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第十五回 『とんがりホテル コンセプトが斬新な魅力宿』 第十五回「UNWIND HOTEL & BAR 小樽」マネジャー 大場伸二氏

【月刊HOTERES 2020年11月号】
2020年11月30日(月)
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 宿泊産業の競争が激化し、ゲストのニーズが多様化しているいま、ホテルのマーケティングに求められている戦略のひとつは、とんがりをつくることである。とんがりで差別化し、そのとんがりに関心のあるゲストが集まる。本連載では、そんなコンセプトが際立ったホテルや宿泊施設を厳選して紹介し、それを支える秘訣を紐解いていく。担当するのは、立教大学観光学部で宿泊ビジネスを学ぶ学生。学生のピュアな目に、日本のホテルはどう映り、どう表現されるのか。

 取材・執筆/立教大学観光学部 小倉ひろか・渡辺初音 監修/宿屋大学 代表 近藤寛和
 

クラシックかつコンテンポラリーな世界観を実現


 UNWIND HOTEL & BAR 小樽は、北海道で初の外国人専用ホテルとして昭和6(1931)年に建築された「旧越中屋ホテル」をリノベーションして誕生したブティックホテルである。戦中戦後、陸軍や米軍に接収された歴史があり、小樽市指定歴史的建造物にも指定されている。古くて優美な洋館が点在する小樽の情緒あふれる街に溶けこむスタイルである。リノベーションの技術が高いのか、ホテルは、その美しい建築情緒や世界観はそのままに、クラシック&コンテンポラリーという世界観を表現し、見事に生まれ変わっている。マネジャーの大場伸二氏をインタビューした。
 

運河と洋館の街「小樽」を、さらに魅力的に演出するUNWIND HOTEL & BAR 小樽。運河まではたったのワンブロックというアクセスの良さ
運河と洋館の街「小樽」を、さらに魅力的に演出するUNWIND HOTEL & BAR 小樽。運河まではたったのワンブロックというアクセスの良さ
写真左手がエントランス。奥が「BAR IGNIS」。約90年前に建てられた洋館を見事にリノベーションして洗練された現代のホテルに昇華させている
写真左手がエントランス。奥が「BAR IGNIS」。約90年前に建てられた洋館を見事にリノベーションして洗練された現代のホテルに昇華させている


●最初に、大場さんご自身の経歴を教えてください。

 

 大学卒業後最初に入った会社は大手銀行でした。でも、違和感を覚え、一年たたずに辞めました。もともと大学でアメフトをかなり本気でやっていて仕事とアメフトを両立しようと思っていました。でも、会社のアメフト部がなくなってしまって……。エネルギーのやり場がなくなりどうしようと考えて、お金を貯めてアメリカに行こうと。

 というのも僕は、大学では国際学部に所属していたのですが、やはり海外で活躍したいという想いがあり、まずは英語を身に着けようと留学に行きました。シアトルに一年半いて、その後約半年間メキシコ中南米を見て回りました。いわゆるバックパッカーですね。「これはライフワークだな」と思いつつ、その後、故郷の山形に帰りました。

 山形では、体を動かしながら仕事がしたいなと思い、小さい頃やっていたスキーのインストラクターを始めまして、気が付いたら結局10年間スキーを仕事にしていました(笑)。最初はインストラクターだったのですが、しばらくしてマネジメントも担うようになり、スキースクールの立ち上げから携わり、マネジメントを一通り経験しました。
 
 ただ、私は飽きっぽいところがあり、一つのところに長逗留できない性分でして、次のステップに行きたいと思ったんです。そして、いったんその仕事やめて、山の次は海だということで、神奈川県の葉山で知り合いが経営する「海の家」で働きました。そこで、マリンスポーツのインストラクターやバーテンダーの仕事も基本的な建築・設備についても学んだりしました。
 
 そこまでは好き勝手やっていたのですが、家族ができたタイミングで、食べていかなきゃということで、縁があって飲食業界に入りました。ただ、なかなかうまくはいかず、次に就職活動して入ったのが現在のグローバルエージェンツだったというわけです。この会社は、経営理念と私の考えが合致していましたし、自分が積んできた経験を振り返って、自分に合いそうだったし、できそうだなと思ったんです。
 

●とても多彩な人生を歩まれているのですね。話は変わりますが、札幌のアンワインドホテルと小樽とでは、ホテルの佇まいはまったく違いますし、コンセプトも違うのですが、そうした違うホテルが、なぜ同じブランド名を冠しているのでしょうか。


 世界観です。小樽が「クラシック&コンテンポラリー」という世界観を表現しているのに対し、札幌は「ロッジ風・山小屋」という世界観を提案しています。共通しているのは、「心のネジを緩める(アンワインド)空間」というコンセプトです。心の緊張を解き放っていただく非日常空間です。お客さまが自分の好きなようにくつろいでもらえる場を提供するという点が共通しています。
 

メゾネットタイプのUNWIND LOFT
メゾネットタイプのUNWIND LOFT
レストラン「THE BALL」。北海道の食材をふんだんに使用し、主にお肉をメインとしたグリル料理を提供している
レストラン「THE BALL」。北海道の食材をふんだんに使用し、主にお肉をメインとしたグリル料理を提供している

●この小樽のホテルのコンセプトである「クラシック&コンテンポラリー」について詳しく教えてください。また、どのような時間を提供したいのでしょうか。


 このアンワインドホテル小樽は、歴史ある情緒的で個性的な建物を生かして、そこに現代的な要素を織り込んだインテリアやサービスを提供しています。
 
 スタッフ同士で“アンワインド”という言葉の意味をどう解釈するかを議論していた時の話を紹介しましょう。自分たちは、「かしこまったラグジュアリーホテル」でもなく、「カジュアルなゲストハウス」でもない、「その間の良いとこ取りをしたいね」といった話をしていたんです。先に開業した札幌のアンワインドホテルからもヒントをもらって、「自然体」という言葉が当てはまると結論付けました。

 ゲスト一人ひとりの自然体はそれぞれ異なるので、「それぞれのゲストが自然体になれるよう接客をしよう」と考えました。接客スタイル・サービス・言葉の選び方・表情のつくり方などを、運営しながら考え、徐々に形にしていきました。そうやっていくうちに、お客さまから良い反応をいただけたり、口コミサイトでも高評価をいただけるようになり、それが自信になっていきました。やってきたことは間違ってなかったんだとみんなで喜び合いつつ。
 
 スタッフには、「自分自身も自然体な接客をしてください」と伝えています。もちろん自然体になるためには、経験や自信をつけることも必要ですが、自然体になることで人間味が出て、それがゲストとの良い関係性・距離感を作れるんじゃないかなと思いますね。

 

●最後に、この空間で「自然体になれる」というのがコンセプトのひとつであるとしたら、それを生み出す具体的なものにはなにがありますか。


 代表的なのは夕刻のフリーワインですね。その時間は、やはりお客さまとスタッフの接点の場だと思っています。小樽近郊のワイナリーで作っているワインを提供しながら、ホテル周辺のレストラン情報や観光スポットの情報を伝えることで、コミュニケーションを図っています。フロントスタッフもしかりです。「いつでも声かけてくださいね」という雰囲気を出しながら接客することを心掛けています。

 また、コロナ禍で中止していますが、チェックインの際に、ウェルカムドリンクを提供しています。椅子にゆったり腰かけていただき、アンワインドしていただきながらチェックインしていただくのが、本来のスタイルです。ですので、それらがお客さまとのコンタクトの場であり、自然体になっていただける瞬間なのではないかと思っています。

 

●私たちも、取材としてお邪魔しましたが、すっかりアンワインドしましたし、このホテルと小樽に魅了されました。この度は、ありがとうございました。
 

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