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特別企画 一般社団法人全日本ホテル連盟 近畿支部

インバウンドをメインターゲットとする大阪・京都の業績回復が顕著、連盟では業界の人材を共に育てようと呼びかけ

2024年06月07日(金)
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 1200ホテル以上のホテルが加盟する全国規模の宿泊団体である一般社団法人全日本ホテル連盟(ANHA)。全国を8ブロックに分けて支部を設けており、近畿支部には約250のホテルが加盟している。近畿支部 支部長の北原 信輔氏に取り組む施策や目標について話を聞いた。
 



一般社団法人全日本ホテル連盟
近畿支部 支部長
北原 信輔氏
(株式会社更紗ホテルズ 取締役 統括本部長)

会員支援、人材育成、外部連携の3大活動方針を推進

■全日本ホテル連盟近畿支部の加盟ホテル数を教えてください。
 
 全日本ホテル連盟近畿支部の正会員は47ホテル、準会員が約200ホテルとなっています。一企業で複数ホテルを展開している場合、1店舗目が正会員となり、2店舗以降は準会員という立ち位置で棲み分けを行っております。加えて、全国の賛助会員としてパートナー企業約70社が加盟しております。
 
■昨年の近畿支部ではどのような活動を行なわれたのでしょうか。
 
 近畿支部には会員支援、業界全体の人材育成、外部連携の3大活動方針があり、これらに沿った活動を行っております。
 その中でも昨年はとくに外部連携を通じた若手人材の育成事業に注力しました。(公財)大阪観光局を中心に地域DMO、そして広域DMOの(一財)関西観光本部と定期的な情報交換を行い、1年後に迫っている大阪・関西万博に向けた情報などを会員ホテルに提供してきました。また、教育機関も加えて産学官連携の若手人材の育成事業も3年続けて実施しました。具体的には2つの大学が共催し、当連盟とDMOが後援および協力するという形式です。学生たちが各チームにわかれて「社会貢献をしながら近畿地方を巡るツアー」を構想し、発表を行うイベントです。それにより、地域の隠れた魅力や観光資源、新たな観光スタイルを創造しようという取り組みです。私たちが講義や情報提供をし、発表会にも参加し、交流も深めることができました。
 
■今年、外部連携として予定していることはありますか。
 
 教育機関と連携した人材育成事業は、定例化していますので今後も継続していきます。さらに関西観光本部と連携するなどステークホルダーを広げていく考えです。加えて奈良、滋賀、和歌山などの会員ホテルも巻き込むよう呼びかけています。また、大阪・関西万博に向けての情報交換も密に取り組んでまいります。
 そのほか当連盟のミッションの一つである観光立国実現に向け、本部事業として動いているインバウンド委員会等と連携を深め、ホテル事業者ができることを考えながら議論を深めたいと思っています。
 
■近畿エリアでは昨今、インバウンド需要に変化があったと感じられていますか。
 
 ホテルマーケットの動向も、お客さまの流れも1年前とは大きく変わってきています。このエリアの業績は中国からのインバウンドの有無が大きく影響を受けますが、最近はJNTO等の発表の数字以上に、肌感覚では中国の方たちが増えていると感じています。
 また、東アジアだけではなく、東南アジアのタイ、ベトナム、インドネシア、そしてシンガポールの増加率が顕著です。アメリカからも安定的にお越しいただいています。

 

客室稼働率は2019年水準に回復

■次に近畿支部に加盟するホテルの営業状況について教えてください。
 
 近畿支部では平均稼働率は2019年の水準に回復していると思います。ただし、首都圏と比べてADRの上昇は緩やかです。その中でもインバウンドをメインターゲットとする大阪市、京都市内のホテルが好調だときいています。国内の出張ニーズの取り込みは、中小ホテルの皆さまもユニークなサービスや強みをいかした戦略をお持ちのホテルは存在感を示されています。
 
■昨年は人件費、食材費、水道光熱費などさまざまなコスト増が課題でしたが、マーケットの回復でそうした負担感は軽減されましたか。
 
 そうですね。外的要因ですが、それに向けてきちんと努力をされたホテルはしっかりとコストを吸収されるほどADRの上昇や収支体質の改善をされていると思います。経営力が試されていると感じています。
 
■優劣の差には何が影響しているのでしょうか。
 
 コロナ禍でもしっかり自社のターゲットや強みを活かして営業されていたホテルが優位に立っています。インバウンドセールスはもちろん、あまり長く休業せずにリピーターづくりに励んでいたところ、組織体制を整えて、人材を大切にされているところが優位性を確立している印象です。一方で、新規参入のホテルはご苦労されているところが多いように見受けます。
 
■今年は稼働の調子がよい中、ADRも含めてコロナ前の業績水準に戻りきるという見立てですか。
 
 それを超えるぐらい戻せると思います。大阪でもADRは2000円、カテゴリーによっては4000〜5000円上がっています。今年3月はシティホテルで2万〜2万6000円、ビジネスホテルの三ツ星、四ツ星で1万2000円程でした。
 いずれにせよ大阪エリアは中国インバウンドのインパクトが大きいので、OTAや旅行会社、日本のランドオペレーターなどと協業してしっかりと集客していく方針です。ただし、カントリーリスクもあるので連盟で情報共有しながら適切にホテル業界が勝ち進められるような営業活動を行っていきたいと考えています。

 

低価格競争から脱却し適正料金で戦うべき

■現在、課題と感じられていることはありますか。
 
 需要がやや落ち込んだ今年の1月は稼働をとるために4000円台、5000円台でたくさんのホテルがOTA上で販売されていました。お客さまがそれほど来てないわけではないのに価格競争を行い、スタッフが疲弊し悪循環の側面をみてきました。経営者やレベニューマネージャーは自信を持って最低料金を決めていただき、業界全体として胸を張って単価を上げていき、それ相応のサービス品質を維持向上させるための人材育成にもっと投資していく業界にしたいと思います。人手不足を嘆く前に、今いる人材に適切かつ積極的な投資と教育をしていきたいと思います。
 
■一方、大都市圏でビジネスの出張規定と実際の宿泊単価が合わなくなってきて泊まることができないということも話題になっていますが。
 
 一般企業の出張規定を詳しく存じませんが、そもそも規定自体意味があるのかなと疑問視しています。国等と連携を取り、エリアやカテゴリーの適正価格を経済界に示していただくのも有意義かもしれませんね。
 
■2025年は大阪万博が開催予定ですが、それを見越した予約は動き始めているのですか。いま時点での大阪万博への期待値もお聞かせください。
 
 ホテルの予約はまだ少なく、キッチン付きで半年〜1年ぐらい契約できるレジデンスを紹介してほしいなどの相談が非常に多いです。また、休館している学校の寮を借りて作業員の宿泊拠点として活用したいという話も聞いています。
 ホテルに関してオフィシャルパートナーの旅行代理店がある程度仕入れているところはあるようですが、なかなか見えにくいですね。これまでの万博の実績を踏まえて、一番良い想定の場合は3倍ぐらいのADRを予測していますが、それぞれのカテゴリーのホテル間で調整する必要もあるでしょう。
 また、万博のトップシーズンには需要であふれると思うので、それを民泊などに高額で吸収さないようにしたいという話は出ています。これは民泊を敵視していのではなく、ホテル業界は雇用を守らなければなりませんし、多くの関連業者・ステークホルダーもいらっしゃいます。こうした事業者責任を踏まえて分配できるよう音頭をとるのが業界団体としてのミッションの一つだと考えています。

 

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