オーストラリアをベースに本国以外にも米国、シンガポール及び日本においてホスピタリティーを中心とした投資に関わる業務を幅広くサポートするソルター・ブラザーズ。日本ではANA インターコンチネンタル別府リゾート&スパのアセットマネジメントも手掛けている。昨年は日本オフィスも開設し、日本での事業拡大を狙う同社マネージング・ディレクターのポール・ソルター氏に同社の強みや今後の展望について聞いた。
聞き手:本誌 太田進、岩本大輝 文:岩本大輝 撮影:浅沼ノア
ソルター・ブラザーズ | マネージング・ディレクター ポール・ソルター氏
投資から運営まで幅広い知見
─まずはソルター・ブラザーズについて教えて下さい。
私たちは世界で40 軒のホテルにアセットマネージャーとして関わり、その資産額は40 億ドルを超えます。多様な専門性を持ったチームが不動産及び株式に関する深い専門知識と幅広いネットワークを有しており、機関投資家や富裕層投資家にテーラーメイドの投資ソリューションを提供しています。そのため、クライアントは機関投資家や金融機関など幅広く、それぞれのお客さまに合った投資戦略を策定しサポートしています。
また、ソルター・ブラザーズはグループ会社としてソルター・ブラザーズ・ホスピタリティーというラグジュアリーホテルの運営会社を有しており、20 軒のホテルやリトリート、ロッジを運営するほか、レストランやバーなども運営をしており、そうした経験から生まれる知見がアセットマネジメントなど他の業務でも生かされています。
─同業他社でもさまざまな企業があるかと思いますが、ソルター・ブラザーズの強みはどこにあるとお考えでしょうか?
一つ目は、我々のホテルアセットマネジメント部門です。外資系大手ホテルオペレーターでの豊富な経験を持つプロフェッショナルが多数在籍しております。ホスピタリティーマネージャーとしてホテル運営経験のある人力を保有することが弊社の戦略でもあり、同業他社に比べて競争力のある強みです。
二つ目は、先に挙げた一点目の延長線で、ホテルアセットマネジメントに特化した能力及びノウハウを有するホスピタリティーファンドマネージャーがアジアでは限られていることです。
現在、最も注目を浴びている日本の不動産市場を含め、アジアにはますます海外資本が流入しています。不動産市場の中でもホスピタリティーセクターでの競争は一段と激しくなるでしょう。我々はオペレーションの専門性を活用しつつ資産に付加価値を創出することでアルファを生み出し、このアクティブかつ競争力を求められるマーケットで弊社の強みを生かそうと考えています。
そうした実績が評価され、この度も日本において昨年8月に東京センチュリー様の完全子会社であるTCホテルズ&リゾーツ様とアセットマネジメント契約を締結させていただきました。さらに今年3月には、東京センチュリー様とOUE Limitedによる共同開発プロジェクトであるHotel Indigo Changi Airportにおいて、東京センチュリー様のインベストメントマネージャーとして参画させていただいております。それだけにとどまらず、今後東京センチュリー様を含め、機関投資家や大手企業とのグローバルな投資戦略を協議しているところです。
─今後の御社の展望について教えて下さい。
私たちは、日本およびアジア地域のホスピタリティーマーケットのポテンシャルは大きいと考えており、アジア圏ではこれまでシンガポールにオフィスがありましたが、昨年10 月に日本オフィスを設立し、投資及びアセットマネジメントチームのメンバーを配置しました。これによって私たちは日本及びアジアでのビジネスの拡大を加速していきたいと考えています。
先ほどもお話をさせていただきましたように、私たちは日本のマーケットには大きなポテンシャルがあると考えています。新規開業はもちろん、今後はインターナショナルブランドとの提携による既存ホテルのリブランドも増えていくでしょう。
その際に私たちはこれまでのグローバルな知見を活かし、開発のサポートやリブランドによる改装、そしてブランドのリポジショニングなどのサポートにおいて実績を増やしていきたいと考えています。
我々の日本でのビジョンは次の三つです。
1.国内の金融機関や大手不動産企業との関係深化とアセットポートフォリオの拡大:
東京センチュリーなどの国内主要企業との関係を深めつつ、国際的なホテルオペレーターやブランドとのネットワークと関係性を活かし、アセットマネジメントの専門性を提供
していきます。
2.バリューアッド領域での長期的な機会の追求:
特に日本全国のバジェットホテルやミッドスケールホテルにおいて、国際ブランドとの提携による価値向上を図り、積極的なアセットマネジメントを通じてリターン向上を目指します。
3.リトリート・旅館の取得及びアセットマネジメント:
オーストラリアで17 軒のリトリートアセットを戦略的に取得した成功経験を基に、日本でもリトリートや旅館の取得とアセットマネジメントを目指しています。これらのアセットタイプは施設の持つ特徴に合った戦略が求められますが、大きな可能性があると考え
ています。

大きな可能性を秘めた日本のホスピタリティ市場
─オーストラリア、米国、シンガポールで多数のホテルのアセットマネジメントを手掛けられ、現在日本ではANA インターコンチネンタル別府リゾート&スパのアセットマネジメントも手掛けられているわけですが、ホスピタリティーの知見が深い御社からは日本のホスピタリティーマーケットのポテンシャルをどのように見ていますか?
非常に大きいと考えています。日本は昨年訪日外国人旅行者数が過去最高の3686 万9 千人となりましたが、さらに増えていくと思われます。
そして、日本政府も政策として観光立国を掲げ2030 年には6 千万人を目標に掲げそれを後押しています。また、これらを受けて日本に投資をしたいという海外の投資家も増えて
います。
海外からの旅行者が増え続ける日本においてインターナショナルブランドと提携をする新規ホテルの需要は増えていくでしょうし、既存のホテルにおいても我々の知見、ノウハウ、グローバルなネットワークを生かしたバリューアッドのポテンシャルも大いにあると見ています。
また、私たちがANA インターコンチネンタル別府リゾート&スパのアセットマネジメントを手掛けているように、東京や大阪などの主要都市だけでなく第2都市、第3都市のポテンシャルも十分あると見ており、そうした領域において私たちのこれまでの経験を活かして投資家をサポートできればと考えております。
ソルター・ブラザーズ
https://salterbrothers.com.au/