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After & Withコロナのホテル市場を予測してみた ①

After & Withコロナのホテル市場を予測してみた ① グレーゾーンを制し、付加価値を実現できる者が選ばれる

2020年05月31日(日)
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 HOTERESスタッフが新型コロナウィルス関連のニュースで特に業界に関係しそうなニュースを毎日紹介するコーナーを継続してきましたが、今回はスタッフ岩本大輝が「After & Withコロナのホテル市場を予測してみた」と題し、当面の国内市場、さらにその先のインバウンド市場と二回に分けて、マーケット見通しのポイント、その中でのホテルオペレーションについてレポートをします。

 いよいよ緊急事態宣言も解除され、経済活動が徐々にではあるが再開されています。
 第二波の不安もある中ではありますが、今年の当面のホテルマーケットについて、ポジティブな面、ネガティブな面を筆者なりに情報を収集し、考察をしてみました。また、現場の皆さまに幅広くお聞きした情報も踏まえ、私なりのAfter & Withコロナのオペレーションに関しても書いてみました。今回は幅広い方にお読みいただけたらという思いから、少し基本的なところも噛み砕いて、一方でできる限り簡潔に書いています。
※第一回となる今回は、前提としてインバウンドの急速な戻りは期待をできないと考えており、今回は国内市場のみで考えています。
 

ポジティブな点 ① ②
① 日本の旅行市場は内需が多い⇒ある程度のマーケットの戻りは早い
② 日本人の海外旅行需要が国内旅行に移る可能性が高い

 下表1は、国内旅行消費額の図ではなく、国内旅行消費額の統計に「日本人の海外旅行消費額(海外分)」を加えたものです。


表1:国内旅行消費額の統計に「日本人の海外旅行消費額(海外分)」を加えた円グラフ
表1:国内旅行消費額の統計に「日本人の海外旅行消費額(海外分)」を加えた円グラフ

 
 まず、「① 日本の旅行市場は内需が多い⇒ある程度のマーケットの戻りは早い」の通り、過去数年インバウンドばかりが注目されている感のあった日本ですが、現状は訪日外国人(インバウンド)の国内旅行消費額への貢献は4.8兆円と、日本人の宿泊を伴う旅行17.2兆円と比較すると27.9%でしかありません。つまり、7割強が日本人による需要であり、世界中で海外旅行の需要の戻りが早期には戻ってこないであろうことを考えると、例えばシンガポールやタイなど観光に力を入れる国が需要の多くを外国人旅行者に頼っていたことと比較すると、マーケットの戻りが早いであろうことが予想されます。これは、過去、リーマンショック後や震災後にも見られた現象でした。
 
 もう一つ注目したいのが、「② 日本人の海外旅行需要が国内旅行に移る可能性が高い」です。日本人の海外旅行者数は2015年以降右肩上がりで増加しており、昨年(2019年)は2008万人と過去最高の海外旅行者数を達成しました。
 今後、海外旅行が解禁されたとしても、世界各国でコロナが収束していない現状で日本人がすぐに海外旅行に行くかというと、多くはないと私は見ています。そうした需要が、国内の旅行市場に戻ってくるのではないか、と考えています。

 では、そのビジネスポテンシャルはどの程度あるのか。ここは私の推測値ですが、2019年には日本人が海外旅行にかかわる消費額は海外旅行のための国内消費分(1.2兆円)を含めて4.9兆円(海外消費分は3.7兆円)です。[表1中の※1部分]
 
この根拠ですが、2017年にJTB調査による海外旅行の平均旅行額が24.5万円でした。そこに単純に昨年の海外旅行者数を掛けたものです。ここは議論の余地もあるかもしれませんが、同じく同社グループによる2018年(海外旅行者数は1890万人)の海外旅行消費額推計が4兆5644億円(下表2)だったことを踏まえると極端な誤差はないのではと考えています。

表2:2018年12月20日に発表したプレスリリース「2019 年の旅行動向見通し」より
表2:2018年12月20日に発表したプレスリリース「2019 年の旅行動向見通し」より


 こうした需要が、今後展開される「Go Toキャンペーン事業」の後押しも受け、国内旅行市場に貢献をしてくれるのではと(これは期待も含めてではありますが)見ています。
 まだ新型コロナウィルスの感染拡大が収束をしたわけではありませんし、国内旅行に関してもまだ精神的含めハードルの高い状況ですので楽観はできませんが、日本の旅行市場はこの二つのポジティブな要素を持っていると考えています。


ネガティブな点 ① ② ③
① 多くの観光地はもともと供給過剰であった
② 単価は全般に減少傾向になると予測
③ 学校の夏休み短縮は旅行市場にも影響する 

 では、続いてネガティブな側面です。国内旅行の動き出しの予測、第二波の影響による旅行市場への影響などは定性的な点でも理由をもってお伝えできませんので、ここでは触れないこととします。
 
 最初は「① 多くの観光地はもともと供給過剰であった」です。これはご存知の方も多いかと思います。すでにコロナ以前から大阪や京都が有名ですが、増えすぎたホテル開発を理由に多くのホテルのパフォーマンスが低下していました。そして、それを受けてそれ以外の都市へと地方都市にもホテル開発が広がっていました。ですから、多少需要が戻ろうとも、多くの観光地ではそうした需要を場所によって程度の差こそあれ増えすぎたホテル同士が争うこととなります。これは次の②にもつながります。
 
 そして「② 単価は全般に減少傾向になると予測」ですが、①の通り、多くの観光地でホテルが開発され、客室が供給されてきました。そうしたホテルが前述の需要を争うことになるわけですが、日本のホテルはほとんどが単価よりも稼働率重視。いかに周りのホテルよりも値段を下げて自ホテルを埋めるか、という傾向があります。そこで起こるのは、値下げ合戦です。実際、どれだけ値下げをしてもそこまでの需要が見込めない現時点ですら東京、京都、大阪で3000円〜5000円で個室のホテルが宿泊できます。

 最近は一部のホテルでそれを改善しようとする動きもあるようですが、そうなると、需要が落ち込んだ市場では厳しい戦いとなります。RevPARをある程度確保するために、今までは単価、そしてブランドの維持を大切にしていた某ホテルの幹部でさえ、「1万5000円程度で売っていたホテルを、1万円を切る値段で売るところまでチャレンジする必要があるかもしれない」と言っていました。結局、他が安売りをしてしまうからです。
 
 また、私の知る範囲でこれは都市部となりますが、宿泊主体型でもフルサービス型でも、そのセグメント内において単価が高かったホテルは外国人比率が高かった傾向があります。外国人レジャー客の方がお金を払える傾向があったのです。当面インバウンドが期待できない中で、単価をある程度下げるという動きは出てくるのではないかと見ています。特に、2〜3万円台の価格レンジで勝負をしていた宿泊主体型ホテルにとってはかなり厳しいマーケットとなると見ています。
 
 そして、今まで6、7万円以上の単価を実現できていたラグジュアリーホテルにおいても、チャネルを絞る、クローズドマーケット(インターネット上では見えないチャネル)で販売するなどの策はあるとしても、一部のホテルではある程度の量(稼働率)を取りに行くホテルが出てくるのではないかと見ています。ここはある識者の方と意見を違えた部分ではありました。現状そのような動きは無いようですが、どこかのホテルがその引き金を引けば他ホテルも追随せざるを得ないという状況になるかもしれません(実際、3月に一時的にそうした状況が発生もしています)。
 
 そして、「③ 学校の夏休み短縮は旅行市場にも影響する」は皆さまご想像いただけると思います。これにより家族旅行の期間が減ってしまいます。当然夏休み期間の旅行市場は縮小すると思われます。
 

「それで、どうしたらいいのよ?」
ルールのないグレーゾーンでの戦いの始まり

 
「それで、どうしたらいいのよ?」という声が聞こえてきそうです。私はポイントは2つあると考えています。
 
① オペレーション上での(できる限りの)コロナ対策とそれの告知(安心・安全)
② オペレーションはグレーゾーンでの戦い 

 まず大前提としてお伝えしたいのは、最近、「国内マーケットだ!」「さらには近隣マーケットだ!」と言われたりしますが、いずれにしても、「あのホテルに泊まってみたいな」と思わせられないホテルというのはコロナ前でもコロナ後でも選ばれないのです。その本質は、以前から変わっていません。そこを商品としての魅力度の弱いホテルが、「これからはローカルだ!」と小手先のテクニックでなんとかしようというのは、この十分に多いとは言えない需要に対する供給過剰の市場においては難しいと私は考えています。
 その上で以前と変わった点は、今回の新型コロナウィルスの件で、人々がこれまでよりはるかに「安心・安全」の意識が高まっているということです。
 
 では、人との接点を極力減らし、ホテルもレストランもソーシャルディスタンスを守るなどすべきか? ここが事業者の難しい判断のしどころです。それでは、ホテルの本来の強みである付加価値を実現しづらくなりますし、また、賃料支払いのある所は収益が下がればその賃料が大きくのしかかることになるからです。
 
 実際本格的な営業を再開した街場はどうなのだろう? と、私は緊急事態宣言解除後、オフィスのある銀座を中心に日本橋、新橋など街を歩き回り、継続して飲食店を見ていますが、コロナ対策をしているところ、全然していないところ、まちまちです。立ち食いそば屋でも、ゲスト同士が隣り合ってそばをすすっています。では、対策をしているところが流行っているか、そうではありません。そんなことを気にせずとももともと人気のあった店は早速お客さんが戻って繁盛しています。

 これが“是”か“非”か。正論からすれば“非”となるでしょう。しかし、オーナーからすれば家賃支払いなどを考えればそうせざるを得ないのかもしれない。また、「それでもいい」とやってくる人がいるのも事実。これまで以上に、ゲストの価値観が多様化しています。
 
 ただ、それをホテルが同じようにできるのか? そうはいきません、特に有名ホテルは(そうでないところもあるようですが)。そうでないと、「あの有名ホテルはこんなことをやっている」と、SNSやメディアに書かれ、最悪、炎上リスクがあるからです。
 
 そのような環境の中で、何ができるのか? まず第一に、自社の新型コロナウィルス対策を決定し、「このような対策をしています」と明確に伝えることです。チェーンであればチェーン全体の新型コロナウィルス対策ポリシーを明確に打ち出すことが必要でしょう。それが、ゲストの安心感にも繋がります。これを明示できていないと、何かあった時にリスクとなるとも言えます。
 
 難しいのは、どのような新型コロナウィルス対策とするかです。さまざまな機関が方針を定めていますが、これに従ってガチガチの守りのオペレーションをしてしまって良いのか? 非常に難しい所ですが、私はそれでは難しいと考えます。先にも挙げましたが、それではホテルが提供したい付加価値を提供することは難しいと考えるからです。
 
 それらを踏まえ、今後、ホテル、レストランのオペレーションはグレーゾーンでの戦いを強いられることとなるでしょう。特に宴会、レストランなど料飲部門はそれがより重要になると思われます。「このようなポリシーで対策をしています」と明示し、ゲストの要望などに応じて “多少の” 柔軟性を持たせる。スタッフの力量も大切になると思います。
 
 安心・安全をうたいつつ、ゲストに付加価値をしっかりと提供し、高評価を積み重ねていく。グレーゾーンでの戦いの始まりです。少なくとも新型コロナウィルス問題が終息するまでは、これまで以上にマネジメントの決断力と、スタッフの力量が問われることになると見ています。(文 本誌・岩本 大輝)

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