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2020年5月8・15日号 トップインタビュー 星野リゾート 代表 星野 佳路 氏

トップインタビュー 星野リゾート 代表 星野 佳路 氏

【月刊HOTERES 2020年05月号】
2020年05月14日(木)
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厳しい環境でもマーケットを冷静にとらえ、ニーズに合った商品を提供する

---現在、新型コロナウィルスの影響で旅行市場は大きな打撃を受けています。ホテルやレストランにおいても同様に影響が出ていますが、実はその影響はエリアやその施設の顧客ターゲットによって異なっているようです。御社ではどのよう影響が出ていますでしょうか?

「(1)都市部」、「(2)北海道エリア」、「(3)インバウンド比率が高い」、「(4)グループ・団体利用が多い」、「(5)ビジネス客が多い」の 5つの特徴を持ったホテルに影響が出ています。

私たちのグループでは「(1)都市部」として東京の二施設、「(3)インバウンド依存の高かった施設」としてトマムの施設、両方の要素で影響を受けたのが旭川のOMO7旭川です。
 
ただ、興味深かったのは温泉旅館がほとんど影響を受けていない点です。この背景には、通常であれば年間約 2000万人の方が海外旅行に出ているわけですが、現在はこれをとりやめています。それが結果として国内の需要の高まりとなっていると考えています。
 
また、新型コロナウィルスの影響で臨時休校となっている一方で多くの企業でテレワークを実施しています。それを受けてリゾナーレでは施設内にテレワークができる環境を用意し、お子様はアクティビティで私たちが預かれるという取り組みをスタートさせました。これが多くのお客さまに好評をいただけたものですから、リゾナーレ以外の施設でも現在開始をしています。もちろん、館内やアクティビティなど感染防止の取り組みは徹底しています。

---現在の状況でパニックにならずにマーケットを冷静にとらえ、ニーズに合った商品を提供していく、興味深い取り組みですね。実際、御社の発表を受けてかは不明ですがその後いくつかのホテルが同様のプランを発表しています。

「OMO」では都市観光ニーズを明確にとらえ独自のポジショニングを確立

---続いて、ここ数年で御社が新しく始められた二つのブランドについてお聞きしたいと思います。まずは「寝るだけでは終わらせない、旅のテンションを上げる都市観光ホテル」をコンセプトとしている「OMO」について。「OMO」は都市の宿泊主体型ホテルに泊まっているゲストの中には観光目的の人もいて、その人たちの期待に応えられるホテルをつくることで、都市型ホテルであってもほかのホテルと違うポジショニング、ひいては高いパフォーマンスを実現できるという狙いであったと聞いています。2018年にスタートさせてから約 2年が経過したわけですが、手応えはいかがでしょうか?

力強い手応えを感じています。例えば最初に開業をした OMO5東京大塚は、一般的なホテルとして見れば良い立地とは言えません。実際新宿駅周辺は、ホテルは駅から離れるにしたがって ADRを下げないと稼働率が上がらないという市場になっているわけですが、OMO5東京大塚はそうした状況とはまったく関係がないポジショニングを実現できています。それはなぜかというと、都市観光が目的の方だけをターゲットにしているからです。大塚という街だけをフィーチャーし、「大塚のおもしろさはここだ」と。これまで星野リゾートはほかのエリアでも、例えば「トマムのおもしろさはここだ」とやってきたことを、今度は大塚という街で「ここがおもしろい」と提案しているわけです。
 
  結果、観光目的のお客さまはもちろん、これは当初は想定をしていなかったことですが、ビジネス目的でのお客さまも「夜の大塚の楽しさを知りたい」と来ていただいています。それによって、先ほどお話しをしたような新宿近隣のエリアによるホテルの ADRの状況とはまったく違うポジショニングを築くことができています。

最初から決めつけない。 “継続的な楽しみの進化 ”が奏功

---先ほどおっしゃったビジネス目的でのゲストは当初想定されていなかったということですが、御社は最初からこれと決めつけ過ぎず、仮説をもとにスタートさせ、そこから見えてきた状況に応じてトライアンドエラーを繰り返しながら磨き上げるというスタイルをずっと継続されていますね。

まさにその通りです。それは私たちは再生から始めたことに理由があります。
再生案件というのは当然お金がありませんので、そこにあるものをそのまま運営するわけです。そして、そこから生まれたお金で少しずつ改善を積み重ねていくわけですが、そうしたこと繰り返す中で、その良さを実感しているのです。

最初から「これだ」と決めつけてやってしまうと、当然「はずれ」もあるわけです。それよりも運営をしながら、「こうするとお客さまは喜んでくれるよね」と分かったことを毎年新しい魅力として付加していく。それによって毎年新しい魅力を発信できることにもつながるわけです。「今年はこれができました。来年はこういうことにも取り組んでいこうと考えています」と。“継続的な楽しみの進化”とした方が、投資判断も的確ですし、顧客の反応も良くなるのです。 
 
---「OMO」ブランドとしては OMO7旭川も約二年が経過しています。東京とは違った都市での「OMO」ブランドのホテルであるわけですが、いかがでしょうか?

こちらも同様ですが、さらに新しい可能性が見えてきました。今、OMO7旭川では「旭川、スキー都市宣言!」というのを掲げています。これは、旭川をスキー旅行の拠点にしてもらおうというものです。

  旭川の魅力は、都市でありながら、バスでそれぞれ 20分で「サンタプレゼントパーク」、40分で「カムイスキーリンクス」、60分で「大雪山旭岳」と個性の異なる「旭川、スキー都市宣言!」を掲げる OMO7旭川ではWEBサイトでも積極的なスキーリゾートを PRしているスキー場があることです。スキーを楽しみたい人にとって天候や積雪量は重要ですが、それはその日になってみないと分からないわけです。朝起きて、各スキー場の情報を見て「今日はここに行こう」と決められる。一般的なスキーリゾートはそうしたことができませんし、食のバリエーションも少ない。ところが、旭川は市内に約2000軒の飲食店がある都市で、またリーズナブルに食事が楽しめます。さらに、どこも吹雪いていてスキーができないという時は旭山動物園に行ってもいいですし、旭川の都市観光も楽しめます。

欧米はじめ世界には数多くのスキーリゾートがありますが、標高が高いところばかりでこのように都市から非常に近い距離でスキーを楽しめるというのは日本の旭川しかないのです。

旭川は暖かい時期は観光需要が高いのですが冬が弱かったこともあり、これはビジネスとしても理にかなっています。事実、二年前、私たちがこのホテルの運営を開始した時はスキー旅行者の需要はゼロでしたが、2019年 12月〜 2020年 1月のスキー旅行者の宿泊は 25%を占めるまでになりました。先にお話をしたように旭川は世界でも数少ないロケーションですから、将来的には 100%スキー旅行者の方にお泊まりいただける可能性もあるのではないかと感じています。

また、「旭川、スキー都市宣言!」はわれわれ星野リゾートがスタートさせたものですが、今は市役所の方にも一緒に取り組めないかと働きかけをさせていただいています。


「旭川、スキー都市宣言!」を掲げるOMO7旭川ではWEBサイトでも積極的なスキーリゾートをPRしている

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