南フランス ニース名家出身で、パリ育ちのジャン・メデゥサン氏が、独自の体験と家族エピソードを交えた料理に関する書籍を発表する。本誌では、2018 年4 月からメドゥサン氏のニース料理レシピをエピソードとともに連載で紹介していく。
ジャン・メデゥサン
Jean Medecin
〈Profile〉1971 年フランス パリ生まれ。父はオペラビジネスの実業家、母はオペラ歌手。南仏ニースのジャン・メデゥサン通りはかつて同市長であった祖父の名に由来。叔父ジャック・メデゥサン氏は料理本を執筆し世界的ベストセラー。食文化や料理を愛する過程環境に育ち、幼少期よりたびたび家族とともにニース料理に親しむ。金融ビジネスを手掛けるかたわら料理本を執筆。
Instagram NICE_MEDECIN
食品加工業の近年の技術の進歩には目覚ましいものがあり、大量の製品を安価に生産することに成功し、その後は品質の向上に重点を置いていますが、料理を手づくりするには時間が必要だというのは、いつの時代も変わりありません。カット野菜を使うようなちょっとした「こつ」で、調理時間が短縮されますが、時間への投資はやはり大事なのです。私は個人的には、時間をかけることは肯定的なことだと思っています。毎食ごちそうを食べなければならないという義務はどこにもありませんが、夕食に招いて料理に手間をかけてもてなすのが招待客に対する敬意の証しとなる場合があると思うのです。料理することに少しでも喜びを見出すのであれば、キッチンで過ごす時間は楽しくもあります。作って楽しい料理を作ることで自分が楽しみ、お客に食べてもらい喜んでもらうこと、この二つで、料理というものは成り立っているのです。