平田 徹 氏(Toru Hirata) 2006年8月㈱ベビーフレンド入社。現在、工場長として工場管理業務に従事している。23年11月㈱サンフレンド設立。現在、取締役として勤務し、全国の各企業・施設に向けて「DASHUNON(ダシュノン)」の営業活動を行っている。
㈱サンフレンドは、これまでクリーニング工場の常識だった工程を省略する新発想の業務用洗剤「ダシュノン」を2023年から製造販売している。すすぎをしないのに洗濯物に汚れの再付着・再汚染させないダシュノンは、100%植物由来の洗浄成分を使ったSDGsにも対応したアイテムと言える。「すすぎゼロ」「節水」「作業速度アップ」によってクリーニングの現場の生産性向上にもつなげていくダシュノンの性能について、工場長としてリネンクリーニング業界の問題点を見つめてきたサンフレンドの取締役、平田徹氏に解説してもらった。ホテルリネンに掛かるコストの削減についても、大きな可能性も感じさせてくれるダシュノンのパワーをお伝えする。
すすぎゼロの発想から開発した洗剤を
クリーニング現場の問題解決につなげたい
福岡県の糸島で病院、介護施設、ホテルなどにリネンを提供する㈱ベビーフレンドのグループ会社であるサンフレンドは、すすぎゼロで節水洗浄を実現する環境にやさしい業務用洗剤「ダシュノン」を製造販売している。ダシュノンを開発するために2023年11月にサンフレンドが立ち上げられた背景には、ベビーフレンドが運営するクリーニング工場で見られる課題を解決する洗剤を、全国のクリーニングの現場が抱える悩みのソリューションにつなげたいという思いがあった。「クリーニング工場はエネルギーコストや人件費の高騰とともに人材不足という問題を抱えながら、朝早くから夜遅くまで洗濯を続けなければならない状況に陥っています」とベビーフレンド工場長・サンフレンド取締役の平田徹氏は言う。「その問題解決のために、私たちはすすぎ工程をカットできるメカニズムを持つ洗剤の開発に乗り出したのです」。衣類に付着した汚れを落とすために洗剤に入れた化学的な添加物が肌トラブルの原因になることから、従来の工程ではすすぎを2、3回繰り返して洗剤を水で希釈する必要があった。さらに洗濯中に衣類から剥がれ落ちた汚れが水に浮遊し、衣類に再付着してしまうことを防ぐために、すすぎの工程で給排水を繰り返して清潔な衣類へと導くというのが常識となっていた。
作業時間と水道代を削減するとともに
クリーニング工場の生産性向上も達成していく
これまでの固定概念を覆すことを目指して開発されたダシュノンの成分は100%植物由来で、合成洗剤やリン、漂白剤などの添加物は一切使用していない。また環境負荷を減らすため、界面活性剤の量を一般的な洗剤の約6分の1に削減。日本皮膚科学会専門医によるアレルギー試験を実施することで、すすぎゼロ回時における肌への安全性を確認している。「こうしたダシュノンの性能によってクリーニングの工程からすすぎの省略を実現し、作業時間と水道代の削減につなげました。加えて、ダシュノンはクリーニング工場の生産性向上につながる洗剤でもあります」。洗濯工場ではすすぎの工程を3分×2回に設定してプログラムを組んでいるケースが一般的で、給排水の時間まで含めるとトータルで15分ほどの時間が掛かっている。業務用の洗濯機は30分から35分で全工程のプログラムを設計しているため、どんなにがんばってもストップ・アンド・ゴーで1台につき1時間に2回しかまわせない計算になる。
ところがダシュノンを使えばすすぎ時間をゼロにすることで1回当たりの工程が20分に短縮され、洗濯機の稼働率が上がり、1時間で3回まわせる洗濯設備へと生まれ変わらせることができる。同じ時間内に洗濯機から出てくる洗濯物の量が増えることから、クリーニング工場全体の生産性は自ずと向上することになるのだ。
「さらにすすぎゼロにした分を割り当てて脱水時間を伸ばすプログラムを組めば、洗濯物の残水率が減り、今度は乾燥機のエネルギーコストが削減できるようになります。洗濯機でできることをフルパワーで行うことで、乾燥機が空のまま待機している無意味な時間的なロスを大幅に削減できるはずです」
洗剤自体は高価であっても、導入後の
コストパフォーマンスはアップする
すすぎゼロで本当に清潔な仕上がりになるのかという疑念を抱くリネン会社の関係者も多いというが、平田氏はクリーニングにおける午前中の工程において、そこまで激しく汚れていない洗濯物を仕分けしておく作業を入れることで、ダシュノンの性能をフル活用する流れを構築するやり方を推奨している。
「そもそもダシュノンは、強い洗浄力を謳っている製品ではありません。肌への安全性や環境への配慮に特化して、すすぎゼロの実現によってクリーニング工場に新しいメリットをもたらすことを目指したアイテムなのです」と平田氏は強調する。「ダシュノンによって洗いの工程を見直すことで、洗濯機、乾燥機を稼働率100%で回転させる現場を計画的に生み出せると考えています。それによって9時から5時の定時内に、時短洗浄と強洗浄のいずれも効率よく進めることができる形を創っていただきたいのです」 特別な洗剤であるダシュノンは一般的な洗剤と比較すると高価ではあるものの、水道代や人件費の削減などにつながることから導入後のランニングコストのパフォーマンスはアップするため、実質的に経費の面でも貢献することになる。
「ホテルの客室で使われる枕、フェイスタオル、バスタオル、足拭きマット、ガウンといったリネン類には、そこまで激しく汚れるアイテムはないという認識を私は持っています。ダシュノンで対応できるアイテムが多いという意味でも、ホテルリネンのクリーニングに使っていただくことで、最終的に全体的なコストダウンにつながるのではないかと期待しています」これまでのダシュノンは北海道から沖縄まで、全国約150社のクリーニング会社に採用されている。ホテルのランドリー室も含めてダシュノンの活用によるコスト削減を実現するシーンを拡大していくために、サンフレンドの活発な取り組みはこれからも続いていく。
・株式会社サンフレンド
・ダシュノン
レポート:本誌 林田研二