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第十三回 『とんがりホテル コンセプトが斬新な魅力宿』 第十三回「MEMU EARTH HOTEL」(メムアースホテル) 代表取締役 野村昌広氏

十勝の大地で、「豊かな時間」を再考するホテル

【週刊ホテルレストラン2020年10月16日号】
2020年10月16日(金)
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 宿泊産業の競争が激化し、ゲストのニーズが多様化しているいま、ホテルのマーケティングに求められている戦略のひとつは、とんがりをつくることである。とんがりで差別化し、そのとんがりに関心のあるゲストが集まる。本連載では、そんなコンセプトが際立ったホテルや宿泊施設を厳選して紹介し、それを支える秘訣を紐解いていく。担当するのは、立教大学観光学部で宿泊ビジネスを学ぶ学生。学生のピュアな目に、日本のホテルはどう映り、どう表現されるのか。
 
 取材・執筆/立教大学観光学部 相馬早希、阿久津彩花 監修/宿屋大学 代表 近藤寛和
 


 2018年11月、約5万6000坪の広大な敷地にMEMU EARTH HOTELはオープンした。客室は、「国際大学建築コンペ」で最優秀賞を取った実験住宅群である。「地球に泊まり、風土から学ぶ」をコンセプトとし、先進的な建築と十勝の大自然の融合が楽しめる唯一無二のホテルである。このホテルが提供する本質的な価値とは何か。野村昌広社長に話を伺った。
 

■まず、野村社長のご経歴をお教えください。

 

代表取締役 野村昌広氏
代表取締役 野村昌広氏

 大学卒業後、大手スポーツ新聞社に5年ほど勤めていました。父が相撲の力士であったことや、ゴルフ部に所属していたこともあり、スポーツ全般に興味を持っていたためです。しかし、記者や編集、広告営業の仕事を通して、新聞で伝えられる部分の限界を感じたこと、また、間接的な反応しか得られないことから、直接お客さまに関わる仕事がしたいと考えるようになりました。

 結婚が節目となります。この土地を所有する妻の父親に呼ばれ、訪れたところ、第一印象は「なんだここは!」と。農場に牧場という、まさに十勝といえる環境の中、一歩足を踏み入れた途端、先進的な、それでいて良い意味で違和感を感じる土地と建築物がありました。以前、実験住宅のプロジェクトが行われていたこと、建物一つ一つにコンセプトがあることを知りました。

「高級リゾートに泊まる」、「美味しい食事をする」よりも、今の時代の人々に伝えるべき強いメッセージ性を、宿泊を通して伝えることが、我々のミッションであると思いました。経営について勉強すべく、2017〜2019年までKBS(慶應義塾大学大学院経営管理研究科)に通い、今に至ります。
 

「ホテルらしいホテル」にしたくない

■ホテル経験はなかったそうですが、始める前に既存のホテルで一度働くことなどは考えましたか?


 ホテルの経営や運営のノウハウを学ぶことは、セオリーだとは思いました。けれども、スピーディーに行わなくてはならない背景に加え、このホテルを「ホテルらしいホテルにはしたくない」という想いがありました。また、スタッフのなかにも、ホテル経験者はいません。マニュアルよりも、出来るだけお客さまに寄り添えるような、ここでしかできない独自のサービスの形を見つけたかったためです。

 また、スタッフを道内出身者で固めませんでした。地元の人にとって当たり前でも、外部から見たら特別な部分が、サービスで出づらくなると考えます。この場所の良いところを、内外から見える組織体制を取っています。


 

非日常の体験で得た考えや疑問を、日常に落とし込む

■ここで提供しているものの本質的な価値は、宿泊ではなく十勝の生活だと感じました。


 そうですね。我々が本当に伝えたいことは、「十勝でのライフスタイル」です。本当に我々にとって贅沢な暮らし、豊かな時間とは何か、この場所で再定義してほしいと思っています。

 例えば、お皿にブロッコリーがぽつんとある料理。見た目は質素だけど、食べてみたらすごく美味しい。そこで、「なんで美味しいんだろう」って考えてみることが大切なんです。無農薬野菜であることや、こういう環境で食べることが美味しさを引き立たせているのかもしれない。自然の中では、舌以外の所でも感じられる美味しさがあります。これは、自分たちの日常でも、視点を変えれば得られる時間です。

 非日常の体験を通して考えてもらったことや疑問を、日常に落とし込む。生活の中に楽しみや考えるきっかけを作ってもらうことが、このホテルの役目だと考えています。そのために、お客さまが考える時間を持てるような環境づくりを、押し付けがましくなく行う。このバランスが大事だと考えています。
 

■もともと貴ホテルは、寒冷住宅として十勝の厳しい冬の寒さに備え、暖かくする家の造りをされていると伺ったのですが、お客さまには夏よりも冬に貴ホテルに宿泊してほしいとお考えなのでしょうか?


 おっしゃる通りです。MEMU EARTH HOTELにある全ての建物の根底にあるものは、「寒冷地における持続可能な暮らし」です。「いかに冬の厳しさを楽しく快適に過ごせるか」ということが大きなポイントとなっています。

 確かに部屋に暖房を入れることによって快適には過ごせると思います。しかし、それが人間にとって本当の意味で快適なのかということに疑問をもたなければならないと私は思います。それこそ、肌で感じる温かみや、日差しで得られる暖かさ、また馬が入ってくることによって余計なエネルギーを使うことなく部屋を暖められるという考え方もあると思います。そもそも、人が馬と触れ合ったりすると凄く心が満たされると思いませんか。そういう意味での温かさ、数値では表せないような感情的な部分での温かみを、冬に皆さんが当ホテルに宿泊した際には伝わって欲しいと思っています。
 

■最後に、貴ホテルの今後の経営ビジョンについて教えてください。


 ホテルの動きとしては、これから新しいブランドの建物をつくって売り出していく予定ではあります。ただ、それが近々に出せるかと言われればそうではないのですが、当面の間は富裕層の顧客をしっかりと獲得することに重きを置きたいと考えています。当ホテルは、北海道内のお客さまをどれだけ獲得出来るのかによって経営が大きく左右すると思っています。

 意外にも最近は北海道内からのお客さまが増加傾向にあります。これまでお客さまがあまり来なかった理由には価格の問題があると我々は考えていましたが、最近当ホテルに宿泊してくださったお客さまを見ていると高価格でも出そう思えば出してくれるお客さまが増えてきたという印象を受けました。この事実によって、やはり我々が定めた価格帯は間違っていなかったと改めて思えましたし、その中でいかに北海道内のお客さまを得るかというのがこれからのカギとなってくると思います。そのためには北海道の人に対しても、同じ北海道内で営業しているホテルをより面白いと思ってもらえるようなプランを作って出せるかがこれからの課題であり、やるべきことであると私は思います。

 

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