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第54回 “風の人”山下裕乃の「THE SHARE」 

第54回  “ 家に帰りたくない” と思い悩む小中学生たち ~人生わずか10 年前後で100 年人生を見切らせて良いのか~

【月刊HOTERES 2018年12月号】
2018年12月07日(金)
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 問題は人生100 年と言われている時代に、そのわずか10分の1しか生きていない子どもが、なぜそこで自身の人生を見切ってしまうのか、また見切らせてしまったのか、その子のことを思うと心が痛みます。“もし、彼女も親も納得されれば心の整理がつくまで同居しても構わないですよ”とお声を掛けたものの、赤の他人が大切な命を預かって良いのかと考えると悩みます。
 
 まだこれから90 年も生きていけるはずの人生、人生山あり谷あり、いいこともあれば悪いこともあります。一喜一憂しながらも生き抜くことで何かを得られるかもしれません。もちろん、ときには自殺したいと思うこともあるかもしれませんが、瞬間的な感情を少し抑えればときは過ぎていくものです。と、水戸黄門のテーマソング“人生ラクありゃ苦もあるさぁ~”と説いたところで、わずか10 数年の道のりではなかなか理解できないことでしょう。
 
 小中学生の母親は団塊ジュニアのF2 世代。そのまた母親はおそらく60 歳~ 70 歳。親の世代はまさに日本経済高度成長期でした。1960 年代後半には女性たちが立ち上がりウーマンリブ運動も起きたころ青春時代を送っていた親たち。F2 世代はその親たちに育てられています。F2 世代は就職氷河期でなかなか就職できなかった経験と教育熱心な親に育てられた背景から子どもの教育に厳しく、受験のための費用は惜しまないという傾向にあります。非行に走ってしまった子どもたちの中には親のしつけが厳しく、厳しさから逃れるために家出を繰り返している内についつい万引きをしてしまったというケースもあります。
 
 いずれにしても“あったかわが家が待っているぅ~”というCM のように、ほのぼのとした家庭を取り戻してほしいと願うばかりです。一見すると“子どもは自由でいいな”と思うかもしれませんが、子どもほど自由はありません。たまたま出会った運命の親と少なくとも18 歳まではともに生活をしなくてはなりません。まさにカゴの中の鳥なのです。
 
 ホテルも然りです。もちろん、年齢は異なりますが4 月になれば20 歳前後~ 22、23 歳の新卒者が入社します。大人ですから子どもたちのように、気に入らなければカゴから勝手に飛び出すこともできますが、人間の多くは野生で育っていませんので自活してたくましく生き抜くことは至難の業です。特に若い世代は昔のような忍耐力がありませんので、飛び出したところで路頭に迷うだけでしょう。挫折した自分を責めてみたり、挫折させた上司や先輩を恨んでみたり精神的に追い込まれていきます。人生100 年、わずか4 分の1も生きていない20 歳前後、まだまだ80 年も生きられます。
 
 そうならないためにももっと真剣に次世代を担う若者たちの未来を考え、手厚く対応していかなければなりません。いい子いい子して過保護に育てるという意味ではありません。課題は“ホテルに勤めに行く”のではなく“ホテルに帰りたい”と思わせるためにはどうすべきかです。答えは1 つではありません。ただ1 つ言えることは、経営陣が“あったかホテルに帰りたい~”と思えるかでしょう。

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