今夏、業界に衝撃をもたらしたOTA「Agoda」によるトラブル事案。7月10日、観光庁は同サイト運営会社に改善を求めている。今回のトラブルはなぜ起きたのか、未然に防ぐ手立てはあるのかという点を含め、同社グループで旅行プラットフォーム「Booking.com」日本代表 ルイズ・ロドリゲス氏に、OTAおよび旅行プラットフォームにおける、安全性・信頼性のための手段などを改めて聞いた。

Booking.com 日本代表 ルイズ・ロドリゲス氏
Agodaの予約トラブルは今回に限らずこれまでもあった。これらの事案はOTAに「宿泊商品」として卸す仲介業者によるトラブルとは言え、「外資OTA」の信用を害する由々しき問題だ。そこで、テクノロジーを駆使して安全性や信頼性を担保してきたBooking.comに問題点と課題、講じている策について確認した。
まずBooking.comは、世界有数のオンライン旅行プラットフォームの一つで、旅行者と世界中で最も多様な宿泊施設、数多くの記憶に残る体験や観光スポット、航空券、レンタカー、タクシーなど多様な交通手段を旅行者と結びつけている。世界中の旅行者に優れた価値、利便性、サポートを提供し、「すべての人に、世界をより身近に体験できる自由を」をミッションとしている。旅行者にはプラットフォーム上で45言語に対応し、また宿泊したゲストから3億7万件を超える検証済みのレビューなども保有している。
Booking.comに掲載するホテルやその他の宿泊施設はすべて、空き状況と料金を完全に管理しているという。ただし、「当社には厳格なガイドラインと行動規範があり、当社の利用規約に違反する行為が報告された場合、必要に応じて対応を取ります。これには、パートナーに対し、すでに確認済みの予約を公正に履行し、当社の共通のお客さまに適切な代替案を提供するよう求めることが含まれます。 宿泊施設が予約を履行できない場合、当社はお客さまの代理として介入し、適切な対応を講じます」。
講じている「トラブルを未然に防ぐ策」とはどのようなものか
同社は、旅行者の安全を確保するため、AIテクノロジーなども取り入れながら堅固なセキュリティ対策を継続的かつ最適化に努めている。宿泊施設の掲載内容の検証プロセスを極めて真剣に捉えており、セキュリティチーム、現地パートナーサービス、カスタマーサポートチーム(24時間365日対応)による定期的なチェックを実施。特定の施設に関して懸念が生じた場合、必要に応じて調査を行ない、必要に応じてサイトから削除する措置を即座に講じるとしている。
「私どもが考えるプラットフォームの役割として、万一お客さまにトラブルが発生した際は、当社のカスタマーサポートチームによる24時間365日対応が可能な体制を整えています。お客さまは電話、メール、またはウェブサイトやアプリ内のチャットメッセージを通じて、ご要望やお問い合わせいただけます」。旅行者がより楽しく、快適にサービスを使えるためには、ユーザー側もやや怪しいと感じたチャットからのリンクやメッセージの内容が届いた際には、カスタマーサポートチームへの相談が賢明だ。すなわち、これらの情報の蓄積が、AIテクノロジーによるパトロール強化につながっていくからだ。
ユーザーの通報やレヴューがトラブルのストッパーになる
Booking.comは「すべての人に、世界をより身近に体験できる自由を」をミッションに幅広いタイプの宿泊施設やフライト、現地でのアクティビティやレンタカーなどを用意し、旅行者それぞれの要望に合わせたプラン作りを柔軟かつ簡単にプラットフォーム上でシームレスに行なえるようにしている。現在、AIテクノロジーでの旅行者およびビジネスパートナーへのアシストの拡充を進めており、その中には旅行者が滞在した後に残しているクチコミ=大切な数1,000件にものぼるカスタマーレビューをAIが要約するサービスなども含まれている。「これからは一層お客さまの旅スタイルは場所検索ではなく、興味や関心ごとを入り口に、国内外問わずにまったく知らなかった場所への旅へと広がるでしょう。そんな醍醐味を与え続けることができるのは、デジタルならではだと思いますので、弊社のプラットフォームを使いこなしてみて欲しいです」。
つまり、トラブルを回避する手段の一つとしてユーザーのクチコミの力は大きく、またOTA側もいわゆる“空売り”をするような悪質な仲介業者の見極め・自己防衛力を高める必要がある。ある業者は「いたちごっこで防ぐことは難しい」と吐露するが、テクノロジーの力と共に健全化を推進することはできるはずだ。