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特別企画 東京ホテル会

インバウンド需要の急回復で過去最高の業績を記録、今後はADR 2万円、RevPAR 1万8000円も視野に

2024年06月03日(月)
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 発足から30年以上の歴史を持つ東京ホテル会。現在は宿泊主体型ホテルを中心に都内260ホテルが加盟し、稼働率、ADR、RevPARなど膨大なデータを集計分析、共有している。昨年の東京エリアのホテルマーケットはインバウンド需要の驚異的な回復で活況を呈し、その状況は今年に入っても続いているという。東京エリアのホテルマーケットの詳細と今度の見通しについて東京ホテル会 代表の髙部 彦二氏に聞いた。
 



東京ホテル会
代表
髙部 彦二氏

稼働、ADR、RevPARともに2019年を超え好調に推移

■東京ホテル会の設立の経緯と加盟条件について教えてください。
 
 東京ホテル会は1987年に城南ホテル会として発足しました。JR品川駅周辺の12ホテルからスタートし、現在の会員数は宿泊主体ホテルを中心に約260ホテル、客室数で約4万8千室の規模となっています。加盟条件は東京および横浜に所在し、客室数50室以上のホテルでしたら大歓迎です。年会費は無料です。スローガンは「競い合うことでしか生き残る道はない」と「人を育てる」を掛け声に、お互いが切磋琢磨して発展していこうという意識のもと毎月の客室稼働率、ADR、RevPARの提出をお願するほか、UG情報などの共有、各種アンケートなども実施しています。
 
■昨年の加盟ホテルの業績はいかがでしたか。
 
 昨年の東京エリアは、新型コロナが5類に移行する前後から稼働率、ADR、RevPARが爆発的に上がり、コロナ前の2018年、2019年よりもよい業績となっています。これがずっと続いてくれたら、コロナ危機の3年間をある程度挽回できるのではないでしょうか。
 
■全国的には稼働率は2019年にまだ至っていないという印象がありますが。
 
 東京エリアは稼働率で比較しますとだいたい2019年と同等程度の水準ですが、ADRやRevPARについては2022年12月より大きく上昇し、2019年を大きく上回っております。例えば今年(2024年)4月は稼働率では前年同月とほぼ一緒の90%ですが、ADRが大きく上昇しているので、結果RevPARは昨年の12,504円から4,029円上がり、16,533円となっています。RevPARについては14カ月連続で対前年を上回っていますね。RevPARは元気のもとですから、これをいかに高めていくかがホテルにとっての宿命です。稼働がちょっと低めでも単価が上がれば清掃代も経費も下がって利益率は高くなりますが、なかなかそうはいきません。満室がうれしいという経営者も多く、これは海外から見ると少し異常なんだろうなと思いますね。

 

新型コロナ5類移行と円安が追い風に

■単価アップができた要因をどのようにお考えですか。
 
 やはりインバウンド需要の効果が大きいです。水際対策が緩和されたことと円安で需要が爆発し、宿泊単価がどんどん上がっている状態です。とくにこの3〜4月の桜のシーズンはその傾向が顕著でした。東京にインバウンドが集中している理由は、コロナ禍で海外と日本を結ぶ大型の飛行機が少なくなり、中型や小型機が主体となっているからです。大型の飛行機が限られていると、フランスだったらパリ、イギリスだったらロンドンのように、日本は東京に発着が集中して一強状態になっています。地方はまだそこまで飛行機の便数が回復してないので、回復してくれば大阪、名古屋なども上がってくると思います。
 また、国内需要では新型コロナが5類に移行したことによって、浅草やスカイツリー、東京タワー、皇居など東京の観光名所を見るツアーが一気に増えました。日本人では円安やインフレで海外旅行費用が高くなっており、国内旅行を選ぶ方が多くなったのではないかと思います。
 一方、あまりにも単価が上がりすぎて、企業の出張経費を上げていただかないと日本人の出張客が泊まれないという問題も出ています。いまはこの価格で売れてしまうので安くする必然性がなく、それがとても頭が痛いところです。
 
■インバウンドが増えることでオンハンドの状況も改善されましたか。
 
 オンハンドは月初めで70%ぐらい、翌月が45%ぐらい、翌々月が30%ぐらいになっており、高い水準をキープしています。ただ中国のOTAで予約を取ったのに、実際には詐欺でホテルには予約が入ってないというケースが出始め、ちょっと問題になっています。万が一、予約漏れの可能性もあるので徹底的に調べなければならず、人手と膨大な時間がかかっています。
 
■それは困りますね。解決策があればよいのですが。ところで東京エリアの地区別で見た勝ち組はどこになるのでしょうか
 
 銀座ですね。RevPARの順位でコロナ禍中では8〜9位でしたがいまは1位になっています。次は渋谷、新宿と続いています。銀座に泊まれない人は有楽町、新橋、秋葉原に流れており、そちらも調子がよい状況になってます。コロナ禍でダメージの大きかった浅草も回復し、現在は10位辺りです。浅草はそれほど大きな企業がなく、観光需要に集中しているので、極端に単価は上がっていませんが安定してます。不景気になると観光客が減るので浅草が東京や日本のホテルの景況の指標になっていると思います。
 
■好調のホテルタイプなどがありますか。
 
 東急ステイ様のように室内に洗濯機が備えられていて長期間泊まれる、複数人で泊まれるようなスタイルが好調のようです。グループで来ているインバウンドが好まれますので。今年9月にオーブンする三井ガーデン銀座築地には全室に洗濯乾燥機付きを打ち出されていますね。ダイワロイネットのように立地のよいところも好調のようです。

 

人材不足の課題を解決しなければホテル業の未来はない

■現在の課題は何でしょうか。1年前には食材原価高騰、人件費高騰、水道光熱費高騰の影響が大きいというお話でしたが。
 
 いまはADRが上がっているので電気、ガス、水道料金が払い切れないというホテルほとんどありません。それよりも大きな問題がスタッフが不足していることです。少ない人員で回していますから休みが取れないといったクレームも出ているようで、頭を抱えているホテル経営者が多いですね。一気に需要が上がったので募集が間に合っていません。フロント処理や清掃が間に合わず、稼働を抑えているホテルも何軒かあります。
 リネンについても洗濯機のキャパシティが決まっているので新規は受け付けないところが結構出てきています。清掃も特定技能外国人をどんどん受け入れています真面目な人が海外から来ていただければ戦力になるので、そういう方を育てていかなければならないでしょう。
 
■求人難は賃金も要因の一つなのでしょうか。
 
 コロナ禍の3年間、売り上げはないけれど人件費などの経費はかかっており、景気がよくなって給料を上げた途端にまた不景気になったら立ち行かなくなる、と考える経営者はいます。そうなるとアルバイトを募集することになりますが、あまり応募がありません。時給を1100円から1400円にしたら応募が集まったというホテルもあるので、時給額で状況が変わると如実に感じております。
 しかし、観光立国を目指すのなら、いろいろな条件を規制緩和していただくとともに、働いている方々にも適正な賃金を払って就職希望率が上がるようにしなければなりません。この重大な課題を解決しなければホテル業の未来ないと思いますので。
 
■今年の見通しについてもお聞かせください。
 
 今年のRevPAR平均値が1万6000円ほど、来年は1万8000円を目指すのがよいと考えています。稼働は90%からさらに上げるのはかなり難しいので、85〜90%に落ち着かせて、ADRが2万円近く、RevPARが1万8000円になれば経費も増えずに一番安定していると思います。

 

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