである信楽焼で、保津川をイメージした翡翠色と藍色のグラデ-ションが特徴となっています。なお、スイートルームを含む和洋のデザインをお楽しみ頂ける17 室には、専用の天然温泉露天風呂を設置し、客室で嵐山の天然温泉をお楽しみ頂ける施設を整えています。
 
❐ スパサービスやレストランの利用状況はいかがですか。
 
 スパサービスですが、各室でのインルームスパはもちろん、スパスイートを含む3 箇所でのトリートメントをご提供させていただいております。代表的なトリートメントですが、希少価値の高い、無農薬・無肥料の自然栽培で育った「茶の種子」オイルを使用したボディートリートメントや、「京緑茶」のスクラブなど京都ならではの、さらには当ホテルでのみで体験できるオリジナルメニュー16 種類をご提供しております。大変ご好評いただいておりますが、より多くの方にご体験いただけるように、さらに努めたいと考えております。
 
 料飲施設はレストランが1 軒とカフェが1 軒あり、それぞれ築100 年以上の建物に内装リノベーションを施し運営しています。まず、レストラン「京 翠嵐」ですが、京の季節食材を生かしながら世界無形文化遺産“WASHOKU”の伝統である会席料理の技法に、フランス料理の美意識を融合した新しいスタイルの料理を提供しております。建物は、前述の通り神戸川崎財閥創始者である川崎正蔵の別荘として建設され、嵐山御殿と称された「延命閣」を修復・復元し、世界中のお客様をお迎えできるようにモダンに改装いたしました。「京 翠嵐」が提供するイノベーティブな料理は好評で、海外からもシェフが表現するユニークなダイニングエクスペリエンスを愉しみたい、とお越しいただくまでに成長してまいりました。
 
 もうひとつは保津川沿いに佇む「茶寮八翠」です。こちらは築100 年を超える歴史的建造物である旧「八賞軒」の伝統を現代に継承したものです。歴史上多くの貴人が愛した保津川と嵐山の景色を四季折々にテラスから望むことができます。「茶寮 八翠」では、毎年テーマを変えてお届けしている「和のアフタヌーンティー」が大変ご好評いただいており、今年は京都老舗和菓子店とのコラボレーションでオリジナルメニューをご用意し、さらに多くのお客さまにご利用いただいております。
 
❐ それでは、次にサービスについてお伺いいたします。国内外の多くの富裕層のお客さまがお越しになると聞いておりますが、どのようなサービスがありますか。
 
 多様なご要望にもお応えするサービスを提供しておりますが、ラグジュアリーコレクションでは特に「コンシェルジュ」サービスをとても大切にしています。ラグジュアリーコレクションホテルにおける「コンシェルジュ」は全員がバイリンガルで現地観光のエキスパートとして資格を取得しており、名高い国際的なコンシェルジュ協会である「レ・クレドール」の金の記章を着用しています。
 
 お客さまが旅行を計画する段階から実際に滞在されご出発になられるまで、鍵となるのは「コンシェルジュ」です。おすすめのアクティビティ、レジャー、体験などに関する情報を提供するほか、レストランの予約や交通手段の手配も行ない、ご旅行に求められるあらゆる情報を提供し、お客さまに合せたご提案をしています。
 
 当ホテルコンシェルジュが提案するアクティビティには、近隣仏閣での早朝座禅や早朝の清々しい空気の中でのヨガレッスン、和菓子作り体験や人力車でのツアーなどがあり、ご滞在と共に充実した思い出に残る体験を提供しております。

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