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高輪ゲートウェイシティに誕生した「JWマリオット・ホテル東京」のデザイン

【ホテルをデザインする】禅とモダニティ。ヤブ・プッシェルバーグが紡ぐ新しいラグジュアリーの形

2026年03月06日(金)
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2025年10月、高輪ゲートウェイシティの中心に誕生した「JWマリオット・ホテル東京」。設計を手掛けたのは、カナダを拠点に世界のラグジュアリーホテルやブランド空間を数多く手掛けるデザインスタジオ、Yabu Pushelberg(ヤブ・プッシェルバーグ)。「アマン・レジデンス東京」に続く日本での大規模プロジェクトとなった本作では、都市の喧騒を離れた“静寂の聖域”をテーマに、禅の哲学とモダンデザインの融合を試みた。「暗から明へ」というストーリーのもと、御殿山の自然、品川の水の記憶、そして富士の象徴をモチーフに、到着から滞在まで一連の体験が“心の静けさ”へと導くよう構成されている。ロビーの「ツリーハウス」や、鎌倉彫の天井装飾、イッセイミヤケのプリーツを想起させるボールルームのガラスアートなど、空間そのものがアートとして語りかけるホテル。デザインを通じて「ウェルビーイング」「バランス」「タイムレスネス」を体現した彼らは、いま、ラグジュアリーの意味を再定義しようとしている。
共同創設者であるジョージ・ヤブ氏とグレン・プッシェルバーグ氏に、デザイン哲学、日本文化へのまなざし、そしてJWマリオット・ホテル東京に込めた思いを改めて聞いた。
 



-ホテルのプロジェクトを通して目指した世界観とは何でしょうか。また、東京という都市をどのように解釈し、空間全体の物語へと昇華させたのでしょう。
 
「ここは東海道における最初の宿場「品川宿」の玄関口であり、日本で初めて鉄道が走った地です。交通の要所であった高輪の歴史に着目しました。
デザインはフィーリング、どう感じるかが最も重要。美しいだけでなく『人がその場所でどのように感じ、どのように記憶するか』という感情と体験の質を追求することに重点を置いています。品川は自然と人工物が融合するポイントでもあることから、自然と建築の融合がコンセプトです。禅の心=日本家屋の縁側から庭園を見て『ホッとする』感じをイメージしてこのホテルをデザインしました。余談ですが、数日前に香川県のイサム・ノグチ庭園美術館に伺い、やはりとても感銘を受けました。


―富士山のインスタレーションや、鎌倉彫の天井など象徴的な要素を選んだ理由を教えてください。
 
「エントランスは、都会の喧騒から静けさへと切り替わる境界。建築は影で表現することも多く、この影が重要なのですが、欧米人はその魅力をすぐには理解できないかもしれません。
1階エントランスは、天然石と木材が織りなす温もりある空間に、削り出された石造りのレセプションデスクが配され、橋本知成氏によるセラミック彫刻が、噴水の水面に静かに浮かび、その質感ある表面が静寂と自然とのつながりを深めます。
そして、まっすぐではなく、緩やかに曲がるアプローチの先に浅い水盤が連なる風景へ。品川の地形や庭から着想を得て、自然の地形のうねりを再現しました。ホテルの代表的なアート作品の一つ、Studio Sawada Designによる『Fuji』がゲストを迎えます」
 


 

Studio Sawada Design(澤田広俊氏)によるアートピース「Fuji」
Studio Sawada Design(澤田広俊氏)によるアートピース「Fuji」

30階のセプションの天井には鎌倉彫に着想を得た装飾が施され、伝統技法を現代的な空間のデザイン要素として取り入れている
30階のセプションの天井には鎌倉彫に着想を得た装飾が施され、伝統技法を現代的な空間のデザイン要素として取り入れている

―そういった、館内の随所に見られる「禅」や「侘び寂び」「自然との調和」といった要素は、日本的美意識を感じさせます。日本文化や精神性はどのような影響を与えていますか?
 
「欧米人など海外からのお客さまが訪れたときに『これは日本的だ』と思えるような、伝統的な日本をモダンなデザインを通して感じられるようにと考えました。ヨーロッパのシンメトリーではなく、安藤忠雄氏のような従来のきちっとした日本的なデザインとも異なる、新しい時代の日本らしさ。自然、オーガニックな要素を取り入れています。
手作業による『不完全な完璧さ』も重要です。家具や照明なども曲線や不均一なフォルムをあえて残しました。それが自然な、不完全の美への敬意なのです。谷崎潤一郎の耽美主義のように、侘び寂びのような「不完全な美」こそ、日本的な美しさだと思っています。

 
―「JWマリオット」ブランドの提唱する「マインドフルネス」や「心温まるエレガンス」と、日本の感性をどのように融合させたのでしょうか。グローバルな一貫性を保ちながら地域性をどう表現していますか?
 
「30階には明るい『ツリーハウス・ラウンジ』があります。高層階のロビーでありながら自然の生命力を感じさせるため、ラウンジの中央に本物の大きな木を配置しました。これはゲストが都会の喧騒を忘れ、自然の中で休息しているような感覚を得るための「マインドフルネス」な空間演出の一環です」
 

「ツリーハウス・ラウンジ」
「ツリーハウス・ラウンジ」
客室のコンセプトは流動的なモダニズム。家具やカーテンも同社のデザイン
客室のコンセプトは流動的なモダニズム。家具やカーテンも同社のデザイン
バスルームは大理石とテラゾーモザイクの壁に癒しの照明を配し、温もりのある空間を演出
バスルームは大理石とテラゾーモザイクの壁に癒しの照明を配し、温もりのある空間を演出

 
「館内のさまざまな場所で、異なる『日本の体験』ができるようになっています。客室は自宅にいるような、ですが自宅ではなく、よりくつろげる雰囲気に。借景も再解釈して、床から天井までの大きな窓からは東京湾や御殿山の景色が広がり、高輪の地形的歴史(かつて海が見えた風景など)をデザインのストーリーに組み込むことで、場所の記憶と繋がる体験となります。
 
そうですね、この客室にあるテーブルは、どことなくマッシュルーム(キノコ)に見えませんか? オーガニック=角のないアールのあるデザインが自然を思わせます。まん丸ではなくて楕円、規則正しくないもの、自然からインスパイアされた『不完全な完全』が、心地よい。
 そして、日本の色彩を取り入れています。藤色や苔のような緑色に日本らしさを感じます。紫色の壁は、ここから見える日の出の直前と日の入りの少し前の空のイメージ。ミルクがかったピンクのような紫色を切り取っています」


-「ホテルをデザインする」とは何を意味しますか? そして今後、どこでおふたりのデザインにお目にかかれるでしょう。
 
「次の世代に向けてデザインを発展させるのが責務です。世代が変われば感じ方も変わります。JWマリオットも最初は『ビジネスパーソン向けのラグジュアリーホテル』であったけれど、今は観光やファミリー層の滞在など幅が広がってきていますしね。置いてある『もの』が高級なのではなく、体験するすべてがラグジュアリーという視点が重要です。
いつも、世界中でいくつもの案件が同時に進行しています。日本では箱根に開業予定の「HOTEL THE MITSUI HAKONE」のインテリアデザインを担当しています。またすぐに会えますよ、楽しみにしていてください」
 

右/ジョージ・ヤブ(George Yabu)氏 左/グレン・プッシェルバーグ(Glenn Pushelberg)氏、左/グレン・プッシェルバーグ(Glenn Pushelberg)氏
右/ジョージ・ヤブ(George Yabu)氏 左/グレン・プッシェルバーグ(Glenn Pushelberg)氏、左/グレン・プッシェルバーグ(Glenn Pushelberg)氏

■「ヤブ・プッシェルバーグ(Yabu Pushelberg)」プロフィール
トロントとニューヨークを拠点とするデザインスタジオ。1980年にジョージ・ヤブ氏とグレン・プッシェルバーグ氏により設立。現在は100名を超えるクリエイターや専門家が在籍する。建築、ランドスケープ、インテリアから照明、家具、テキスタイル、ブランディング、グラフィックまでを手がける。
主要案件は、「Wニューヨーク」、「ラ・サマリテーヌ」(LVMH/パリ)、「フォーシーズンズホテル丸の内 東京」、「麻布台ヒルズ(森ビル)」の新区画など、世界各地のラグジュアリーホスピタリティやリテールが多数。なお、カナダ勲章(Officer of the Order of Canada)、Interior Design Hall of Fame(殿堂入り)を受賞。「AD100」や「ELLE DECOR A-List」にも選出されるなど国際的な評価も高い。
 

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