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第6回タップアワード 優秀賞 論文

地域観光のためのNarrative Hospitality Strategy ロールキャベツ仕掛人 尾嵜悌之

2015年07月17日(金)
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ホテル・旅館全般に関わる、優れたアイディア・事例・提言などの論文を顕彰することによって、業界の発展に寄与するタップアワード。本項では第6回の優秀論文である尾嵜悌之氏の「地域観光のためのNarrative Hospitality Strategy」を全文掲載する。

タップアワード

http://www.tap-ic.co.jp/awards/


はじめに
 
観光だけではなくビジネスなども含めて人の流動性が大きい大都市圏ではなく、訪問者が限られる地方の中小都市のホテル・旅館業が、来るべき観光大競争時代を生き残るためにはどうすべきだろうか?その問題意識に基づき、地方の観光戦略とその地域のホテル・旅館業がその中で果たす役割について考察してみると、言うまでもないことだがインバウンドの絶対量を増やしていくことが必要不可欠の戦略となるだろう。そのためには、観光業はその地域全体の魅力と一体化し、訪問者をその地域の物語のとりこにしてしまい、その物語を見届けるために何度でも繰り返し訪問させるような仕組みを作り上げることが必要となるだろう。本稿では、観光客を地域の物語の中に取り込み、その中に一体化させてしまうContextual Tourismと、その鍵となるホテル・旅館業のN a r r a t i v eHospitality Strategyのあり方について検討してみたい。
 
観光の新たなあり方
Contextual Tourism
 
Contextual Tourismとは、あまりなじみのある言葉とは思えないが、ある舞台において、ある文脈を準備し、参加者がその中に自由に参加し、自分でその文脈を解釈し定義した自分の役割を果たしてゆくというContextualな行動を、観光という分野に応用しようと思って作り出した造語である。実際のところ、これが完全に新しい概念か、と言うと、そんなことは全くない。観光業界でだれもがモデルケースとしてあげるディズニーランド・リゾートは、まさにこのContextual Tourismを徹底的に突き詰めたケースであると言える。つまり、架空の舞台に、様々なファンタジーの物語を織り込み、その中で訪問客は、ある人はお姫様になり、またある人はヒーローになりきって、その物語の中に入り込み、日常とは全く異なった体験をするということに価値を見出し、満足して帰り、更にリピーターとして戻ってくるのである。また、例えば、ヨーロッパにおいては、ケルンの大聖堂であるとか、その現代版ともいえるバルセロナのサグラダ・ファミリアなどは、巨大な建築物を何世代にもわたって作り上げていく、と言う歴史的な瞬間を目撃している、との感覚を訪問者に与えることによって、彼らを繰り返しその町にひきつけ、その行動自体がまた物語になっていく、と言う循環を作り出していると言える。
 
より参加型の物語としては、巡礼の旅があげられるのだろう。信仰に基づいたサンティアゴ・デ・コンポステーラへの旅には、特にキリスト教徒でもない日本のような国からでも多くの参加者がいると聞いている。これは、宗教的な文脈よりも、より普遍的な文化的な文脈を強調して、誰にでも物語化しやすい経験に一般化したためともいえるだろう。一方で、ホエール・ウォッチングやエコ・ツーリズムといったものは、絶滅の危機に瀕する動植物を実際に見ることによってその危機を救うやり方を一緒に考えよう、と言う大きな物語の中に顧客を組み込むことによって、単なる消費以上の感覚を訪問者に与え、満足度を高めている。これらのことに共通するのは、訪問者が自分の居場所を見つけられるような大きな物語を準備し、その演出をしてゆくことを観光の鍵としていることである。かなり大きな例ばかりを挙げたが、これらが、私が提案したいContextual Tourismの具体的な姿である。

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