異国のような文化のなかで、やりたいことが広がった。

----遠藤総支配人ご自身の、これまでの経験で、いま活きているなと思うことはありますか
 
　就職する前から自分がやりたいと思ったことはできるかぎり実現させていこうという気持ちは持っていました。そこから副次的に「こういった学びがあったのか」というような知識を持てたところがありましたね。入社した後からは、「0から1を作り上げたい」という思いが膨らんできたように思います。
 
　例えば、元々前職の「界 津軽」は、希望とはまったくエリアに配属でした。でも、実際に行ってみると関東にはなかった津軽弁や伝統工芸、お祭りという面白い魅力がたくさんありました。異国のような文化のなかで、やりたいことが広がりました。「界 津軽」のご当地楽である津軽三味線を私も弾きたくて、津軽三味線の先生に教わって弾きました。そこで地域との連携のあり方を新たに学ぶことができました。界ブランドにおいても地域ならではのおもてなしをお伝えすることをお客さまにお約束しています。それを実際に実現するためには地域の人たちとどういったコミュニケーションをとればいいのか、どういった価値観をこの地に住む人たちは持っているのかをどう探ったらいいのかというスキルが、図らずも得られました。そして、「ひとつずつ、まずはやってみる」ことを進めてみる。振り返ってみると、あのときの経験が活かされていますね。
 
----今後やりたいことは、ありますか。
 
　日々のサービスにおいて、決められた文言を話すだけではなく、その文言から紐付けてスタッフ自身が気づき、アイヌ文化で感銘を受けたことを自分の感情に伴ってお伝えすることを習慣にしたいですね。また「界 ポロト」は白老町とパートナーシップ協定を締結していて白老町の魅力発信も役割として担っているので「界 ポロト」の魅力だけではなく白老町も知ってもらえる魅力を作っていきたいです。

　また最近は、ほかのホテルや旅館さんでも自然のアクティビティや催し物が拡大しているように思いつつ、そのなかでも「界 ポロト」では、スタッフも一緒になってお客さまと時間を共有できることを魅力として作り上げられるといいですね。そこでお客さまとの特別な関係性を築くことが、ほかのホテルとの差別化にも繋がると思います。よりそこをとがらせていきたいですね。
 

「イケマと花香の魔除けづくり」の体験をした立教大学観光学部の取材班

「界 ポロト」 取材後記
コンセプトに忠実な建物、温泉、アクティビティがあって飽きることがなかった。それらを組み込んだプランに強制感はなく、宿泊者がゆっくりと過ごすことを前提にしたものだったことが宿に惹き込まれた要因の１つと言える。また、遠藤総支配人を含め、関わってくれたスタッフの皆さんそれぞれ印象的で、宿のファンになると同時に、人のファンになったことから星野リゾートの組織体制に魅力を感じた。一般客として行くと取材で訪れた時とではサービスによる満足感に違いがあるのか気になった。（三浦あおい）

界ポロトはアイヌ文化という自分にとっての異文化を体験できるという非日常性がありながらも、集落にたとえられた施設やチセにたとえられた客室によって、まるでずっとこの白老の地で自然とともに生活してきたかのような日常感をも味わうことができる場所でとても居心地がよかった。湯治体操やご当地楽のようなアクティビティではスタッフの方やほかの宿泊客の方々と同じ時間を共有でき、自分自身が集落の一員であるように感じられた。施設の設計や調度品、料理、アクティビティ、そして遠藤総支配人の言葉の一つ一つからアイヌ文化への尊敬の念が感じられたのも界ポロトの大きな魅力の一つであると感じた。（菊地梨奈）

【施設概要】
界ポロト 
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiporoto/
所在地：〒059-0902 北海道白老郡白老町若草町1-1018-94
客室：42部屋
付帯施設：食事処、温泉、湯上がり処、トラベルライブラリー、スキー乾燥室
事業主：星野リゾート
運営：星野リゾート
設計：NAP建築設計事務所
施工：前田建設工業
2022年1月14日開業