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定番の先にある次のプロダクトを、日本市場にどう広げるか

FOODEX JAPAN 2026 ベルギーブースレポート── 定番の先にある次のプロダクトを、日本市場にどう広げるか

2026年03月17日(火)
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写真:FOODEX JAPAN 2026 ベルギーブース
写真:FOODEX JAPAN 2026 ベルギーブース

 FOODEX JAPAN 2026のベルギーブースでは、チョコレート、ビール、ワッフルといったベルギーを象徴する定番プロダクトに加え、加工ポテト、ソース、ジンジャーブレッドなど、新たな可能性を持つプロダクトも紹介された。ベルギー・フランダース政府貿易投資局 日本事務所代表のディルク・デルイベル氏への取材をもとに、今回の出展の狙いと日本市場への展望を整理するとともに、会場で注目を集めた各社の提案を追った。
 

ベルギー・フランダース政府貿易投資局 日本事務所代表 ディルク・デルイベル氏に聞く 伝統を土台に、日本市場向けの提案を具体化── ベルギー食品が示した次の広がり方

写真:ベルギー・フランダース政府貿易投資局 日本事務所代表 ディルク・デルイベル氏
写真:ベルギー・フランダース政府貿易投資局 日本事務所代表 ディルク・デルイベル氏

 FOODEX JAPAN 2026のベルギーブースでは、単なる国別出展にとどまらず、ベルギーの伝統食品を日本市場でどう定着させていくかという視点が前面に出ていた。ベルギー・フランダース政府貿易投資局 日本事務所代表のディルク・デルイベル氏は、今回の出展について「テーマはベルギーという国そのもの」と語る。その言葉どおり、会場ではベルギーの食文化を背景ごと伝えながら、次に日本で広がる可能性のある商材を具体的に提示していた。すでに日本で認知の高いチョコレートやワッフルだけではなく、その次に続く存在としてジンジャーブレッド、加工ポテト、ソースといったカテゴリーを紹介し、ベルギー食品の裾野の広さを示す構成になっていた。
 デルイベル氏が繰り返し強調していたのは、ベルギーの食品には長い歴史と地域性があり、そのうえで変化にも柔軟だという点だ。ベルギーには100年、200年単位で受け継がれてきた製品やメーカーが多い一方、市場が大きくない国だからこそ、早い段階から輸出を前提に発展してきた背景がある。フランス語圏、オランダ語圏、ドイツ語圏を抱え、周辺国の嗜好を見極めやすい環境も、商品開発や海外展開の柔軟性につながっている。伝統を守るだけでなく、新しい市場に合わせて提案を組み替えていく――その姿勢自体が、ベルギー食品の大きな特徴だという。
 その文脈で見ると、日本市場は単なる輸出先の一つではない。デルイベル氏は、これまで日本で浸透してきたベルギーチョコレート、ベルギービール、ベルギーワッフル、スペキュロスに続き、今後さらに認知を広げていく力を持ったプロダクトがあると語る。かつては賞味期限の問題で日本に入りにくかった商品も、冷凍技術や物流の進展によって現実味を帯びてきた。ベルギーの伝統食品をそのまま持ち込むのではなく、日本の市場環境の中でどう見せ、どう使われるかまで含めて設計し直すことが、今回の出展には通底していた。
 また、ベルギー食品の広がり方を考えるうえで重要なのが「イメージ」の力だ。デルイベル氏は、ベルギーには日本で十分にブランドを確立している食品が多くある一方、ブランドのイメージが定着していないがゆえに広がりにくい商材もあると話す。その意味で、今回のベルギーブースは単なる商談の場ではなく、「ベルギーには様々な食文化がある」と伝えるための入口でもあった。FOODEXという場を通じて、日本市場の中で新たな定番を育てていく。その試みが、今回の出展全体を貫いていた。
 

ベルギーポテト|ベルギーのフライ文化を伝える、VLAMの共同訴求

写真:左よりVLAM BtoB Export Project Coordinator Hilde Peeters氏, VLAM Global Fries Account Manager Steven Paesschesoone氏
写真:左よりVLAM BtoB Export Project Coordinator Hilde Peeters氏, VLAM Global Fries Account Manager Steven Paesschesoone氏

 ポテト分野の訴求を担ったのは、フランダースの農業・園芸・水産物を国内外に向けて発信するVLAMだ。ポテトだけを扱う組織ではなく、フランダース産の農産品や食品全体をプロモーションする役割を担っており、海外では「Fresh from Flanders」という名称も使いながら活動している。今回のFOODEX JAPANでは、そのVLAMがベルギー産加工ポテトに焦点を当てた共同訴求を展開した。
 今回、ポテトに絞って訴求した背景には、EUの支援を受けた加工ポテトのプロモーションプログラムがある。VLAMはこのプログラムの一環として各国の展示会を回っており、FOODEX JAPANでもグループブースを構成。会場ではAgristo、Clarebout、Ecofrost、Global Fries、Pomuniといった企業群が紹介され、単独メーカーではなく、ベルギーの加工ポテト産業全体として市場に向き合う形がとられていた。ポテトを単なる商品としてではなく、産業の厚みごと見せようとする意図が明確だった。
 取材の中で印象的だったのは、ベルギー側がフライドポテトを単なる付け合わせではなく、食文化として語っていたことだ。一般には“French fries”と呼ばれることが多いが、ベルギー側はあくまで“Belgian fries”としての背景を伝えたい考えを示した。ベルギーではポテト料理の歴史が古く、フライもまた日常に根づいた食文化の一部である。日本の来場者の反応については、試食した人からは好意的な声が聞かれ、ベルギーとフライの結びつきが少しずつ理解されてきているという手応えも語られた。
 さらにVLAMは、ポテト以外にも洋梨、豚肉、牛肉、青果、乳製品など、さまざまなフランダース産品を海外に向けて発信している。そうした中でポテトは、日本市場にとって比較的入り口になりやすいプロダクトでもある。冷凍・加工技術の進展によって、かつては日本に届きにくかった本場のベルギー産ポテトが現実的なプロダクトとなりつつある今、今回の展示はベルギー食品全体への理解を広げる起点としても機能していた。
 

ベルギーソース|Mannaが持ち込もうとしているのは、「本場のベルギー体験」だ

写真:Manna Export Manager Andre Souranis氏
写真:Manna Export Manager Andre Souranis氏

 ベルギーソース分野で存在感を示したのが、1935年創業のMannaだ。現在のCEOの曾祖父が創業した同社は、当初からソースメーカーだったわけではない。もともとはピクルスした魚を扱う会社として始まり、その魚に合わせるためにマヨネーズを作ったことが、現在の事業の出発点になった。まだ第二次世界大戦前のことであり、同社の歴史はベルギーの食卓やストリートフード文化とともに育ってきた。
 戦後、ベルギーでストリートフードが広がる中、とりわけフライドポテト文化の伸長は同社にとって大きな転機になった。マヨネーズだけでは足りないと見た創業家は、フライやサンドイッチ、バーガーに合うさまざまなソースの開発を進め、ベルギー国内のフライショップやサンドイッチ店、バーガー店で存在感を高めていく。その後はフードサービス向けから量販向けへ、さらに近隣諸国への輸出へと展開し、約12年前からはアフリカ向け輸出も本格化した。取材では、現在は74カ国に輸出しており、欧州、アフリカ、中東に強みを持つ一方、アジアはこれから本格的に開拓する市場だと説明された。
 同社が日本市場をどう見ているかも興味深い。担当者は、日本にはすでに質の高いマヨネーズ文化があり、誰もが思い浮かべるようなような強いブランディングを確立した企業があることを高く評価したうえで、だからこそ日本に最初に持ち込むべきなのは通常のマヨネーズではないと語る。狙うのは、まだ日本にないスペシャルティソースだ。日本の消費者は保守的な一面を持ちながらも、新しい味や体験への好奇心も持っている。その市場に対し、既存品の代替ではなく、ベルギーにしかない味を提案していくという考え方が貫かれていた。
 一方で、マヨネーズそのものを完全に除外しているわけでもない。担当者は、日本で展開するなら低価格帯ではなく、より本場らしい、高価格帯の“ベルギーらしいマヨネーズ”が候補になるとも話した。日本に良質なビールがある一方でベルギービールが独自の価値を持つように、マヨネーズもまた「本場のベルギー体験」として訴求できる余地があるという発想だ。とくに首都圏などではベルギーポテトそのものに対する関心は高まっている一方で、ソースの選択肢にはまだ広がりがある。Manna Sauzenは、そこにベルギーらしさを持ち込む余地を見ていた。
 

ジンジャーブレッド|Vondelmolenは歴史、物語、用途提案の三つで市場を開く

写真:左よりVondelmolen アジア事業開発ディレクター Jonniaux Thomas氏、社長 Rafael De Gendt氏、オーナー Jan Borms氏
写真:左よりVondelmolen アジア事業開発ディレクター Jonniaux Thomas氏、社長 Rafael De Gendt氏、オーナー Jan Borms氏

 ジンジャーブレッドでは、1867年創業のVondelmolenがひときわ強い印象を残した。5代続く家族経営で、年間生産量は6000トン規模。来年には創業160周年を迎えるという。ヴィーガン、ハラル対応に加え、食品安全や品質に関する認証も備え、伝統食品でありながら現代の市場ニーズにも応えている点が特徴だ。社名のVondelmolenはVondel川のそばにあった水車に由来し、ロゴにも赤い水車が使われている。会社の歴史そのものが、ブランドの物語と結びついている。
 同社の説明で印象的だったのは、ジンジャーブレッドを単なる焼き菓子としてではなく、フランダースの歴史そのものとして語っていたことだ。蜂蜜で甘みをつけたパンの系譜は古く、豊かな交易都市を抱えたフランダースでは、中世から胡椒やシナモンなどのスパイスが流入し、そこからジンジャーブレッド文化が広がっていったという。フラマン語では「ペーペルクーク」と呼ばれ、直訳すれば「胡椒のパン」。Vondelmolenのソフトタイプは、ライ麦粉、蜂蜜または砂糖、古いジンジャーブレッド生地、そして秘伝のスパイスという四つの要素から構成され、生地を数日寝かせてから再度スパイスを加え、90分焼き上げたのち、さらに一日かけて冷ます。切り落とした端の部分は再び生地に戻して使うため、製法自体に循環の思想が組み込まれている。
 Vondelmolenが日本市場に向けて打ち出している最大の特徴は、「フランダースの犬」との接点だ。取材では、同社が創業したのは『フランダースの犬』の原作刊行より5年前であり、作品に繰り返し現れる「少年、犬、水車」という象徴と、自社の赤い水車のロゴが重なることが強く語られた。さらに、作品中でネロがエネルギー補給のためにジンジャーブレッドを食べていたことも紹介され、同社はその物語を日本に“リバイバルする”という発想で商品展開を進めている。日本向けにはアーモンド、ハニー、クランベリーの3フレーバーを用意し、ネロとパトラッシュを思わせるオリジナルキャラクターを配したパッケージで訴求していた。
 もう一つ重要なのが、用途提案の幅広さだ。ベルギーでは日中のエネルギースナックとして使われる比率が高く、朝食用途も多いという。会場ではホテル向けの提案として、ジンジャーブレッドのフレンチトーストやグラノーラが紹介されたほか、スープ、煮込み料理、ティラミスなどへの応用も語られた。とくにホテル朝食との親和性は高く、軽食や、料理素材としても使える点は大きな強みだ。取材の中でも、日本のホテルはビュッフェの比率が高く、国内宿泊客、インバウンド宿泊客問わず受け入れられやすい可能性があるとの見方が示された。さらに同社は大阪・関西万博のベルギーパビリオンのレストランでもメニュー提案を行い、売店でも早い段階で商品が動いたと説明しており、日本市場での手応えを足掛かりに、次の段階として有名シェフやレストランなどの様々なコラボレーションを見据えている。
 

日本市場を見据えたベルギー食品の共通アプローチ

 今回のベルギーブースを通じて見えてきたのは、ベルギー食品が「伝統がある」だけではなく、その伝統を日本市場でどう生かすかまで考え抜かれているということだ。ポテトは文化的背景を伴った共同訴求として、ソースはまだ日本にない味の提案として、ジンジャーブレッドは歴史と物語、さらに用途開発を組み合わせた形で市場に入ろうとしている。いずれも共通していたのは、単に商品を並べるのではなく、日本でどう使われ、どう理解されるかを見据えていた点にある。FOODEX JAPAN 2026のベルギーブースは、ベルギー食品の現在地を示すと同時に、その次の広がり方を具体的に見せた場だった。

ベルギー・フランダース政府貿易投資局:公式ホームページ
VLAM:公式ホームページ
Manna:公式ホームページ
Vondelmolen:公式ホームページ
ーーー
取材・文:オータパブリケイションズ 松島
Mail:matsushima@ohtapub.co.jp

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