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インタビュー ザ・リッツ・カールトン東京 アジュール フォーティーファイブ 料理長 宮崎 慎太郎氏

ミシュランスター獲得が至上命令。 ザ・リッツ・カールトン東京の挑戦を中心となって押し進める

【月刊HOTERES 2015年11月号】
2015年11月13日(金)
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誰もやったことがなかったから自分がやるべきだと考えた
 
もともと「自分はホテルのシェフという柄ではない」と考えていたとおっしゃっていましたが、それでもその話を受けた決め手は何だったのでしょうか?
 
 これは少し前置きが長くなる話なのですが、私が仕事を通じて実現していきたいことの一つに、「ホテル業界及び、飲食業界の社会的地位・意義の向上」があります。
 
 そう考えるようになったきっかけは、パリにいたとき、バスの中で年配の女性に「あなたは何の仕事をしているの?」と尋ねられ、「料理人です」と答えると、その方は「素晴らしいお仕事ね!」と称賛してくださり驚いたことにあります。これはフランスどこでも同じで、料理人はじめホテルや飲食業にかかわる人たちの社会的地位が高いのです。ところが日本では、「大変ね、水商売で」という反応が返ってくるのが現実です。それでは当然優秀な人材もやっていきづらくなります。それを何とかしたいと考えているのです。
 
 フランスで覚えたその思いを胸に帰国し、オーグードゥジュール・ヌーヴェルエールで7 年連続してミシェランの1つ星を獲得してきたことで、これからようやく日本における料理人の社会的地位向上につながるきっかけ作りになることができるかなと思っていました

 しかし現実を見れば、いくらフランスの2 つ星、3 つ星のレストランで学んできた料理人で、日本のレストランでシェフとして活躍し有名になった素晴らしい才能を持つ人でも、その後は「そろそろ独立ですね」という話になり、そこからいざ独立となると、資金などさまざまな理由で最終的に10 数席のビストロをオープンするのがゴールという道が現実だったりします。
 
 それはヨーロッパと全く違っていて、ヨーロッパではシェフの奪い合いが常に行なわれており、優秀な人材であればさまざまな活躍の機会があります。ホテルでも、「ミシュランの3 つ星をとる」と目標が決まれば、よそにいる優秀なシェフを引き抜くことだってあります。日本のホテルでもそういうことがあって良いと思うのですが、現実としてそういった流れが出てくる気配はまったく感じられません。
 
 私は、日本のホテルが本気でミシュランの星をとろうと思いさえすれば、それは難しい話ではないと思っています。東京にはこれだけ多くのミシュランの星を持つレストランが存在し、素晴らしい料理人がいるのですから。それなのに、どうしてわざわざ海外から有名シェフやそのブランドを持ってくる必要があるのでしょうか。
 
 そんなもどかしい思いを抱いていたところで、ザ・リッツ・カールトン東京からお話をいただいたわけです。そのときに思ったのが、「これは誰もやっていないことだから、自分がやるべきだ」ということです。これで成功すれば、新しい道をつくることができる。
 
 ずっと考えていた、「ホテル業界及び、飲食業界の社会的地位・意義の向上」の第一歩、一つ目のモデルケースになりたいと考えたのです。
 
 ですから、総支配人に「ミシュランの星がとれるか?」と尋ねられて、「もちろんです」と答えました。気持ちとしては料理長に就任した2014 年の内に星を獲得したかったのですが、ホテルと街場のレストランとの仕事の進め方の違い、そしてミシュラン側の慎重なホテルに対する見方を鑑み、2015 年の目標として切り替えました。
 
直近の目標について教えてください。
 
 まずはアジュール フォーティーファイブ料理長として、今年ミシュランの星の獲得は実現しなくてはなりません。
 
 また、ミシュラン以外でもさまざまな形で結果を出すことで、メディアへの露出も高めていきたいですし、海外のホテルのフェアにも呼ばれるほどの存在になっていきたいですね。そして、そういった活動を通じて、先ほどからお話ししている「ホテル業界及び、飲食業界の社会的地位・意義の向上」を実現できればと考えています。
 
中長期的な目標については、どのように考えていますか?
 
 将来的にアジュール フォーティーファイブをさらに良くしていくためのことも考えています。これは料理やサービスだけでなく、ハードの部分も含めてです。そういったことも踏まえ、現在ほかのレストランを学び、研究していることも多いですね。
 
 そして、できる限り早いタイミングで、ハード面も含めたファインダイニングとしてのしっかりとした土台を構築したいと考えています。そのためにも、「早くリノベーションするだけの価値がある」と評価されるように、私たちスタッフが成長し、ミシュランの星の獲得を含めた、さまざまな結果を出さなくてはならないと考えています。

ザ・リッツ・カールトン東京
アジュール フォーティーファイブ 料理長
宮崎 慎太郎氏
Shintaro Miyazaki
東京誠心調理師専門学校卒業後、パティシエとして洋菓子店に勤務。その後フランス料理に転向、東京都内の著名シェフが経営するフランス料理店で経験を積んだ後に渡仏し、約2 年かけてパリのグランメゾンからプティメゾンまでの修行をした後に帰国。丸の内「オーグードゥジュール・ヌーヴェルエール」料理長として、7 年連続でミシェラン1 つ星を獲得。2014年5 月、ザ・リッツ・カールトン東京「アジュール フォーティファイブ」の料理長に就任。パティシエ出身という経歴ならではの造形力、色彩の豊かさが、食材の温度や歯ざわり、香りにまで意識が向けられた料理に一層の魅力を与え、多くのファンを生み出している。

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