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インタビュー  加賀屋 若女将 小田絵里香氏 

顧客満足向上を叶える伝統的な人づくりと先進のマーケティング 和倉温泉の名旅館、「加賀屋」が語るおもてなしの極意

【月刊HOTERES 2018年09月号】
2018年09月14日(金)
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太田 小田さまがお考えになる「おもてなし」とはどのようなものですか。
 
小田 おかげさまでその質問はたくさんいただくのですが、私は「おもても、うらもなし」というように思っています。日本人は“ 寄り添う心” を持っています。加賀屋ではお客さまの思いに寄り添い、お客さまの喜びを自分たちの喜びに感じ、お客さまを家族だと思って笑顔を想像してご要望を叶えることがおもてなしではないかと考えています。
 
 そのためにはお客さまの声(聞こえない声も)を本当に大切にすること。察知力・観察力を研ぎ澄ませ、お客さまと共演してどれだけお一人お一人の想い出づくりに貢献できるかを日々挑戦しています。
 
太田 顧客満足度を高める上での具体的な取り組みについて教えてください
 
小田 常に「笑顔で気働き」というサービスコンセプトを徹底するよう努めています。そして常に控えめであることなど、日本独自の風流さも大切にしています。
 
 具体的には、業務報告に加えて基本動作の高度化を常に図る「ホスピタリティー朝礼」や、お客さまの情報共有を徹底する取り組み、おもてなしを業務評価する「おもてなしKPI」の導入などを行なっています。同時に「おもてなし」のみならず会社の動きすべてを「属人化」から「見える化」(可視化)にシフトしています。
 
 一例をあげると、社員が業務終了後にお客さまに提供して良かったと思うサービス内容を提出し、他の社員が見習う仕組みをつくりました。提出されたサービス内容はその後、お客さまのアンケートと付け合わせて顧客満足と一致しているかの確認も日々しています。こうしてCS推進委員会ではお客さまアンケートから、期待・欲求・不満などを日次で収集・分析し、改善、トレーニングを行なうなどさらなるサービスの高度化につなげています。クレームに対してもリカバリーは当然のこととして、「なぜそうなってしまったか」を繰り返し検証して真因を追究し、再発防止策を徹底するよう努めています。
 
太田 そうしたホスピタリティーマインドの結晶が加賀屋別邸の「松乃碧」になるのでしょうか? グループの中でも高単価の宿となっていますが、どのようなサービスを行なっているのですか
 
小田 「松乃碧」は加賀屋グループとして、賑わいのなかで愉しむだけでなく、静かな雰囲気で寛ぐなど、多様なニーズに幅広く対応するために開業した北陸初のインクルーシブの旅館です。伝統工芸品に囲まれた美術館に泊まるというコンセプトのもと、静かで上質な大人の空間と、お客さまの旅の目的を伺うことでストレスを極力除き、ファーストクラスのコンシェルジュサービスを提供することで最高の思い出をご一緒に創り上げることを目指しています。
 
太田 ところで全国のホテル・旅館では人手不足となっておりますが、どのような取り組みをされていますか?
 
小田 生産性向上委員会を設置し、労働生産性を上げ、効率をあげる取り組みを行なっています。特に客室係は長時間勤務が当たり前の状態でしたので、お客さまとの接点で重視すべきところに人の配置を厚くするようシフトを組み直し、全社的な多能工化を推進しています。近頃は部屋食を好まれる方ばかりではなくなってきていますので、こうした潮流にも対応中です。生産性を上げても決して品質を落とさない。その両立にチャレンジしています。
 
 やりがいの創出で離職率を下げるために、従業員の長期的なキャリア構築も見据えた育成プラン(CDP)も充実させています。そのほか、笑顔がよいと感じたり、手伝ってもらったときに社員同士が渡しあう「スマイルカード」も導入しました。もらったカードは集計し、アワードとして表彰するとともに旅行のプレゼントなども行なっています。福利厚生の拡充として、保育園と母子寮を備えた「カンガルーハウス」は以前より利用してもらっていますし、社員寮も新設しました。
 
 このように加賀屋で働いていること、加賀屋の家族であることに従業員が誇りや喜びを感じ、その充実感がお客さまに伝わることが大切だと思っています。
 
太田 このほど「おもてなしアカデミー」を発足されたとのことですが、開発の経緯を教えてください
 
小田 発足の経緯は加賀屋文化と日本文化と融合させ、日本人の強みである「おもてなし」の精神を発信し、日本、世界のサービス、人創りを牽引し、少しでも喜びあふれる世の中を創りたいと思ったからです。
 
 まだまだ私も向上中の身ですが最近、「加賀屋さんは、どうやって社員教育しているのですか? どうしたらこのようなサービスができるのか教えてください」
 
 といったご要望をお客さまやさまざまな業種の企業さまから尋ねられることも多くなってまいりました。そこで概念論だけではなく、「行動」や「仕組み」までお伝えし、世の中に良いサービスや日本の素晴らしいおもてなしが普及する一助になれればと思い、アカデミーを立ち上げました。また、客室係のキャリアプランに講師という職種も加え、人間的に成長したいという希望に応えたいと考えたのもおおきなきっかけの一つでした。
 
太田 このアカデミーを今後どのように発展させていきたいとお考えですか?
 
小田 ホテル、旅館業はもちろんのこと、あらゆる業種、人を対象に現状行なっている企業さまに対して、加賀屋グループでの実践的な「宿泊型研修」も取り入れ、ビジネスで役立つ人づくり、リーダーづくりをサポートしてきたいと思っています。
 
太田 加賀屋の今後の展望についてもお聞かせください
 
小田 石川県のあの場所に行きたいと思っていただけるような地域活性化をけん引するリーダーになりたいと思っています。いまのお客さまが求めているものも明確に分かってきておりますので、おもてなしはもとより、加賀屋らしいレストランをつくるなど時代を見据えた取り組みに挑んでいきたいと思っています。

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