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インタビュー  デービッド ブーレイ 

日本の伝統食材に出会い、新たな気付きを得る それらを活かし食と健康、食と科学との結びつきを啓蒙していきたい(後編)

【月刊HOTERES 2019年06月号】
2019年06月21日(金)
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葛との出会いは
私の人生を大きく変えた
 
❒ さまざまなお客さまと接点をお持ちだと思います。お客さまの食と健康に関するエピソードをいくつかご紹介いただけますか。

 
 私が「ブーレー・アット・ホーム」をオープンした2 日目のことです。ユーモアあふれる医師でもある大学教授夫妻が来店し、夜通しジョークを言い合っていました。そして、帰り際、私が彼に健康に関する本を差し上げました。彼が、「どのような意味か」と尋ねたので、「ご夫妻のために健康チームを組みます」と答えました。すると彼は、「あなたよりも少し年上だが、ちゃんと歩くこともでき、すこぶる健康だ」と言いながらも興味を示してくれましたので、「では翌日血液検査を受けてください」と言いました。そして、彼はバレンタインデーに12 品のコース料理を食べた翌日の検査結果の数値を見て驚き、私のもくろみに気づいたそうです。
彼は「食べ物でこれほどエネルギーを感じた経験はなく、まもなくリタイアする予定だから、残りの人生ここへ毎日来なくてはならない」と言いました。
 
 血糖値を安定させるのに役立つものとして、私は日本の葛の存在を知っていました。ある日、80 年代から糖尿病を患っている友人のミュージシャンのためにデザートを作りました。彼は早朝からアルバム制作に取り組んでいて、「今は何も胃の中に入れたくない」と言いましたが、しばらくした後、「何かオレンジを使ったものを作ってほしい」と頼んできました。
私はオレンジジュースを煮詰め、葛を使って泥状にしたものを冷蔵庫に入れてしばらく冷やしてから、ライチシャーベットと粒状の蜂蜜をトッピングして彼に差し出しました。それは土曜日の夜のことで、日曜日はお休みでしたので、月曜日に彼が再び私の許を訪れ、家に帰って血糖値をチェックしたところ、数値が安定していたのが信じられず、「よく聞いていなかったが一体何の効果だったのか」と尋ねてきました。
 
 ブルックリンに住むボブというたいへんクールな友人がいまして、彼は会社を上手に売却した賢い男です。ただし、彼は贅沢( ぜいたく) 三昧でいつも満腹状態。自身をモルモット化していることに全く気づいていませんでした。私は彼にライフサイクルを変えるよう提案し、血糖値の安定維持につながりました。私は、いつもこういった取り組みをしています。
 
 葛との出会いは、辻さんと京都へ行ったときのことでした。神社を観光した後、黒糖シロップをかけた葛餅を食べたのです。それが明らかに健康に害を及ぼさないものであることを知り、もっとよく理解したいと思いました。シェフとしてアメージングなことができそうだと気づき、勉強のため数年にわたって前のお店をクローズすることを決めた理由の一つとなりました。
 
 
食を通じて身体のバランス維持を
図っていきたい
 
❒ 最後に今後の取り組みについてお聞かせください。

 
 ご存じの通り、私は別の取り組みにも着手しました。栄養についてもっと勉強しようと、ボストンへ行き、ハーバード大学のエグゼクティブMBA プログラムを受けようとしています。
 
また、ニューヨーク大学との10 代向けのプロジェクトも間もなくスタートします。私が8年前に「シェフ&ドクター」シリーズを立ち上げた当初に登場してくれたニューヨーク大学の医師が、「良い医師はどんな薬を服用すべきか告げるが、偉大な医師は副作用や効き目が強すぎる薬から距離を置き、身体のバランスを整える」と言いました。
 
それはまさに、私の考えと一致するものでした。おそらく事実に近いと思います。私は米国人の85% が過剰医療状態にあると思っていますので、なんらかの責任を果たしていかなくてはなりません。
 
そのためには世論の支持が必要になります。私たちはこれまで、やらなければならないということをたくさんやりすぎていました。だからこそ、私は皆さんに気づきをもたらしていく活動をしていきたいと思っています。
 
 この2年間で、私は素晴らしい人たちとの出会い、かかわり、そして学びを経て、「ブーレー・アット・ホーム」の開店にこぎつけました。店内には三つのキッチンがあり、天井と壁面に複数の映写装置を備えています。ここでは食べるものすべてについて、私たちが調理する過程を見ることができます。どのような食材を買うべきかなど、ご自宅に戻った後に役立つ情報をお持ち帰りいただけるというわけです。私たちが今後より健康を目指すなら、自然界のバクテリアについてさらに学び、料理に取り入れるべきだと思います。
 
 皆さんはコンブチャをご存じですか。昆布茶ではないですよ。これは、健康に良い菌類を使った発酵食品です。米国の大手健康食品チェーンで取り扱いがあり、大人気の商品の一つになっています。以前、ジェットブルー航空の社長と会った際、同社の若いスタッフ250 人がコンブチャのボトルを持っていると言いました。彼らは二重発酵ビールのサワービールも好きだそうです。コンブチャはクールなデザインのパッケージになっており、有名人が推薦するなど、商品の良さが上手に伝わるプロモーションで支持を得ています。
 
 今、私は菌類に興味を持っています。皆さんにも、ポール・ステイトメントという人物に注目いただきたいですね。彼はワシントンの菌類学者で、原発問題を抱える日本人に役立つ計画を持っています。特定のパインツリーで栽培したキノコを使って放射能汚染を除去する方法で、実験に基づいたものであるそうです。詳細は彼のウェブサイトに掲載されていますが、とてもアメージングなものと感じるでしょう。
 
 いろいろお話ししてきましたが、私がお伝えしたかったのは、私たちの取り組みに対して関心を持ってくださることを本当にうれしく思うということに尽きます。どうもありがとうございました。
 
❒ さらなるご活躍を期待しています。今回はありがとうございました。

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