世界のスパ情報に精通したウエルネス事業のプロフェッショナルである相馬順子氏と世界のウエルネス事業者、識者との対談を通じて、ホスピタリティー業界に向けたメッセージを伝える本連載。
近年、国際社会でその重要性が大きくなってきているESG(環境、社会、ガバナンス) の動きがウエルネスにも影響を与えつつあることを踏まえながら、 将来にわたって必要とされるウエルネスの形を追求していく。
第4回はエッセイスト・画家、ワイナリーのオーナーとして著名な玉村豊男氏。1991 年にご夫妻で長野県東御市に移住し、2004 年にオープンした農園&ワイナリー&カフェレストラン&ギャラリーのヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリーに相馬順子氏が訪ねた。
結果的に幸運だった、
移住、そしてワイン造り
相馬 玉村さんにはエッセイやアート、ワインのことなどいろいろ聞きたいですが、どういった経緯でこちらのヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリーをつくられたのでしょうか?
玉村 私は昔からあまりゴールや目標を立てないタイプでして、行き当たりばったりで判断してきました。
東御市に引っ越してきてから25 年、ワイナリーを始めて16年になりますが、当初はおいしいワインができるかどうか、この場所のレストランにお客さまが来るか分からなかったです。
しかし10 年、15 年と続けてこられたことは、結果として幸運だったと思います。もともとは夫婦二人でゆっくりするために来たのですが、人が集まるようになり、ワイン造りがうまくいき、そのうちワインを造りたい人が出てきて、ワインの教育アカデミーを作り、小規模ワイナリーを増やす活動をしてきてその成果が出てきたところです。
ここにきた当初10 年は二人で野菜農園を作り東京におろしたり、趣味でブドウを植えて、自分で飲むようにワインを造ってもらっていたんですが、だんだん地球温暖化の影響で温度が上がりいいブドウが造れるようになってきて、本当に成り行きなのですが、ある酒造会社がワインを造るということでかかわっていたところ、直前で話がつぶれて、私が借金してワイナリーを作ることになりました。
相馬 計画をして、というわけではなかったんですね。
玉村 僕たちは子供がいないからその後どうなるか分からない。そういう土地はこの辺りにもありますよ。昔の庭や畑が、誰も面倒を見る人がいなくなって放棄されたところ。
野菜の畑なら枯れてしまいますが、ブドウの木は一度植えると50 ~ 80年は生きます。人間の寿命と同じで、30年を過ぎると生産能力が落ちますが、ワイン用のブドウは生産能力が落ちてからの方がおいしく、30 年過ぎてからが本領発揮です。50 年位で植え替えを考え始めて、中には50 年でダメになるのもいるし、80 年、100 年生きる木もあります。
相馬 本当に人間みたいですね。