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第5回 小林 武嗣  供給過多時代を生き抜くためのレベニューマネジメント 

第5回  いまこそRevPAR 至上主義の転換点。視野を広げて販売価格を決めよう

【月刊HOTERES 2019年07月号】
2019年07月12日(金)
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RevPAR を求めない運用が
生み出すさまざまなメリット

 
では、こうした場合に1 万円で販売し続けたらどうなるでしょうか。これまでの売り方から見れば70 万円売り上がるはずですが、自社がいくら価格維持しても周囲で勝手に価格競争されてしまい、6000 円台が出るような状況なら当初の予測通りに70 室売れることはありません。ならば、周囲に合わせるべきでしょうか。筆者は1 万円で販売して50 室を目指すべきだと思います。
 
つまり、たとえ稼働を落としてRevPARが不利になっても価格は落とすべきではないと考えるからです。売り上げは当然減少します( それでも6000 円で80 室よりは上ですが)。しかし、長期的に見た利益で考えるとどうでしょうか。
 
まず、現在大都市圏では客室清掃費が上昇しています。そもそも清掃業者が足りないという状況になっていますから。もちろん契約条件なででさまざまな価格設定になっているとは思いますが、稼働が上がればその分やはり清掃コストは上がります。また、水道光熱費も無視できません。自宅ではないので、お客さまは水の使い方などにかなり無頓着です。これにリネンや消耗費を組み入れていくと一部屋の稼働で最低でも1200 円程度のコストが出てしまいます。
 
 これにOTAなどへの販売手数料、朝食やアメニティなどの経費を入れれば、6000 円で販売したときの販売人件費を除く粗利益は4000 円程度です。1万円で販売していれば、7800 円ですから利益で言えばほぼ倍となります。さらに稼働が増えると耐久財にも影響が出ます。ボイラー、ベッドやエアコンの入れ替え、水回りの改修なども年単位で早まってしまうでしょう。
 
また、稼働が少なければスタッフのシフトも楽に回せます。それ以外にもブランドイメージの維持も重要になるでしょう。普段、6000 円で売っているホテルが桜の時期だからと1 万8000 円で販売していたら消費者はどう思うでしょうか。しかし、普段1 万円で販売しているホテルが1 万8000 円だったらもしかしたら許容範囲と捉えられるかもしれません。
 
 
稼働目標を変える
 
このホテルの場合は、総客室数は300室ですが、これを300 室すべて販売することを目標にし6000 円で販売するよりも、経営層や本部が割り切って「稼働は70% でよい」と指示した方が結果的には高い収益を得られると筆者は考えます。
 
供給過剰時代では、300 室すべてを埋めようとすると出だしから安値にならざるを得ません。しかし、200 室+αでよいと考えればレベニューマネージャーのプレッシャーはかなり軽減されることでしょう。出だしも高値から販売できるのではないでしょうか。稼働目標が下がれば、何よりも現在のホテル環境で最大の問題である人手不足解消にも役立ちます。特に4 月から有給休暇の取得が義務となり、あるいはホテルが乱立することによる清掃スタッフの確保の厳しさを考えてみても利点は多いと思います。
 
もちろん、供給過剰とはいえ、年に60 日ほどは繁忙日があります。学会、コンサート、あるいは連休などがその対象となります。こういう日は300 室の客室をフルに埋めればよいわけで、普段は200 室+αと考えれば、そういう日は「ボーナス」になるわけです。逆に言えば通年で70%でも十分もうかる、という態勢をつくっておくことが必要でしょう。

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