【第二部】
パネルディスカッション
日本のホテル業界進化論! ~グローバルスタンダードへの課題は?~
パネリスト
❑ ホテル日航プリンセス京都 代表取締役社長 篠 信治氏
❑ ザ サイプレス メルキュールホテル名古屋 総支配人 杉本 知枝美氏
❑ セント レジス ホテル 大阪 総支配人 福永 健司氏
ファシリテーター 小社 専務取締役 経営調査室室長 村上 実
良質な睡眠環境の整備は多くの
付加価値をホテルに与える
パネルディスカッションでは、「良質な睡眠環境の整備」という切り口から、ホテルの付加価値向上に関する意見交換が行なわれた。いずれのパネリストのホテルもエアウィーヴ導入施設であり、自然とその導入効果をベースとした話題展開となった。
ホテル日航プリンセス京都では2013年春にエアウィーヴを導入。快適な睡眠環境の整備は、消費者がホテル選びにおいて最も重視する要素の一つであるため、競合他社製品との比較を経てエアウィーヴの導入を決めたという。
「まずはエグゼクティブフロアから導入をスタート。革新的コンセプトの製品だけに、導入後のゲストへのヒアリングを慎重に行なったところ、非常に高い評価が得られた」(篠氏)。
エアウィーヴの展示ブース。多くの参加者が足を止めて説明を受けていた
エグゼクティブフロアに宿泊したある腰痛持ちのゲストが熱心にエアウィーヴの素晴らしさを篠氏に訴えたことが印象に残り、それがきっかけで全客室への導入を決め、14 年7 月に完了したという。
ザ サイプレス メルキュールホテル名古屋では、昨年8 月にエアウィーヴフロアを設定。同ホテルのメーンターゲットのビジネスマンの多くが、ホテル選びに際して重視する項目として「仕事疲れをいやせる環境」を挙げていることから、顧客満足度向上や競合ホテルとの差別化を図るため導入を決めたという。
「まだ導入3 カ月ほどだが、大きな客単価向上効果を実感している。エアウィーヴを敷いた客室料金は、通常プランの料金より割高だが、かなり多くの利用者がこのプランを選択している」(杉本氏)。
また、チェックインカウンターで、フロント係がゲストにエアウィーヴをベッドに敷くオプション(プラス1000 円)を勧める取り組みを始めたところ、8 月だけで110室のアップセールに成功したとのこと。
セント レジス ホテル 大阪はスイートルーム12 室で、ゲストが希望すればエアウィーヴをチョイスできるサービスをスタートさせたという。
「自分の好みや体調に合わせて寝具を選べるシステムとすることで顧客満足度を高めようというのがエアウィーヴ導入の最大のねらい」(福永氏)。
また、予約段階やチェックインの際など、ゲストとスタッフがインタラクティブにかかわれるポイントでの交流のきっかけづくりや、一流アスリートが使用している点や睡眠科学的な根拠の裏付けがあるなど、製品としてのストーリー性が豊かで、ホテルのプロモーションと関連づけやすい点なども導入に踏み切った理由のようだ。
ホテルに不可欠な3 大要素とは
続いて、ファシリテーターの村上が、リージェント・インターナショナル・ホテルズの創始者ロバートH バーンズが1980 年に提唱した、すべてのホテルにおいて最も重視されるべき項目を三つに集約し、「3B(スリービー)」として定義づけたことに言及。「3B」の内訳は「バスルーム(bath)」「ベッド(bed)」「朝食(breakfast)」である。ベッドが象徴する「睡眠」、バスルームが象徴する「快適性」、朝食が象徴する「一日の幕開けにふさわしいエネルギーの充足」の3 要素こそ、人が生理的・本能的に最も重視する普遍的要素という概念だ。
村上はバーンズの定義に照らし合わせても、ベッドの品質は顧客満足度に大きく影響する要素であるとし、近年では睡眠科学に裏付けられた機能性をベッドに求める消費者も増えていることから、ベッド選びがホテルの価値そのものに与える影響もこれまで以上に大きくなると予測した。
その後も、顧客満足度を高めるためのホスピタリティーやサービスの充実に関するテーマについて、日本のホテル格付に関する話題も絡めながら、時間一杯までパネリストの活発な意見交換がなされた。