本誌“HOTERES Entertainment!”2月号で“文化財の魅力を現代に紡ぐ、価値創生プロデューサー”として紹介した(合)京都村正代表の村山カズマサ氏。今春も昨年に引き続き、例年100万人以上が来場する水戸・偕楽園において、夜間ライトアップ「偕楽園 UME The Lights 2026」のプロデュースを担当。2年間で来場者数を約3倍に伸ばした。この実績においては、観光目的の来場にとどまらず、地元客の来場を従来以上に促進する成果を上げた。
その村山氏が、伝統文化とコンテンポラリーという“過去と現在”を架橋するプロジェクトにおいて、最初に顔が浮かぶアーティストのひとりとして名を挙げるのが、三浦大地氏だ。そこで本稿では、両者の視点を通して、日本の文化資産が持つ可能性と、その活かし方について探っていく。
三浦氏が描く、おしゃれをこよなく愛する女の子“Josie(ジョシー)”。これまで数々のブランドとコラボレーションを重ねてきた、人気ファッションアイコンだ。「ゲイジュツノ エキ(GNE) 2025」では、‟GNE guide“を務めるとともに、西陣連合青年会とのマッシュアップ作品として、Josieを西陣織で表現した作品‟Josie’s Nishijin(画像右)”を発表した
まずは、世界中を旅してきた経験を持つ三浦氏に、観光観、さらにはその視点から見る日本について伺った。
「最近、とある旅先で過ごす中で気づいたのですが、“観光”って“光を観る”って書きますよね。そこから、その場所の“光”を見出すこと、そしてそれをどう光らせていくのか、というのが観光地の魅力をより際立たせていく上で大事なのではないかなと思うようになりました。さらに、世界各地を旅する中で感じてきたのは、日本ほど自然の豊かさや文化の奥行きといった、潜在的な魅力的要素が数多く存在している国もないということです。このように、日本には既に魅力的なコンテンツが数多く存在しており、むしろ世界でも稀有なほどに魅力が溢れている国だと言えるのに、昨今なぜか、新規性や特異性といったものを前面に押し出すことにばかり意識が向いているように感じます。果たして日本を訪れる観光客は、そのように“つくられたコンテンツ”を求めているでしょうか?
例えば私が海外に行った際には、もちろん時に星付きのレストランや定番の観光地を訪れることもありますが、それ以上に、その土地ならではのローカルカルチャーに触れる体験に深い魅力や感動を覚えることが少なくありません。それと同じで、インバウンドの方たちが日本に求めているものも、そうした体験なのではないかと思うのです。そう考えると、新規性や意外性を軸にしたコンテンツを海外へ発信する前に、既に私たちが持ち得ている日本文化への理解を深めることこそ、日本の魅力を世界へ伝える上で大切な視点なのではないかと思います」。
JR京都駅を、ジャンルごとに8つのエリアに分けて開催された“GNE”。会場各所では、さまざまなデザインの和服を着たJosieが、‟案内役“としてお客さまを出迎えた。マッシュアップ作品に加え、ステッカーセットや巾着、マグカップなどのJosieグッズも展開され、人気を博した
三浦氏のこうした観点と感性は、村山氏がプロジェクトのイメージを膨らませる際に共鳴を感じるものであり、プロデューサーとしてどのようにマネージしていくか、その輪郭を明確なビジョンとして立ち上げる上で、インスピレーションを刺激するものだという。
「私自身は彼のように、何か創作物を生み出すという意味でのクリエイターではないですし、伝統文化の継承者というわけではありません。ただ、中庸な視点を持ちながら、過去と現在をつなぐ“懸け橋”となり、そこからコラボレーションによって“第三の何か”を生み出していくという意味では、クリエイターでありたいと思っています。そういった意味で、文化への理解、そしてそこから新たな何かを生み出す独創性や芸術性、あとは人柄という意味でも、三浦さんは何が生まれるのだろうというワクワク感や刺激を与えてくれ、また世界観を共有できる存在です」。


彼らのそういった関係を象徴する取り組みが、昨秋、京都駅ビル全体を舞台に、伝統と現代が交差するアートイベントとして開催された第1回「京都駅ビル芸術祭(ゲイジュツ ノ エキ 2025 / GNE)」だ。同イベントは、これまで伝統文化の世界を支えてきたひとびとにとっては“新たな可能性”を、そして次世代を含む多くのひとびとにとっては理解や学びにおける“新たな視点”を提案できた取り組みとして高く評価されている。その中で、村山氏は3つのカテゴリーの担い手として三浦氏に作品を依頼した。
「ひとつは“DAICHI MIURA × GNE(Josie会場案内アイコン)”、もうひとつは手書きのピクセル画で描いた“Josie”と、ピクセル画のシグネチャーアイコンともいえる“PAC-MAN”とのマッシュアップ作品。そして、伝統と現代アートのコラボレーションという意味でも意味深い取り組みとなった西陣織とGNE特別Josieをマッシュアップさせた“Josie’s Nishijin”は京都が誇る西陣織と現代アートの新しい魅力を伝える形となりました。さらには、作品だけでなく、普段会うことのないアーティストと職人が共同で表現する人の繋がりさえも生み出すきっかけにもなり、これまでとは違う、新たなカタチで‟伝統を未来に紡いでいく“ひとつの形を作ったと考えています」。
現在、新たに取り組んでいるプロジェクトにおいても、三浦氏と何か一緒にできないかと模索しているという村山氏。彼らふたりの“マッシュアップ”が、日本の魅力をどのように新たなかたちで引き出していくのか? そして、私たち日本人自身が気づいていない、当たり前の中にある魅力に、どのように光が当たっていくのか──今後の展開に期待が高まる。
「京都村正」
https://www.muramasa.co/
「DAICHI MIURA」
https://www.daichimiura.com/
取材・執筆 毛利愼 ✉mohri@ohtapub.co.jp




