愛知県を中心に国内22施設で約3000名以上の透析患者の透析医療に取り組んできた偕行会グループが、2025年8月より、名古屋東急ホテルおよびなだ万が連携し、透析治療を受けながらも「旅を楽しみたい」というインバウンドの需要に応えて、新たに「旅行透析プラン」を提供開始した。長年にわたり高度な透析医療を提供してきた確かな治療体制、ラグジュアリーな宿泊と懐石料理のコラボレーションで、透析患者が安心して楽しめる旅を実現した。今回、偕行会グループ 透析事業本部 副本部長の熊澤ひとみ氏にお話を伺った。
透析患者の安心安全の旅を〈高級懐石×医療ケア×多言語対応〉
医療法人偕行会グループは、東海・関東エリアに多数の透析施設を展開。今回のプランでは、透析治療・宿泊・懐石料理の3つをパッケージ化し、「治療を続けながら旅を楽しむ」というスタイルを実現した。ホテル業界においても、インバウンド客の増加や健康志向の高まりを背景に、透析治療にも配慮した宿泊プランが注目されつつある。
料理面では、なだ万の懐石料理がベースとなる。食塩を約40%カットしながらも満足感ある味わいを、管理栄養士が監修。数カ月にわたり健康と安心を両立できるメニューをなだ万と管理栄養士が開発した。塩分を抑えながらも日本料理を堪能できるクオリティを実現。透析治療は、午前開始・午後開始の2パターンの時間帯を用意し、旅行スケジュールや個人・団体客にも柔軟に対応。各種必要書類の準備支援や、5か国語の通訳(英語・中国語・インドネシア語・ポルトガル語・スペイン語)も含まれる。料金設定は、1名150,000円から。宿泊・料理・治療を含むパッケージ価格として提示されている。


名古屋東急ホテルでの受け入れ体制
名古屋東急ホテルはこのプランで宿泊拠点となり、偕行会グループの透析施設との綿密な連携により、ホテルからクリニックまでの移動タイミングもスムーズに調整可能。団体利用でも個別の治療開始時間に応じた対応が可能という。また、ホテル側も「ラグジュアリーな懐石料理」と「安全な医療サポート」という付加価値を得ることで、透析患者やその家族、さらには海外からの旅行者の関心を集めている。
海外透析患者・日本食ニーズへの対応
海外の透析患者は旅行を検討する際、「安心して治療を受けられるか」、「食事制限に配慮してもらえるか」というハードルを抱えている。偕行会グループでは、今回のプランにより、多言語対応の通訳や書類準備支援を通じて、そうした懸念の払しょくに努めている。
さらに、富裕層を中心に「日本食=健康・ラグジュアリーな体験」としての評価が高まっており、透析患者でも「旅先でおいしく、身体に配慮された料理を楽しみたい」というニーズが顕在化している。


東海エリアから全国展開へ
今回のスタート地点は東海エリアだが、偕行会グループは他エリア(関西・首都圏)ホテルとの連携も視野に入れており、医療×宿泊×食の“旅の新スタイル”を広げていく意向だ。ホテル側では、キッチンの人手不足や食事制限対応の難しさを背景に、こうしたプランは業務効率改善と付加価値提供の両面でメリットがあると見られている。
旅と治療を両立する“新しい選択肢”
透析を受ける患者にとって旅は、まず医療機関ありきとなり大きなハードルが伴う。だが、今回の連携は「治療を止めずに、安心して宿泊・食事・観光を楽しむ」という新たな選択肢を提示している。今後、同様のモデルが他ホテル・他医療機関にも展開されれば、旅の幅は大きく広がる可能性がある。
偕行会グループ 透析事業本部 副本部長
熊澤 ひとみ氏
1992年に看護専門学校を卒業し、医療法人偕行会 名古屋共立病院に入職。30年以上透析看護に従事し、2010年に透析看護認定看護師を取得。2022年には透析事業本部 副本部長に就任。認定看護師同士の会合や学会、研究会に精力的に参加し、長年の経験とともに最新の知見を現場に還元。外国人旅行透析の受け入れも積極的に推進している。




