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第七回 島田 律子  伝統は“守る”のではなく“創る”もの 

第七回 (株)横浜君嶋屋 売れるか売れないかではなく「飲み続けられる酒」を基準に選ぶ

【月刊HOTERES 2017年12月号】
2017年12月22日(金)
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日本酒造組合中央会認証「日本酒スタイリスト」として精力的に活動を続けるタレントの島田律子氏が、日本の伝統文化、日本酒の魅力を深く伝えることで、海外からのお客さまをおもてなしするホテル、レストランの力を向上させるためのヒントをお届けしていく本連載。今回は1892 年創業の酒販店、株式会社横浜君嶋屋の代表取締役を務める君嶋哲至氏を訪ねた。横浜、銀座、恵比寿で楽しく角打ちをしながら厳選された日本酒、ワインを購入できる店舗を展開する君嶋氏に、お客さまに提供する酒の選び方、全国の蔵元との取り組みなどについて話を聞いた。弊社オータパブリケイションズの義田真平を交えた2回連続の鼎談でお伝えする。

島田 律子(しまだ・りつこ)
スマイル ブリュー カンパニー代表・タレント・日本酒スタイリスト(日本酒造組合中央会認証)。日本酒関連の講演・イベントの司会や出演など年間50 本以上をこなす。TVや雑誌などのメディア出演・コラムの執筆も多く、イベント、飲食店、百貨店、酒器のプロデュースやコーディネートなど、日本酒の魅力を伝える活動は国内外を問わず多岐にわたる。近年、女性ならではの視点から、日本酒の美容・健康効果に着目。日本酒の美肌・美白・アンチエイジング効果を取り入れたライフスタイルを提案し、自らもその生活を実践する。2016年にはSMILE BREW COMPANY を立ち上げ、「日本の美を日本酒で」をテーマに『オトナの日本酒TASHINAMI 塾』を主催する。
 
君嶋 哲至(きみじま・さとし)
1960 年横浜生まれ。1892(明治25)年創業の酒販店の4代目。大学卒業後、一般企業に入社。1983 年家業である君嶋酒店へ。93 年株式会社横浜君嶋屋設立。自らの感覚で選び抜いた酒を国内外に向けて紹介し、業界の発展にも貢献している。諸外国で日本酒に関する講演を多数行なうことで、世界に向けた日本の酒のプロモーションにつなげている。日本ソムリエ協会副会長、田崎真也ワインサロン・NHK 文化センター・東急セミナーBE の講師を務める。

君嶋屋を任されるまで日本酒を
おいしいと感じたことがなかった
 
島田 「横浜君嶋屋に行けば必ずいいお酒がある」という声をよく耳にします。日本酒、ワインをセレクトする確かな目を持つ君嶋さんに、横浜君嶋屋の歴史を聞いてみたいと思います。君嶋 横浜君嶋屋は2017 年に創業125 年を迎えた酒屋です。私が子どものころは、ブルーカラーの方々が朝から立ち飲みに来るような下町の店でした。皆さま安い酒を一気に飲むので、おいしいとかおいしくないといった基準の品ぞろえではなく、日本酒4種類、ワイン2種類しか置いていませんでした。
 
 戦前は「賀茂泉」という蔵元から原酒を入れて、自分たちの店で一升瓶につめて「山王橋」という銘柄で売っていました。「山王橋」を造るのにも唎酒の能力が必要で、水をたくさん混ぜればもうかるけれどおいしくなくなります。原酒と水の絶妙な配合バランスを見極めなければならず、曽祖父がその能力にたけていたようで「山王橋」の人気で繁盛していたようです。
 
 私はそういう場所で育ったのですが、お客さまは人情味のある人たちで、自分は今日の夕飯を食べるお金がないような状況だというのに、お金が入るとそこにいるみんなにごちそうしてしまうんです。音楽好きの子どもだった私に、当時高価だったLPレコードを買ってくれた思い出があります。
 
 私は店を継ぐ気はありませんでしたから、大学を卒業して一般の会社に就職しました。ところが入社から2年ほどたったころ父が体調を崩してしまい、実家に戻ることになったのです。私は何をすべきなのかを考えたのですが、自分自身日本酒がおいしいと感じたことは一度もなかったので分からないわけです。
 
 そんなとき、友人と行ったバーに「満寿泉」の大吟醸があって、飲んでみたら「日本酒ってこんなにおいしいのか」とはじめて実感しました。
 
島田 日本酒との出会いは「満寿泉」だったのですね。

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