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第57回 “風の人”山下裕乃の「THE SHARE」 

第57回  財産やポジションにしがみつく日本人 ~失うものがないときに感じるすがすがしさ~

【月刊HOTERES 2018年12月号】
2018年12月28日(金)
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 もしかしたら、人は失うものがないというとき、こんなにすがすがしく感じるものなのかもしれません。こんな感覚は私だけなのかも知れませんが、失うものがないという状態は、まさに母体から世に生まれてきた赤ちゃんに類するかもしれません。多くの赤ちゃんは母の愛情に包まれ疑うこともなく母乳やミルクを飲み成長していきます。
 
 ところが我が芽生えると大切なおもちゃをお兄ちゃんやお友だちに取られないように、必死に抱え込んでいます。成長していくにつれ、失うことへの怖さが強くなり、“この仕事を取られたくない”“財産を蓄えるために今のポジションを失いたくない”など、今の生活に特に問題がなければ何とか守ろうとします。ときには部下を落とし込んだり、ウソをついて上司を引きずりおろそうしたり、ときには徒党を組んで無視をするなどグループ攻撃で精神的に追い込んだりなど、今の自分を守るためにさまざまな行動を起こします。
 
 日本人は守ることが最高の防御であると考えているような気がします。土地しかり、仕事のおけるポジションしかりすべてにおいて必死に守ります。もちろん、自身を守ることも大切なことですが、これでは進歩がありません。もし、これまで頑張って素晴らしいポジションを得たのであれば、もっと上を目指していくべきです。賛成反対を与党野党でワイワイしている政治家たちも同じです。若かりしころは日本国のために、日本を良くするために主義主張をしていたはずです。将来を期待して選んだ日本国民にとってはその筋を曲げずに貫き通してほしいものですが、どうも何らかのポジションに就くと熱き主義主張はどこへやら、風見鶏のように先輩の政治家たちの顔色をみてクルクルとしています。
 
 ホテルの皆さまも同様です。“そうだ、その通り”と言って、一杯の席で主張していた上司や社長に対するご意見はどこへやら、そのときの権力者に迎合しています。仮に裸の王様のような上司だとしたら、迎合する部下は自分の味方、参謀として実力のない部下にポジションを与えることでしょう。また挑戦したことが仮に良い結果を得られなかったとき、自分のポジションが失われることが怖くて部下に責任を押し付けている人もいることでしょう。
 
 最後の結末はともかく、何かに挑戦するということはすばらしいことですが、それ以上にたちが悪いのは定年まであと数年、満額の定年退職金をいただくために何もしない人です。そんな上司のもとでは部下の成長もありえません。
 
 まもなく始まる2019 年。ラグビーワールドカップ、東京五輪、大阪万博などなど、日本はますます注目されます。もはや守りだけでは急速に変化する環境を生き抜けません。経験上、人間、命さえあれば生きていけるものです。2019 年はこれから飛躍するための大変革の一年になりますよう、失うものを恐れず、まさに裸一貫、母体から産まれたばかりの赤ちゃんのように母を、ホテルを信じてすがすがしい気持ちで参りましょう。

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