坂井市の三国港で水揚げされる甘えびサイズが大きく、旨味や甘味が強い。また正式名称である‟ホッコクアカエビ“の名の通り、赤味が強いのも特徴だ。水揚げから24時間以内のものが流通しているが、なかでも最後の網で揚がる‟あがりこ“と呼ばれるものは特に鮮度がよい。生に出会えたらぜひ、ミソも卵もあますところなくすべてを味わってもらいたい
福井県坂井市が‟2025年 美食都市アワード“の受賞を記念し、東京・表参道で展開する同県アンテナショップ内の「ふくい南青山291_Cultive291」と「ふくい、望洋楼 青山店」で期間限定の特別メニューを提供している。福井グルメと言えば越前がにを思い浮かべる読者も多いと思うが、今回の主役は坂井市の三国港沖で獲れる甘えびだ。同港は寒流と暖流が交わり良質なプランクトンが豊富なため、多様な魚介類が水揚げされる。冬場に旬を迎える越前がにはその甘みや旨みが豊かなことで人気があるが、初夏や初秋に旬を迎える甘えびも同様に芳醇な味わいを持っている。そしてその味わいは、甘えびのイメージを変えるほどの美味しさと濃厚さだ。
坂井市は、甘えびをはじめ、越前がにや貝類などの海の幸に恵まれているだけでなく、野菜や果物といった大地の恵みも豊富だ。特に、日本最大級のパイプラインを活用し、夜間かんがいのもとで育てられるコシヒカリは、全国有数の美味しさを誇る。さらに若狭牛などの山の幸にも恵まれ、美食の街としてオールマイティな魅力を備えている
今回両店では、“甘海老カツピラミッド丼”や“甘海老ソースカツ丼”、“甘海老カレー”、さらには生の甘海老の美味しさを堪能できる“越前三国甘海老押しずし”、脱皮直後の“もちえび”を唐揚げにした一品など、多彩な調理法で引き出された甘えびの魅力を存分に味わうことができる。そのほかにも、東尋坊近海で海女が採った天然わかめの天日干しを使用した“もみわかめおにぎり”や、100年間代々受け継がれてきた技術で作られた“谷口屋おあげ”、丸岡在来種のそばなど、美食の街・坂井市ならではの味覚を堪能できるメニューも提供されている。
国の重要文化財である「丸岡城」エリアに咲き誇る桜を愛でる‟竹田の里しだれ桜まつり“や、北陸三大祭りのひとつである‟三国祭”。さらには‟三国花火“に‟三国湊かに祭り”、‟丸岡古城まつり“など、年間を通じてお祭りや伝統行事が開催されているのも坂井市の魅力だ
坂井市は、三国湊、東尋坊、丸岡城下といった歴史や自然に恵まれた観光資源に加え、海や山の豊かな食の幸にも恵まれている。
しかしそうした資源に甘んじることなく、「一般社団法人DMOさかい観光局」を中心に、戦略的かつ計画的な魅力創出と情報発信に取り組んできた。その活動は、漁業者や生産者、料理人、観光関係者と連携を図りながら、体験型イベントの開催や新メニューの開発、地域全体のブランド化、そして国内外への情報発信まで多岐にわたる。こうした取り組みの積み重ねが、今回の‟美食都市アワード“受賞にもつながったといえるだろう。
さらに今回特筆したいのが、受賞後のアプローチだ。坂井市は、“美食都市アワード”の受賞を記念した特別メニューを東京・表参道で提供するにあたり、東京のメディアを集めた発表会を開催した。同会には坂井市長・池田禎孝氏と、(一社)DMOさかい観光局会長・刀根亨氏が来場し、両氏による挨拶や魅力紹介のトークがあった。それが実に軽妙で堅苦しさがなく、さらに食材や料理の提供や見せ方、サンプル展示の構成までが洗練されており、筆者がこれまで参加してきた自治体主催の発表会の中でも印象に残る仕上がりだった。PR会社の選定も含め、坂井市のこうしたアプローチに地方の魅力を洗練されたかたちで発信するセンスと実行力が感じられた。資料として配布された同市のFACTBOOKもすっきりと見やすく、構成・情報ともに的確に整理されており、訪問意欲を刺激される内容となっている。
DMOが目指すべきひとつの成功事例として、ぜひ参考にしてもらいたい。
さかい旅ナビ
https://kanko-sakai.com/
“美食都市アワード”受賞記念メニュー
https://kanko-sakai.com/event/5836/








担当:毛利愼 ✉mohri@ohtapub.co.jp