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誠心学園校長 広瀬 道氏に聞く 

キッチンと人との関係 人の対応にもっと目を向けるべき

【月刊HOTERES 2016年06月号】
2016年06月17日(金)
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人間と厨房のアンバランス
 
広瀬 企業ではコストパフォーマンスも大事ですから、必ずしも批判することはできませんが、専門学校ではコストパフォーマンスではないはずです。ですから専門学校の厨房の在り方は、ボタンを押すことを教えるのではなくいろいろな厨房メーカーの機器をそろえ、それらを体系だってきちんと説明できるように、体験してもらうようにすべきです。そのためにはまず教員がしっかり身に付けるようにならなければなりません。
 
――先生の多くは、今のように進化した機器で修業なり実践したりしてきているわけではないでしょうから大変ですね。
 
広瀬 私どもの学園は以前よりそのことを大変重視してきました。廣瀬理事長は理論と実践の調和を掲げて学校の運営にあたってきました。調理理論だったり製菓理論だったりを大事にし、調理科学・製菓科学を学校の柱にしました。こうした視点で教育しなければ応用のきく人間は育ちません。学校でのキッチンもこうした科学的な観点から見直す必要があります。
 
 科学的な話ができなければ、一般的になりますがこれまでやってきた調理師の経験とカンに頼ることになります。そうなれば各人の経験年数の違い、職場の違い、扱ってきた機器の違いなどで、同じ料理を作る場合も微妙に違ってきます。似たり寄ったりにはなるかもしれませんが同じではない。
 
――先生の違いで「どちらが正しいの」となりかねません。
                       
広瀬 それでは困るわけです。フランス料理を例にとればこの100年ほどで体系だった形になりました。その体系だった調理法ができたおかげでフランス料理というものが世界に広がったと思うのです。同じように厨房も進化してきました。最近の厨房は驚くほど発達しています。しかしそれを使う人間はそれほど進化していません。そのアンバランスが問題だと思います。
 
――学校の出番がそこにありますね。
 
広瀬 前述したスチームコンベクションもいろいろあります。基本は後ろにファンがあり、水蒸気を出して均等に巡回させるという調理方法ではありますが、それだってメーカーによってはそれぞれのくせがあります。それを知れば、こういう調理の場合はこのコンベクションは向かないと分かったりします。ただ作ればいいというものではなく、そういう理屈が分っていないと年を重ねた際にいい料理ができないでしょう。時代について行っていないということです。
 
――年配者に多く見受けられます。
 
広瀬 年配者だけではありません。若い人も多いです。科学的な視点を持たないと結局、厨房を使いこなすことができないばかりか、厨房に使われている状況になりかねません。
 
厨房を使いこなすために
 
――厨房を使いこなすには、どうする必要がありますか。
 
広瀬 メーカーの力を借りるのも大事でしょう。いろいろな厨房器具をそろえてもらい教育をしてもらうことです。それぞれの機器の特徴がありますから、きちんとその特性を教えてもらうことです。それに新しい機器ができたら、予算の許す限り即購入するようにしています。
 
 それと2年前に職業実践専門課程という制度を取り入れ、外部からの専門家に来てもらいカリキュラムのチェックをお願いしています。常に世の動きに合わせて、教える内容を変えていく必要があるからです。やはり業界の最前線にいる方々の意見を聞く必要があります。
 
――どのくらいのペースでカリキュラムのチェックをしているのですか。
 
広瀬 年に2回のペースです。世界料理オリンピックが4年に一回行なわれていますが、前回ドイツのエアフルトに行ってきました。それは感動ものです。世界の超一流選手が集まり技を競うものですが、大変勉強になりました。一番驚いたのは、技術や味を審査するのはもちろんですが、なんと材料の捨てた分の重さを量っていたことです。いわゆるエコの考えもチェック項目に入っていたことです。ニンジンの皮をむいて捨てるのかだしに使うのか。これからの厨房を考える大きなヒントがここにあります。
 
 エコを抜きにして未来の厨房はありません。また人の動きはできるだけ少ない方がいいわけですから、どの機器をどこに設置する、ということも大事になってきます。動きもエコになる必要があるでしょう。経験とカンの部分も最終的には必要になってきますが、科学的で合理的な考えが求められます。
 
――無駄な動きをなくすということも大事ですね。
 
広瀬 そうです。ふつうのキャッシャーは入り口を入ったところにありますが、某外食チェーン店では違います。必ず厨房のそばにあります。最少の人数で最大の効果を発揮するには、調理場にいる人間が必要な時にすぐ会計ができるというレイアウトになっているのです。また掃除機よりもモップを使うという考えです。モップならひとふきですみますから。
 
 それもこれも使いこなすことが大事です。厨房も使いこなすという姿勢が大事です。そのためには何回も言いますが人がキーワードになります。キッチンと人、材料と人、道具と人――いずれのことがらも当然ながら人がかかわってきます。この、人の教育にこそすべてを集約させてカリキュラムを組んでいることが誠心学園の大きな特徴と思っています。
 
――本日はお忙しいところありがとうございました。

広瀬 道氏
学校法人誠心学園
東京誠心調理師専門学校校長
国際フード製菓専門学校校長
1966年生まれ。帝京大学薬学部卒。東京ヒルトンホテル勤務後、誠心学園入職。(社)神奈川県専修学校協会理事、(社)全国製菓衛生師養成施設協会副会長、(社)神奈川県洋菓子協会理事、内閣府6次産業人材ワーキンググループメンバー

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