Sky Bar & Dining Stellar Gardenのバーラウンジ
2025年に開業20周年を迎えた東京都港区のザ・プリンス パークタワー東京。5月から始めた高層階の改装が10月に完了し、33階の「Sky Bar & Dining Stellar Garden(スカイバー&ダイニング ステラガーデン)」と「Private Dining Brise Verte(プライベートダイニング ブリーズヴェール)」、スカイバンケット、32階のスイートルームとプレミアムクラブラウンジをリニューアルオープンした。改装内容の詳細とリニューアルの狙いについて同ホテル総支配人の神田 泰寿氏に聞く。
インバウンド需要の増加と新しい訪日目的に着目
総支配人 神田 泰寿氏
ザ・プリンス パークタワー東京は2005年に東京プリンスホテル パークタワーとして開業。2007年よりプリンスホテルのフラッグシップブランドを冠して営業を続けている。開業20周年となった2025年には高層階のリニューアルを実施。最上階の33階ではSky Bar & Dining Stellar Garden(以下、ステラガーデンと略)、Private Dining Brise Verte(以下、ブリーズヴェールと略)、スカイバンケットを、32階はスイートルームとプレミアムクラブラウンジを改装した。
今回の取り組みはインバウンド需要の急増を背景に、ホテルの強みを最大限に訴求することを念頭に置いたと総支配人の神田 泰寿氏は話す。
「東京のシンボルの一つである東京タワーを至近で見られる唯一無二のロケーションを有しているのが当ホテルの強みです。この絶景体験が叶う新たな東京の特等席をホテルのコンセプトにしております。その特等席を今回リニューアルしました。その背景には訪日外国人需要が急速に伸びていることがあります。2024年度は宿泊の外国人比率は約65%、最上階のステラガーデンも直近の外国人比率は70%を超え、海外ゲストを中心に連日入場待ちが続いています。SNS、口コミなど東京で必ず訪れるべき絶景バーとして紹介されていることも後押ししているようです」。
リニューアルではインバウンドが日本へ来る目的の変化にも注目。「訪日外国人の三大訪日目的として、一つは富士山や京都などの観光名所を「訪問する」こと、二つ目は寿司、天ぷら、鉄板焼きなど日本食を「食べる」こと、三つ目は銀座、渋谷などで「買い物をする」ことが挙げられます。これらに加えて昨今浮上しているのが、映えスポットで写真や動画を「撮る」ことです。こうした潮流にも着眼し、夜景と東京タワーを間近に見られる東京らしい体験を提供する、ホテルの強みや魅力を尖らせて、さらにホテルの価値を向上させるために今回の改装を行ないました」。
デザインコンセプトに据えたのは「THE TOKYO FUSION」だ。東京の景観や東京タワーのそばで、伝統や文化を背景にしながら、上品さ、先進的でラグジュアリーな質感を持った空間を創出することを心がけたという。カラースキームは、東京タワーとの親和性を深めるようインターナショナルオレンジや芝公園に広がる緑をアクセントカラーに取り入れ、高層階のきらめきや伝統文化を現代風に再解釈したインテリアを各所に配したという。


バー&ダイニングを拡張しさらなるパノラマビューに、西洋料理やスカイラウンジも使い勝手よく改装
今回のリニューアルの目玉は33階の一体的な大規模改装だろう。ステラガーデンはバーに加えてダイニングエリアも新設し大幅に増床。スカイバンケットにアクセスできる扉も新設した。
また、西洋料理を提供するブリーズヴェールは、大型レストランから4室のプライベートダイニングに生まれ変わった。それでは各施設の特徴と狙いを見ていこう。
ステラガーデンはどの客席からも東京タワーや夜景がみられるようフルリニューアル。バーはこれまでの54席から84席にし、1日3組限定のプラチナシートプランも販売開始した。新設したダイニングエリアは116席を設け、朝食は和洋ブッフェ、ディナーはアラカルトとコース料理を提供している。
「バーエリアのプラチナシートは東京タワーを正面に見て一人占め気分になれるところが強みで、ボトルシャンパンとオードブルプレートをセットにして10万円で販売しています。国内のお客さまにプロポーズの場所としてご利用いただくこともあります。また、インバウンドはSNSで発信するためによい場所を確保したいというニーズが多いです。当初この価格設定に半信半疑だったのですが、実際に販売してみると好調な出だしとなりました。それ以外の客席は予約を取らずにご案内することで、回転率を高める戦略を取っています」。
ブリーズヴェールはシェフこだわりのコースを個室で提供するプライベート感のダイニングに進化。
「100席の大型レストランから4室26席のプライベートダイニングにリニューアルしました。料理はフランスの料理コンクールで入賞経験を持つ料理長の茂手木 了が手掛けております。自ら足を運んで選定した契約農家や契約漁港から直送された厳選食材を特性に合わせて提供することを得意としています」。
また、スカイバンケットの改装は用途の幅を広げることを目指した。
「今回の改装で私がどうしても作りたかったのがステラガーデンにつながる扉でした。これにより、ステラガーデンの混雑状況によってはセカンドバーラウンジとして活用できます。また、日中は婚礼でスカイバンケットを利用される列席者の控室としてステラガーデンを使用できます。まず列席者をステラガーデンにお招きし、扉を開けるとそこに披露宴会場が現れるという、新たな婚礼スタイルも提案しています。さらに、スライディングウォールで区切り、東京タワーの見えるブリーズヴェールの個室として20名程度の会食利用ができるよう考えました」。


スイートルームはニーズに合わせて刷新し4名以上も利用可能に、クラブラウンジは約3倍に拡張
ザ・プリンス パークタワー東京では客室階を2階のガーデンフロア、3~18階のパークフロア、19~28階をパノラミックフロア、29階以上をプレミアムクラブフロアにカテゴリー分けしている。今回のリニューアルでは最上位クラスの32階の改装に着手した。
そして、このフロアに設けられているスイートルームも需要を見直して刷新。
「改装前までは200㎡以上のスイートルームが3室ありましたが、正直言って稼働があまりよくありませんでした。そこでインバウンドやファミリー層などが利用しやすい4~5名で宿泊できる70~135㎡のスイートルーム5室に改装しました。その一つがタワービュースイートで、名前のごとく東京タワーを独占する絶景を誇ります。定員5名のパノラマスイートは天気のいい日はベッドから正面に富士山が見えます。デイベッドのようなソファーを置き、子どもたちが遊んだり、寝かせるような使い方もできるでしょう。ファミリースイートはキッチンを備えており、長期滞在にも対応しています。ビューバススイートはレインボーブリッジを望む大きなバスタブを擁し、カップル需要などを意識しました」。
また、同階に位置するプレミアムクラブラウンジも既存エリアを拡張して、39席から3倍近くの110席まで増席。従前の東京タワーエリアに加え、東京スカイツリーエリア、レインボーブリッジエリアまで見渡せるぜいたくな空間へと変貌した。
「席数を増やしたのは手狭になってきたことに加え、ADR向上も期待しました。インバウンドは長居しないのですが、ちょっとビールを飲んだり、食べ物をつまむなど頻繁に利用されます。
また、プレミアムクラブフロア以外の客室もラウンジアクセス権付きの宿泊プランを販売することで客室単価アップが可能となります。
プレミアムクラブラウンジには東京タワーと東京スカイツリーを眼の前に臨む予約制のタワーシートも新設しました。通常1名席は90分制3000円ですが、1日1万円でリザーブすることも可能です。2名席や4名席も設けております」。
日本のシンボルである東京タワーと富士山を臨める強みを最大限に生かした大規模なリニューアルに踏み切ったザ・プリンス パークタワー東京。その結果はどうだったのだろうか。ステラガーデンでは新たに販売を始めたシグネチャーカクテルや、東京タワーを模した東京タワー ランドマークも人気で、ライトアップされた東京タワーを背景に画像や動画に収めるゲストが後を絶たないという。港区のナイトタイムエコノミーにも一役買っているのではないかと神田氏は胸を張る。
また、スイートルームは4名部屋から予約が埋まっており、戦略が見事に当たっていると言えるだろう。ニーズに合ったサイズ感と仕様に改装したことで、ADR、稼働率ともに上昇しているそうだ。
今後もさまざまなトライアルを続けさらなるアップセルを目指すザ・プリンス パークタワー東京。そびえ立つ東京タワーのオーラを受けてさらに存在感が増した同ホテルの挑戦に今後も期待したい。




―――
取材・オータパブリケイションズ 岩本 大輝、文 アクセント、撮影 林 正




