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M&Aで再生した酒造創業1772年、岩手県最古の酒蔵・菊の司酒造

生原酒シリーズ innocent を皮切りに新展開、炭火焼ステーキとのペアリングで日本酒の新境地ひらく

2024年03月11日(月)
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酒造創業1772年、岩手県最古の酒蔵・菊の司酒造㈱(岩手県岩手郡雫石町、代表取締役社長 山田栄作)は、M&Aにより2021年に経営を託された。同年10月22日には、「感動の瞬間(とき)」をコンセプトとした生原酒シリーズ「innocent(イノセント)」を全国に発売。新たな一手を打ち出してから4年目となる2024年、創業252年を迎える。

新生・菊の司の象徴的な存在「innocent」

 M&A直後に発売した「innocent(イノセント)」は、本州一の厳しい寒さの中で丁寧に低温発酵させた無濾過生原酒。無濾過生原酒ならではの、吟醸香と甘みが絶妙に絡み合った重厚なボディー、フィニッシュの爽快感のコントラストが特徴的だ。同ブランドの開発にマーケティングの視点から挑んだのが、同社山田社長の御息女で取締役 社長室室長の山田貴和子氏だ。
 同氏は東京の大学を卒業後、都内のIT企業に就職。トレンドには理由があり、その波となる一滴は戦略的に構築できる…そんな術を体感しつつあるころ、世の中がコロナ禍となった。その後、M&Aによる再生事業に携わるに至ったという。

取締役 社長室室長の山田貴和子氏。「何事においても積極的にチャレンジできる風土、そして、チャレンジすることにより成長を実感できるステージをより多くつくることが大切だと考えています」
取締役 社長室室長の山田貴和子氏。「何事においても積極的にチャレンジできる風土、そして、チャレンジすることにより成長を実感できるステージをより多くつくることが大切だと考えています」
岩手県酒造好適米を丁寧に低温発酵させた搾りたての無垢な無濾過生原酒「 innocent ‐無垢-」(3種)展開
岩手県酒造好適米を丁寧に低温発酵させた搾りたての無垢な無濾過生原酒「 innocent ‐無垢-」(3種)展開


「杜氏を含むすべての従業員はベテランぞろい。酒造りは素人の身ですから、ゼロから酒の原料である米や水、酵母に向き合い酒造りに必要な知識を吸収し、同時に、残して「勝てる」商品の絞り込みをへて、商品がより「際立つ」ための理由を追求していきました。かつては50種以上ありましたが、現在3ブランド(菊の司、七福神」、innocentの3ブランド。「心星」は菊の司内の商品) 25商品に厳選。中でも海外展開を視野にその味わいにこだわったのが、「innocent」なのです」(山田貴和子氏)
 
「innocent」は1カ月以上の時間をかけて醸される日本酒。蔵人にとって醪(もろみ)を搾り上げて出来上がった酒を見る・味わうその瞬間は、かけがえのない感動と喜びをもたらすという。2021年、「その瞬間を一人でも多くのお客さまと共有したい」と「 innocent ‐無垢-」シリーズを誕生させた。「フレッシュで大変希少な日本酒」という好評を得て全国展開に踏み切った。また2022年には、蔵を盛岡市から「自然の恵み豊かな」雫石町に移転。新工場では岩手山の伏流水と隣接する田の米も採用し、新たな深みと味わいをもたらす酒を仕込んでいる。そして2023年、品質を損なわずに酒を急速に冷凍保存できるシステムを導入。これにより、2024年からは本格的に海外展開にも注力する。
 M&A前は年間800石、廃棄率は15~20%だった。2022年、雫石町への工場移転を機に「通年醸造にて醸されるフレッシュな生酒」の製造を開始。工場移転後の2023年は1000石で、サステナビリティを踏まえて廃棄率はゼロとなっている。

2022年11月7日に竣工した雫石工場(岩手郡雫石町長山狼沢11−1)
2022年11月7日に竣工した雫石工場(岩手郡雫石町長山狼沢11−1)
雫石の新工場に併設した「ショップ」目当てに訪れる人も多い
雫石の新工場に併設した「ショップ」目当てに訪れる人も多い

既存ブランド「七福神」「菊の司」「innocent」もバージョンアップ

 盛岡市で多彩な事業展開をしている同社グループには、飲食分野もある。市の中心地・大通1丁目に位置する炭火焼きの「天元」(カウンター6席・個室3種定員計26名)は、接待やデート、ハレの日需要で多くの顧客を抱えている。今年から、同店で提供しているのが、同社の日本酒とのペアリングだ。日本酒のさらなる可能性を見出すために造成した「菊の司ペアリングディナー」で、順調に客足を伸ばしている。


炭火焼ステーキ 天元
岩手県盛岡市大通1丁目9-10レインボービル3階
 https://sumibiyakisteaktengen.owst.jp/
 
 

「雲丹のバヴァロワ」にはinnocent 40が提供される
「雲丹のバヴァロワ」にはinnocent 40が提供される

【日本酒ペアリングコース】1名2万3,000円(税込)
  ※仕入れ状況により変更あり

・雲丹のバヴァロワ
・真鱈白子のムニエル
・アンコウのロースト
・シャンパーニュグラニテ
・岩手五ツ星黒毛和牛ヒレグリル~和風おろし出汁~
・山形県産最上牛A5炭火焼ステーキ(ヒレ、ロース、ランプ)、雫石町産焼き野菜
- ガーリックロール
・特製デザート
- 珈琲or紅茶
- パン
 

常にチャレンジを繰り返しながら美酒の極みを目指す「菊の司」
常にチャレンジを繰り返しながら美酒の極みを目指す「菊の司」
全国特約店限定の流通ブランド「innocent」
全国特約店限定の流通ブランド「innocent」
南部杜氏の技が燻しく光る、半世紀越えのベストセラー「七福神」
南部杜氏の技が燻しく光る、半世紀越えのベストセラー「七福神」


 菊の司酒造㈱は、1959年12月に岩手県宮古市に遊技場「公楽会館」を創業した㈱公楽のグループ会社。㈱公楽は遊技場を中心に事業を拡大し、現在は岩手県に遊技場を11店舗、宮城県に1店舗を経営。遊技場経営以外にも、不動産事業、再生可能エネルギー(メガソーラー)事業、生活関連サービス事業(ベンリー盛岡西店)を展開。グループ内には、飲食事業やドローンの販売やそれに伴うソリューション事業、十割そばの製麺機の製造・販売などがある。

 

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