ASSA ABLOY GROUP(アッサアブロイグループ)傘下で、ホスピタリティ向けソリューションを手掛けるVingcard(ヴィングカード)。2025年に各社スマートフォンが搭載するウォレットアプリに対応した電子錠を日本市場にも本格導入し、その後も全国で加速的な導入が続いている。国内事業を率いるアッサアブロイ グローバルソリューションズ ジャパン社長の深尾 大地氏に同社の事業概要とビジネスの現状を聞いた。
(株)アッサアブロイ グローバルソリューションズ ジャパン
代表取締役社長
深尾 大地氏
Daichi Fukao
高度なセキュリティ認証ニーズに応える世界屈指のソリューション
■まずは、ASSA ABLOY GROUP、ならびにASSA ABLOY Global Solutionsの事業内容をお聞かせください。
ASSA ABLOY GROUPは世界最大のドアセキュリティメーカーとして、建具金物全般とアクセスコントロールソリューションのグローバル規模での販売、施工、保守サービスを行っています。グループ傘下のソリューション事業部門ASSA ABLOY Global Solutionsは主要事業であるホスピタリティ業界向けソリューションVingcard(ヴィングカード)をはじめ、船舶、介護、資産保全、リテール、物流、公共インフラなど7つの事業領域にフォーカスし多様なセキュリティソリューションを提供しています。
■世界的にも有名なヴィングカードの電子錠は、国内ではどのような施設で使われていますか。
在日米軍基地の関連施設や大使館など、高いセキュリティ認証が求められる施設において採用されており、その信頼性もあってホテル業界でも外資系ホテルチェーンをはじめ全国のホテルで幅広く支持されています。
■日本のホテル市場でのシェアはどのくらいあるのですか。
外資系ホテルチェーンでは約90%を越えるシェアを擁しています。近年は、国内系ホテルチェーンや単館ホテル、旅館等でも加速的な導入が進んでおり、最近ではあるホテルチェーン様が全40店舗でVingcardの電子錠に更新いただきました。
■ホテル向けキーシステムの工事価格はどのくらいが相場なのでしょうか。
1室約10万円程度です。複合施設においては共用部やエントランス、エレベーターを制御されることも多いため、全体の規模によっては1億円を超えるケースもあります。
■そもそもホテル側は、どのタイミングでキーシステムを検討したら良いのでしょうか。
悩ましいですね。新築案件において、そもそもキーシステムはバイヤーが意思をもって買うべきアイテムなのか、ではどのタイミングでその意思を伝えるべきなのか、という永遠の問いがあります。実は、弊社から電子錠を買うのは、扉を製作する建具メーカーです。彼らはあくまでも建具金物の一環でキーシステムを購入してきます。
弊社はホテルの運営会社やオーナー、デベロッパーのために様々なソリューションを開発しているわけですが、建築商流上の顧客は建具メーカーとなるのです。よほどホテル運営会社が施主や建築会社に対して明確に意思をお伝えいただかない限り、キーシステムは工事商流の一方的な都合で決まってしまう、という側面を擁する特殊な製品なのです。
現在は国内系ホテルチェーンへの導入に注力
■深尾社長がアッサアブロイに参画された理由をお聞かせいただけますか。
前職でIoT関連のスタートアップでCOOを務めた際、「スマホが鍵になれば、あらゆる業界のシームレス化が果たせるのでは」と思いアッサアブロイ本社と商談をしたことが始まりです。その後、国内総代理店の買収と事業立て直しに関して相談があり、ホスピタリティ業界での新店開発経験や、テクノロジー系の知見が活かせると考え引き受けることにしました。
■社長に就任された後、最も注力されていることは何ですか。
社員ひとりひとりのキャリアパス構築と支援です。日々の業務は、ある程度フローとルールを定めた後は社員の技量・力量・工夫に任せ、会社はキャリア設計や人生設計のサポートに尽力します。そのため、アルバイトや契約社員といった雇用形態ではなく全従業員を正規雇用とすることで、会社と従業員が互いにコミットし合える環境づくりを行っています。
チームメンバーが事業への当事者意識を持つことで定着度や生産性が高まることで、業績・社員の収入ともに7期連続で右肩上がりの成長を遂げています。
■徹底されていますね。
社員には、僕がどうのというよりも「顧客と株主が何を求めているか」、それに応えるために僕らは組織としてどうフィットしていかないといけないかを常に説いています。
■今後の事業構想をお聞かせいただけますか。
とにもかくにも日本市場におけるVingcard事業のさらなる拡大が弊社の使命です。2025年にVingcardはホテル向けネットワークソリューション大手の米Nomadix社を買収しており、2026年には国内市場への本格投入を予定しています。
ホテル業界のIoT&セキュリティソリューションに変革の波を起こすプレイヤーとして、外資系ホテルチェーンに留まらず、国内の宿泊施設ならびに旅館・簡易宿所などへも着実にユーザーベースを広げていきたいと思います。
●アッサアブロイ グローバルソリューションズ ジャパン
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取材・文 オータパブリケイションズ 林田 研二




