写真:左より1883 Routin France 副社長兼マーケティング部門代表 ステファニー・シャルヴォズ氏,Routin Japan 統括 デニオ杏理氏,1883 Routin France 代表取締役 ロイック・クイユー氏,1883 Routin Japan ブランドアンバサダー アントニー・ステットレー氏
1883 MAISON ROUTIN(メゾンルータン)はこのほど、東京・恵比寿に「Drink Design Center」を開設した。フランス国外では初となる同拠点は、バーテンダーやバリスタ、飲料開発担当者らと共にレシピやコンセプトを形にする場として位置付ける。同時に、フランス菓子を着想源にした新シリーズ「French Pastry」も披露し、日本市場を起点に新たな飲料提案を広げる考えを示した。
プロ向けの共創拠点として始動
発表の場では、1883 Routin Japan 統括のデニオ杏理氏が、日本市場での展開が9年目に入ったことに触れたうえで、今回のDrink Design Centerは来場者や取引先と共に今後のドリンク開発を進めるための場だと説明した。ドリンクは単に飲むものではなく、一杯ごとにストーリーや背景があり、空間や音楽と重なることで体験になるとし、その考え方を「ドリンクデザイン」と表現した。
同センターの具体的な役割については、1883 Routin Japan ブランドアンバサダーのアントニー・ステットレー氏が説明した。一般消費者向けのショールームではなく、バーテンダー、バリスタ、飲料開発担当者らプロフェッショナルが集まり、ワークショップ形式でレシピを組み立てる場として運用していくという。コーヒー、アイスクリーム、スムージーなど幅広い用途を想定しながら、顧客ごとの要望に応じて共同開発を行う拠点として活用していく考えだ。
同センターは営業時間が平日10時から17時まで、利用は完全予約制。シロップソースの試作やテイスティング、ドリンクレシピ開発のサポート、バリスタやバーテンダー向けのトレーニング、企業やブランドとのコラボメニュー開発などをサービス内容として掲げており、設備面ではエスプレッソマシンやミキサーなど、ドリンクメイキングに必要な機材を備える。
プロと共に新たな提案を生み出す共創拠点
1883 Routin France 副社長兼マーケティング部門代表のステファニー・シャルヴォズ氏は、Drink Design Centerの開設について、日本の長年のパートナーであるDSCと共に進めてきた共同プロジェクトだと説明した。センターは、創造性と味覚を軸に、共有、継承、教育を行う場所として位置付けており、プロフェッショナル同士が集まり、新たなレシピやコンセプトを形にしていく役割を担うという。
同氏はまた、この場所を単なる商品紹介の場ではなく、現場と対話しながらアイデアを磨き上げる共創拠点にしたい考えを示した。バーテンダーやバリスタ、飲料開発担当者らがここに集い、新たな提案を生み出し、将来のトレンド発信にもつなげていく構想だ。商品を一方向に届けるのではなく、実際の現場と共にメニューや体験価値を設計していく姿勢が、今回の拠点開設の特徴といえる。
「ドリンクデザイン」という考え方
今回の発表の中核にあったのが、「ドリンクデザイン」という考え方だ。ステファニー・シャルヴォズ氏は、カクテルやドリンクは単に素材を混ぜる行為ではなく、感情や感覚に働きかける体験を生み出すものだと説明した。料理人が一皿ごとに意図を込めるように、ドリンクにも構成や物語があるとし、その発想は日本の「生け花」にも通じると述べた。
さらに同氏は、1883内部では香りの設計思想を「ブルーノート」と呼んでいることも紹介した。これは、シロップ、ソース、フルーツピューレなど多様な素材を横断しながら、香り、味わい、背景を組み合わせ、新たな一杯を構築していく考え方だ。Drink Design Centerは、その思想を実践する場としても位置付けられる。
日本を起点に、アジア市場への提案を強化
1883 Routin France 代表取締役のロイック・クイユー氏は、1883が約140年の歴史を持つフランス発ブランドであり、現在はシロップに加え、ソース、フルーツピューレ、リフレッシャーなども展開し、世界100カ国に輸出していると説明した。そのうえで、日本とアジア市場を重要な成長エリアと位置付けていることから、フランス国外初となるDrink Design Centerの開設地に日本を選んだと語った。
背景には、日本市場が食や飲料に対する関心が高く、品質だけでなく、体験価値やストーリー性への感度も高いことがある。さらに、日本で築いてきたパートナーシップを土台にしながら、ここで開発したレシピやコンセプトをアジア全体へ広げていく拠点にしたい考えも示された。単なる販売拠点ではなく、現場と共にメニューや体験を磨き上げる共創拠点として日本を選んだ点に、今回の開設の意義がある。
フランス菓子を着想源にした「French Pastry」シリーズ
今回の発表では、新シリーズ「French Pastry」も披露された。ロイック・クイユー氏によると、同シリーズはフランスで親しまれている菓子を着想源にしたシロップシリーズで、コーヒーショップおよびミクソロジー向けの9フレーバーとして展開する計画だという。
会場では、クロワッサン、クレームブリュレ、フラン、カヌレ、パリブレスト、パン・オ・ショコラ、マカロンフランボワーズ、エクレアなどが紹介され、6月の世界同時発売を予定していることも説明された。フランスらしさを前面に出した提案であると同時に、Drink Design Centerの開設と同じタイミングで発表することで、日本市場に向けた新たなブランドメッセージを印象づけた。
ドリンクからフードまで広がる活用提案
1883の提案は、ドリンク用途にとどまらない。レセプションでの説明では、同ブランドのシロップは割り材の風味を消さずに香りを重ねられることが強みだとされ、エルダーフラワーと煎茶、シャルドネを組み合わせたドリンク例などが紹介された。シロップの甘さだけを前面に出すのではなく、素材の余韻として香りを追わせる使い方ができる点が特徴だという。
さらに、シロップやピューレの活用法として、前菜のサラダや白身魚向けのドレッシングへの応用例も挙げられた。マスカットとエルダーフラワー、ブラックペッパー、マスカルポーネを合わせたサラダ提案や、パッションフルーツピューレにオリーブオイルとピンクペッパーを合わせた白身魚向けソースなど、飲料と料理を横断する使い方が示された。
ローンチパーティーで提供された料理でも、梅、エディブルフラワー、ザクロ、ミラベル、ゆず、ジンジャーなどの素材が各皿に組み込まれ、1883の商材がフードにも応用できることを体感させる構成となっていた。バー、カフェ、レストランを分けて考えるのではなく、料飲全体の体験設計に使える素材として見せた点が印象的だ。
ホテルの世界観に沿った開発にも対応
インタビューでは、ホテル市場との相性についても言及した。バーやレストランだけでなく、ホテル併設カフェ、映画館、テーマパークなどからもオリジナルドリンク開発の相談があるとしたうえで、ホテルでは館の世界観やコンセプトに沿ったシグネチャードリンク開発へのニーズがあると説明した。
たとえば、サステナブルを掲げるホテルであれば、素材選定の段階から環境配慮を意識した提案が求められる。一方で、ナチュラルな素材だけでは味や印象が弱くなることもあるため、シロップによって甘味や酸味を補いながら全体を整える必要があるという。ホテルが持つブランドストーリーを、ドリンクやフードにどう落とし込むか。その調整役としてDrink Design Centerが機能する可能性を感じさせる。
イベントでは、具体的なカクテル提案も提示
イベントでは、「ドリンクデザイン」という考え方を具体化するメニューとして、アルコール、ノンアルコールの双方から複数のドリンクが紹介された。イベント向けメニューでは、洋の要素を軸にしたロングカクテル「Le Passage d’épices」、和の情景を重ねたショートカクテル「春宵」、ノンアルコールのショートドリンク「Le Jardin aux Fraises」、同じくノンアルコールのロングドリンク「翠潤」などが提示され、それぞれに香りや情景の物語が付されていた。
「Le Passage d’épices」
「Le Passage d’épices」は、みかん半個をベースに、ヴィチペリフェリペッパーをジンに24時間漬け込んだヴィチペリジン15ml、アペロール15ml、1883ジンジャーエール15ml、スーパーサワー5mlを合わせ、シェイク後にソーダ90mlで伸ばすロングカクテルだ。マダガスカルのジャングルを歩くようなスパイスと柑橘の香りの移ろいを表現した一杯だ。
「春宵」
「春宵」は、バーボンウイスキー45mlに1883サクラ7.5ml、1883チョコレート7.5ml、抹茶粉末3gを合わせてシェイクし、大きな四角い氷を入れたロックグラスに注ぎ、削りチョコレートを飾って仕上げる。資料では、春の夜の渓流、湿った土、苔、桜の香りといった日本の情景を重ねたカクテルとして位置付けられており、バーボンの力強さに抹茶や桜の要素を重ねる構成が特徴だ。
「翠潤」
「翠潤」は、シャインマスカット3個、1883エルダーフラワー7.5ml、スーパーサワー5mlをグラスでつぶし、氷を加えてステアした後、パトリックフォンのシャルドネジュース1000mlに煎茶16gとレモングラスドライ9gを加えて24時間抽出した煎茶液60mlと水60mlを注いで仕上げる。日本の山あいの道や茶屋、新緑、川の音をイメージした一杯として紹介されており、煎茶と果実、白い花の香りを重ねたノンアルコールドリンクとして提案された。
加えて、発表会ではフレンチパティスリーシリーズの発想をより具体化したメニューも紹介された。
「The 7AM Martini」
「The 7AM Martini」は、自家製クロワッサンウォッカ40ml、1883クロワッサンシロップ15ml、トリプルセック15ml、生クリーム10mlをシェイクし、液面に削ったクロワッサンを振りかけ、フルール・ド・セルを添えて仕上げる一杯だ。ウォッカにはクロワッサンを24時間漬け込み、さらに香りを浸透させるためにクロワッサンを一度乾燥させていることも会場説明で語られており、ペストリーの香りをカクテルに転換する提案として印象を残した。
また、ドリンクセンターの活用イメージを具体化する実演メニューも紹介された。
「濃厚抹茶の白玉デザートフラッペ」
「濃厚抹茶の白玉デザートフラッペ」は、抹茶20g、1883サトウキビ40ml、牛乳100mlをミキサーにかけた抹茶液40mlをベースに、1883サトウキビシロップ7.5ml、1883フラッペベース15ml、牛乳90ml、氷を合わせて攪拌し、1883アーモンド100mlに漬け込んだ白玉、1883チョコレートソース、さらに生クリーム250mlに1883さくら7.5mlと1883ストロベリー7.5mlを加えてガス充填したエスプーマ、抹茶パウダーで仕上げる構成だ。日本らしさを意識しつつ、インバウンド需要にも対応できる一杯として設計されており、桜とストロベリーのエスプーマによって季節感も加えている。
この提案で特徴的だったのは、味づくりだけでなく、オペレーション面まで踏まえていた点だ。抹茶粉はダマになりやすく、チェーン店舗では扱いにばらつきが出やすいため、あらかじめ抹茶液として仕込む方法を採用。さらに、プレーンタイプのフラッペベースを使うことで、氷による加水で味がぼやけることを抑え、再現性を高めやすい設計とした。こうした工夫により、プロだけでなく現場スタッフでも品質を安定させやすく、より濃厚な味わいに調整できるメニュー提案として示された。
体験価値の設計へ踏み込むブランド戦略
今回の発表は、1883がシロップブランドとして商品を供給するだけでなく、ホテル、バー、カフェ、レストランの現場と共に、料飲体験そのものを設計する段階へ踏み込んだことを示すものといえる。レシピ開発だけでなく、物語、香り、空間、オペレーションまで含めて一杯を設計する姿勢は、ホテルの料飲部門にとっても活用余地が大きい。
世界観を可視化するシグネチャードリンク、アフタヌーンティーやバーでの独自提案、料理との横断的なペアリング設計など、活用の幅は広い。フランス国外初の拠点を日本に置いた1883の動きは、日本市場を単なる販売先ではなく、新たな価値提案を共につくる拠点と見ていることを示したといえそうだ。
ブランド概要
1883 MAISON ROUTINは、1883年にフランス東部シャンベリーで創業したブランド。フレンチアルプス由来の天然水を使用し、サトウキビ由来の甘味を採用したシロップを展開する。ヴィーガン・ハラル認証や保存料不使用も特徴として打ち出しており、カフェやバーに加え、スイーツやサラダなどへの活用も提案している。
1883 MAISON ROUTIN:公式ホームページ
デニオ総合研究所:公式ホームページ
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取材・文:オータパブリケイションズ 松島
Mail:matsushima@ohtapub.co.jp





