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毛利愼の外食エンターテインメントVol.159

「個室会席 北大路 赤坂茶寮」リニューアル──創業100周年に向けて次世代へつなぐ和食文化

2025年10月31日(金)
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冬のコースから「【一人ひと鍋】黒毛和牛すき焼きと河豚会席」。同社が力を入れる和牛と河豚の粋を存分に味わえる内容で、お造りの内容に応じて3種類のコースが用意されており、好みやシーンに合わせて選ぶことができる
冬のコースから「【一人ひと鍋】黒毛和牛すき焼きと河豚会席」。同社が力を入れる和牛と河豚の粋を存分に味わえる内容で、お造りの内容に応じて3種類のコースが用意されており、好みやシーンに合わせて選ぶことができる

  日本料理「個室会席 北大路」の「赤坂茶寮」が、2025年10月、半年の改装期間を経てリニューアルオープンを迎えた。同ブランドは、創業1927年、再来年に100周年を迎える大東企業㈱が展開するシグネチャーブランドであり、全室個室の和の空間と四季折々の本格会席で、接待や慶事など幅広い場面で支持を集めてきた。

 時代やライフスタイルの変化、さらにコロナ禍を経て、料亭などの格式ある会食の場が少なくなる中で、「北大路」は大切な会食や接待の場を支える存在として高い評価を得ている。特に赤坂という土地柄、同店のような存在は必然である。上質な料理に加え、個室ごとに担当がつく和装でのフルサービスや、良心的な価格といった細やかなもてなしが、多くの支持を集めてきた。休業期間中は系列店を利用していたお客さまも多く、今回のリニューアルオープンを心待ちにしていたという。予約状況も含め、すでに満席となる日も少なくないことからも、その期待の大きさがうかがえる。

 同社では、接待や会食といった場にふさわしい店であるために、常に清潔かつ美観を維持することが大切であるとの理念を掲げている。その一環として、全店舗において定期的なリニューアルを実施することを旨としているという。開業から17年を迎える同店でもこれまでに一度リニューアルを行っているが、今回はその規模を大きく上回るものとなった。特に岡本料理長の強いこだわりにより、キッチンをオープンにしたことで、店内の印象も大きく様変わりした。そこでなぜオープンキッチンにこだわったのか理由を伺ったところ、「板前は本来、お客さまの前で料理を作り、召し上がっていただくものだと考えています。しかし、当店は全室個室のため、これまで調理場をバックヤードに設えてきました。加えて、弊社が力を入れている板前の育成事業を進めていく上で、たとえ接点は少なくとも、お客さまの前で料理をする経験が板前としての成長に必要ではないかと考えました。また、お客さまにも彼らの成長を見守っていただければという思いもあり、今回のリニューアルで、このようなオープンキッチンへと様相を変えさせていただきました」

と返ってきた。
 

満席時には220名のお客さまを迎え入れるオープンキッチン。規模の大きさに加え、エントランスから個室への導線越しに調理の光景を望むことができ、ライブ感あふれる空間となっている
満席時には220名のお客さまを迎え入れるオープンキッチン。規模の大きさに加え、エントランスから個室への導線越しに調理の光景を望むことができ、ライブ感あふれる空間となっている

 同店では今回のリニューアルに伴い、これまで休業日としていた日曜・祝日も営業日とした。それにより、近隣の日枝神社で行われる家族行事など、慶事の会食需要にも応えていきたい考えだ。また、これまでの掘りごたつ席の半分をテーブル席に変更した。従来は接待利用が中心であったが、今後はインバウンド層への訴求も視野に入れ、さらなる展開を図っていくという。また、河豚や和牛のブランディングにも一層注力し、同店ならではの味わいと信頼を高めるとともに、板前が腕を振るう場を増やし、和食文化の継承にも力を注いでいく考えだ。

 100年企業として新たなステージを迎える同社がどのように次世代へとバトンをつないでいくのか?今後もその動向に注目していきたい。

「個室会席 北大路 赤坂茶寮」
https://kitaohji.co.jp/akasakasaryo

‟黒毛和牛すき焼き陶板“。同社が展開する中には焼肉業態などもあり、上質な黒毛和牛の仕入れを全社的にしていることで、リーズナブルに提供している。ちなみに同メニューは一人鍋で提供されており、昨今、お客さまが‟鍋”に対して抱く価値観の変化にも対応している
‟黒毛和牛すき焼き陶板“。同社が展開する中には焼肉業態などもあり、上質な黒毛和牛の仕入れを全社的にしていることで、リーズナブルに提供している。ちなみに同メニューは一人鍋で提供されており、昨今、お客さまが‟鍋”に対して抱く価値観の変化にも対応している
‟河豚刺し“。同店では、河豚ブランディングの強化を今後のテーマと位置付け、岡本料理長の指導のもと、板前たちのふぐ調理師免許取得も推進していく。なお、昨今はインバウンド市場でもふぐの認知が広がり、人気が高まっているという
‟河豚刺し“。同店では、河豚ブランディングの強化を今後のテーマと位置付け、岡本料理長の指導のもと、板前たちのふぐ調理師免許取得も推進していく。なお、昨今はインバウンド市場でもふぐの認知が広がり、人気が高まっているという
お重にミニ枡を遊彩箱のように見立てた演出で提供される前菜。“くわい豆腐”や“穴子寿司錦糸巻き”、“黒豆カステラ”に“カジキマグロ明太焼き”など、職人の技が光る美味を少しずつ。贅を凝らした一品一品に、季節の華やぎが活かされている
お重にミニ枡を遊彩箱のように見立てた演出で提供される前菜。“くわい豆腐”や“穴子寿司錦糸巻き”、“黒豆カステラ”に“カジキマグロ明太焼き”など、職人の技が光る美味を少しずつ。贅を凝らした一品一品に、季節の華やぎが活かされている
同じく冬のコースから‟河豚唐揚げ“。筆者もこれまで少なからず河豚の唐揚げを食してきたが、その中でも特に記憶に残る美味しさであった
同じく冬のコースから‟河豚唐揚げ“。筆者もこれまで少なからず河豚の唐揚げを食してきたが、その中でも特に記憶に残る美味しさであった
冬のコース蓋物の‟鰤と大根の炊き合わせ“。シンプルな料理ではあるが、大根の透明感のある味わいにプロの技を感じる一品
冬のコース蓋物の‟鰤と大根の炊き合わせ“。シンプルな料理ではあるが、大根の透明感のある味わいにプロの技を感じる一品
河豚会席の〆といえば雑炊が定番だが、同店では京揚げとともに炊き込みご飯として提供する。河豚との新たな出会いを感じられる味わいだ
河豚会席の〆といえば雑炊が定番だが、同店では京揚げとともに炊き込みご飯として提供する。河豚との新たな出会いを感じられる味わいだ
今回、テーブル席の個室が増えたことで靴を脱がずに食事ができるようになった。さらにさらに2人で落ち着いたディナーを楽しみたいというお客さまの声に応え、新たに2人用の個室も設けた(画像は6人席の個室)
今回、テーブル席の個室が増えたことで靴を脱がずに食事ができるようになった。さらにさらに2人で落ち着いたディナーを楽しみたいというお客さまの声に応え、新たに2人用の個室も設けた(画像は6人席の個室)
同店は最大80名を収容できる個室も備える。同規模の宴会需要は減少傾向にあるといわれるが、同店では今なお定期的に利用されているという。赤坂という一等地にあり、これだけの広さを室料なしで利用できるのは大きな魅力だ
同店は最大80名を収容できる個室も備える。同規模の宴会需要は減少傾向にあるといわれるが、同店では今なお定期的に利用されているという。赤坂という一等地にあり、これだけの広さを室料なしで利用できるのは大きな魅力だ

取材・執筆 毛利愼 ✉mohri@ohtapub.co.jp

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