PART4 生産性の分析
●分析／平尾進一
（ホテル会計システム研究所代表／公認会計士・税理士）
長谷川江利子
（事務所スタッフ）
 
当企画では、有価証券報告書を公表している日本のホテル企業から14 社の、2014 年度（2015 年3 月期など）の収益性、安全性、成長性、生産性、連結財務諸表の分析および減損会計の状況などから、5 週にわたって分析結果を掲載する。
※今回、カラカミ観光㈱が加わっている
 
「生産性の分析」では、付加価値生産性（以下№ 1 の比率）、総資本投資効率（以下№ 3 の比率）、付加価値率（以下№ 6 の比率）など五つの比率の算式に「付加価値」という概念が登場する。「付加価値」とは、経常利益・人件費・減価償却費・不動産賃借料（地代家賃）・租税公課・支払利息割引料の6 項目の合計額である。
 
　表6 の12、13、14、16 の記号「Aは額面500 円」、｢B は100 円｣、「Xは1 万円」、であるが、ほかのホテルとの比較上、50 円に換算している。
 
帝国ホテルが22 年連続生産性1 位、
次いでリゾートトラストとホテルオークラ
 
　生産性分析で重要な№ 1、№ 3、№4、№ 6、№ 9 の比率を見ると、2014年度の生産性が最も良い会社は㈱帝国ホテルで、22 年連続1 位となる。同社は№ 1 の比率が4 位、№ 3 と№ 4 の比率では、ホテルの土地・建物を売却し賃借しているため有形固定資産が極端に少額の㈱JAL ホテルズを除くと2位と1 位、№ 6 の比率が5 位、№ 9 の比率が4 位となっている。また、№ 13の額が2 位、№ 14 の額が5 位、№ 16の額は3 位と、多くの分析数値で上位となっている。
 
　リゾートトラスト㈱は、№ 9 の金額が3935 千円で14 社中1 位、№ 6 の比率が2 位、№ 4 は㈱JAL ホテルズを除くと3 位、№ 1 が5 位と重要な項目の多くが上位となっている。№ 13 の1 株当たりの配当金が43 円で14 社中1 位であり、№ 14 も99.48 円で2 位である。また、同社の主体である会員制ホテルでは、その建物や土地を会員権という形に区分して顧客に売却してしまうため、相対的に固定資産の金額が一般のホテル企業と比べて少なくなる。それゆえ№ 4 の比率が他社より有利な条件で算定されるため、この分を割り引く必要はある。2014 年度生産性は2 ～ 3 位、№ 9 を最重要とみれば同社が生産性1 位とも言える。
 
　㈱ホテルオークラでは、№ 6 の比率が3 位、㈱JAL ホテルズを除くと№ 3と№ 4 の比率が4 位と5 位、№ 1 と№ 9 の金額が6 位である。また、№16 は2 位、№ 13 は3 位と多くの分析項目で上位となっており、生産性2 ～3 位と考えられる。所有権移転外の未経過ファイナンスリース料は、14 社中最大額の51 億900 万円となっている。また、オペレーティングリース料残高76 億2300 万円も13 社中4 番目に多く、これらの127 億円を固定資産に加えて、№ 3 と№ 4 の比率を計算すると、30.7％と40.2％に数値が少し悪化するが、14 社の平均値よりは良い数値となっており、2014 年度生産性は2 ～3 位となった。
 
　以上3 社が2014 年度の14 社中生産性分析、1 株当たり指標分析で1 ～3 位で生産性の良い会社である。しかし、土地建物を所有しているか否か、正社員中心なのか正社員が少なくパートタイマーや人材派遣、業務委託が多いのかなどの状況が各社で全く異なる。そのため、どの比率を重視するかによっても順位は異なる。
 
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