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特別企画

2014 年度 主要 14 ホテル経営分析 PART3—成長性

【月刊HOTERES 2015年12月号】
2015年12月11日(金)
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●分析/平尾進一
(ホテル会計システム研究所代表/公認会計士・税理士)
長谷川江利子
(事務所スタッフ)
 
当企画では、有価証券報告書を公表している日本のホテル企業から14 社の、2014 年度(2015 年3 月期など)の収益性、安全性、成長性、生産性、連結財務諸表の分析および減損会計の状況などから、5 週にわたって分析結果を掲載する。
※今回、カラカミ観光㈱が加わっている
 
 有価証券報告書では5 年間の売上高、経常利益、純資産額、自己資本比率などが掲載されているが、成長性の分析では少なくとも5 年間の成長性、できれば10 年間、20 年間、50 年間という観点での成長性を見ることも必要である。
 
 表5 の№ 5、№ 6 の比率で、△=低下、▲△=前期の利益(黒字)が当期は損失(赤字)に、△△=前期の損失が当期減少したがまだ損失
 
 成長性の分析で重要な比率は、総売上高増加率(以下、№ 1 の比率)、営業利益増加率(以下、№ 5 の比率)、経常利益増加率(以下、№ 6 の比率)、自己資本増加率(以下、№ 13 の比率)の四つであるが、ホテル業では為替や株価との関連が極めて高い。
 
 2014 年度の13 社平均の№ 6 の比率は23.7% で、前年平均19 億675 万円の経常利益が、23 億5950 万円になっている。リゾートトラスト㈱で112 億7500 万円の経常利益が152 億5700万円になり、約40 億円も増加した影響が大きい。また、㈱ニュー・オータニで13 億5262 万円から21 億9459 万円に、㈱ホテルオークラで39 億9100万円から48 億600 万円に、㈱パレスホテルで10 億1100 万円から16 億4800 万円に経常利益が増加し、平均増加率の向上に寄与している。
 
 2013 年度の№ 6 の比率は32.3%、㈱パレスホテルで12 億2863 万円の経常損失が10 億1120 万円の利益に、リゾートトラスト㈱で86 億7200 万円の経常利益が111 億7700 万円に、㈱ホテルオークラで28 億5600 万円の経常利益が39 億9100 万円に増加したことが大きかった。なお、12 年度の№ 6の比率は102.5%、11 年度は△ 33%、10 年度は63% であった。さらに、00~ 09 年度まで10 年間の№ 6 の比率を見ると、それぞれ208.7%、34.4%、▲ 58.1%、46.6%、41.1%、16.1%、33.3%、21.5%、▲ 43.0%、▲ 56.8%となる。
 
 2014 年度の13 社平均の№ 5 平均営業利益増加率は7.9%、13 年度は45.6%、12 年度は▲ 29.8% で11 年度は37.3%、10 年度は42.7% であった。00 ~ 09 年度まで10 年間の№ 5 の比率は、それぞれ60.6%、12.1%、▲29.7%、0.2%、26.0%、5.7%、19.3%、1.6%、▲ 52.5%、▲ 35.8% となる。
 
 経常利益の増加または損失の減少の会社は、2003 ~ 13 年度で12 社、7 社、8 社、10 社、7 社、2 社、5 社、9 社、6 社、9 社、11 社と推移し、14年度は8 社となった。
 
 収益面での成長性は№ 5、№ 6 の比率だが、安全性面での成長性は№ 13である。2014 年度の№ 13 の平均は14.9% となっている。13 社平均の自己資本額は199 億円から229 億円に増加した。特に、リゾートトラスト㈱は97億9900 万円もの当期純利益を計上し、さらに新株の発行や自己株式の処分などもあり、自己資本を206 億7900 万円も増加させている。また、㈱ホテルオークラで61 億4600 万円、㈱ニュー・オータニで45 億6366 万円自己資本が増加しており、これら3 社による影響が大きい。
 
 2013 年度では、№ 13 の平均は9.0%であった。藤田観光㈱で60 億9500万円、リゾートトラスト㈱で44 億3000万円、㈱ホテルオークラで42 億8600万円自己資本が増加した影響が大きかった。
 
 № 5、№ 6、№ 13 の3 比率が大きく向上しており、さらに比較対象となる前年の売上高経常利益率が2% 超あり、債務超過でもない会社を、成長性が良い会社とすると、2014 年度特に成長性が良い会社は、㈱パレスホテル、リゾートトラスト㈱、㈱ホテルオークラ、㈱JAL ホテルズの4 社となる。中でも㈱パレスホテルを除く3 社は、収益性分析、安全性分析ともに上位1 ~ 5 位に含まれる会社である。なお、㈱パレスホテルは本店ホテル建て替え完成後2年目の通年営業であり、営業努力による向上以外に、工事期間中に悪化した数値からの回復という要因があり、ほかの3 社と少し性質が異なる。そのため、この中での順位付けは難しく、4社とも1 位グループと評価する。
 
 リゾートトラスト㈱では、メディカル事業の拡大や、営業外収益で為替差益を計上したことなどにより、№ 5 が11.8% 増、№ 6 が35.3% 増でともに史上最高益を記録し、13 社中では3位となっている。また、前述の通り自己資本は206 億7900 万円も増加し№ 13 は34.6% で3 位、№ 12 の比率も34.4% で1 位となっている。同社は2013 年度も、№ 5 が25.6% 増、№ 6が28.9% 増、№ 13 が8% 増加し、成長性1 位グループであった。さらに、12 年度も、№ 2、№ 3 の比率が向上し、№ 13 の比率は10.6% で2 位と、この数年では非常に成長性が高い。
 
 2007 年度の116 億4500 万円の経常利益が史上最高益であったが、14年度はそれを大きく抜き152 億5700万円の経常利益を計上した。これは2 位の㈱ホテルオークラに約3 倍もの差をつけて突出して1 位である。同社は1994 年度では売上高385 億3700万円、営業利益20 億1600 万円、経常利益7 億7500 万円であった。その後21 年間すべて経常利益を計上し、2001 年度と08 年度のみ減収減益であったが、14 年度で売上高950 億円、営業利益109 億円、経常利益152 億円である。自己資本比率は1997 年3月末でわずか9.6% であったが2015 年3 月末では24.8% となった。従って、同社は20 年間の成長性を見ても、全社中1 位と考えられる。
 
 ㈱ホテルオークラは、㈱ホテルオークラ東京などの持株会社にすぎないため、すべて連結財務諸表での分析となっている。
 
 2014 年度は、「ホテル・ニッコー広州」「ホテル・ニッコー蘇州」の開業や、外国人宿泊客の増加、連結会社㈱JALホテルズの好調などを受け、№ 1 が4. 5%で2 位、№ 5 が20.8% で2 位、№ 6が20.4% で4 位と大きく増加している。また、自己資本額は61 億4600 万円、11.8% の増加となっている。
 
 同社は外国人宿泊客の割合が高く、2009 年度には異常な円高により№ 2の比率が△ 22.0% と大きく落ち込み、№ 5 が△ 72%、№ 6 が△ 80% と大幅な減益であった。また、繰延税金資産取崩により、7 億8491 万円の税引後純損失を計上していた。その後、10 年9 月に㈱JAL ホテルズを連結子会社化したことによる売上高、経常利益の増加もあり、10 年度~ 11 年度は、№ 1、№ 5、№ 6 の比率も向上した。12 年度は、新開業の海外ホテルや㈱JAL ホテルズの好成績が貢献し、№ 6 の比率は207% で1 位、№ 13 は3 位で成長性1 位となった。さらに13 年度は、7 月に連結子会社化した㈱ホテルオークラ東京ベイの売上高や営業利益などが加わったこと、外国人客の回復、㈱JALホテルズが引き続きの好調の3 要因で、№ 1、№ 5、№ 6、№ 13 とも良く、13年度の成長性も1 位グループであった。
 
 2002 ~ 14 年度で営業利益を14 億円、21 億円、27 億円、36 億円、45 億円、39 億円、27 億円、7 億円、11 億円、13 億円、29 億円、41 億円、49 億円と連続計上している。経常利益は02年度では31 億円の経常損失であったが、その後9 億円、17 億円、28 億円、37 億円、33 億円、21 億円、4 億円、8 億円、9 億円、28 億円、40 億円、48 億円と計上している。自己資本額は02 ~ 07 年度で365 億円、370億円、377 億円、390 億円、425 億円、443 億円と増加していたが、08 年度は有価証券差額金が4 億6058 万円減少、為替調整勘定が10 億3277 万円減少したため、424 億円へ減少した。09 年度でさらに416 億円に減少し、10 年度~ 14 年度は418 億円、447 億円、479 億円、522 億円、583 億円と5 年連続で大きく増加した。02 年度に㈱ホテルオークラ福岡などの持分法投資損失などで経常損失31 億円、子会社「グアムリゾート」の資産評価損47 億円などで当期純損失61 億円となり、00 年度末に439 億円あった自己資本額は56 億円も減少したが、その後の12 年間で回復し、さらに増額しており、約10 年間の成長性でも良いと言える。
 
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http://www.hoteresonline.com/hoteres/107
 

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