（左から順に）財団法人宿泊施設活性化機構（JALF）の伊藤泰斗事務局長、小社 の太田進

観客席で批評する立場を通り越して プレーヤーとともにピッチに立つ
 
　サッカーのサポーターはピッチ上の選手たちを応援席から観て批評する。そしてオータパブリケイションズはホテルや レストランのプレーヤーではなく、いわばそのサポーターのような立場にいる。ただし出版物を通じてプレーヤーに向けて観客席から批評するだけでなく、プレーヤーと同様のメンタリティーを持って、ピッチの上で共に闘っていこうとする考え方を軸に置いている。
 
　何か問題点があるのなら、どうすれば 改善することができるのかについて、具 体的な手段をプレーヤーと一緒になって突き詰める。実際にピッチでプレーするチームにより近いところで有効なアドバイスを提供できる存在を目指しているのだ。観客席を通り越して、ピッチに立つサポーターでありたい。ホスピタリティー 業界に対する太田の情熱が、今回の書籍のタイトルとして冠されることになったのである。
 
 　オータパブリケイションズの創業者であり、父親でもある太田土之助についても、印象的なエピソードがいくつか紹介された。
 
「先代は命がけで書いているのではないかと感じるほど、『FROM THE PUBLISHER』にこだわりを持って取り組んでいました。さまざまな現場に自ら足を運び、実際の宿泊や食事の中で感じたことをメッセージに込めて発信することを常としていました」
 
 　やがて先代と交互にページを担当することになった太田は「自分に務まるのだろうか」という不安を抱きながらも、少しずつ学びながら執筆を続けてきた。オリジナルのアイデアとして書かれた文章 を最終形にまとめてくれた歴代の編集者にも感謝の意を表した後、太田は「読者の方々から同意や反論などさまざまなオピニオンを送っていただくことを励み にしながら、今日まで書き続けることができました」と述べた。
 
ソリューションカンパニーの役割を ホスピタリティー業界で果たしたい
 
　第二部では、財団法人宿泊施設活性 化機構（JALF）の事務局長、伊藤泰斗 氏を迎えての対談が行なわれた。客席 の参加者から寄せられた質問に太田が 答えるスタイルをベースに、トークが進 められた。
 
インバウンドの新たなターゲットについては、地球儀上の縦のラインにある時 差のない地域に高いポテンシャルがあるとし、日本はアジア圏の人々を確実に獲得することが重要とした。
 
 　グローバルカンパニーとして日本のホテルが世界と競合するために求められる要素については、海外でホテルマネージメントを体験したことのある人材の能力を結集し、豊かな発想で取り組むこととした。
 
 　ホテルの仕事とAIの関係については、人間とロボットが協業する世界はもはや 避けられないとした上で、スペシャルオ ケージョンにおいて人間のサービスを選んでもらえる貴重な存在価値を示せるよう、高いレベルのサービススキルを身につける必要性が高まると予測した。
 
　これから可能性のある新しいホテルの形については、例えば「スイーツホテル」「スポーツホテル」など、特定の人々にターゲットを絞り込んだコンセプトによって、明確なメッセージを発信するスタイルが挙げられると提言した。
 
 　そして、オータパブリケイションズをどのような会社にしていきたいかという質 問に対しては、「素晴らしい人や会社の存在を皆さまにご紹介することで、問題 解決につなげていける存在として成長していきたいと考えています」とした。本当の意味でのソリューションカンパニーとして、ホスピタリティー業界の役に立てる企業で在り続けるために、オータパブリケイションズは常に自分磨きを意識しながら、『ピッチに立つサポーター』 としての取り組みを強化していく。

（左から順に）小社の太田進、一般財団法人日本総合研究所の野田一夫会長、一 般社団法人日本旅行業協会の矢嶋敏朗広報室長、JALFの伊藤泰斗事務局長