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  • 連載 価値を創るホテリエ 第十二回 「コンピテンシー(付加価値)モデルとは」
連載 価値を創るホテリエ

Ⅳ.人を動かす(その3)

2018年12月18日(火)
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コンピテンシーモデルの考え方は、宿泊・サービス業界に於いても広く応用することができます。

「宴会セールスの売り上げが多い営業マンがどのようなセールスツールやトークを用いているのか」、「成約率の高いウェディングプランナーのニーズの引き出し方は」、「馴染みのお客様からいつも声をかけられるレストランサービスが、普段から会話でこころがけていることは何か」、「お客様からのお褒めの言葉が多いフロントマンの接客のポイントは」、など、コンピテンシーモデルとして取り入れられるポイントは多いと思います。

そしてこうしたコンピテンシーを持った人(=付加価値のある人)が、コンピテンシーモデルを提供してくれることによって、組織全体のパワーアップが達成されることになれば、会社はこの能力・付加価値を高く評価(=コンピテンシー評価)し、それに見合った給与が与えられることになります。
 
人を育てる上でもうひとつ必要なのが、「叱る」ということです。意外にこれが下手な人が多いことに驚かされますし、また特に若手社員の中には「叱られる」ことに慣れていない人も少なくなく、不幸にも両者が組み合わさると、簡単に“退職”という最悪の結果に至ってしまうこともあります。

人を「叱る」上で大切なのは、叱る目的が、あくまでも「相手の(成長の)ためを思って」であること、そして理性的に「悪いところ、改善すべきこと」をわかりやすく伝えることです。

叱られた方が「何故叱られたか」を理解できなければ、叱った相手に対する反発だけしか残りません。そうならない為には、なぜ叱っているか、をきちんと理解させなければなりません。ここで大事なのが、『ものごとの本質をとらえて話をする』ことです。

たとえば、レストランの接客サービスを担当する部下に、お客様からクレームがあった場合、その場で安易に「クレームを受けた」という目先のことを叱ってはいけません。

部下に代わってお客様にお詫びをするのは上司の仕事ですから、その場はお客様のクレーム内容をよく聞いて対処するに留め、部下とは終業後に別途時間をとって、クレームに至る経緯について、部下の言い分をきちんと聞くことが必要です。部下も上司に話をする過程で頭の整理ができる筈で、冷静に自分の行動を見直す機会となりますし、上司に話をすることでクレームを受けたストレスはかなり解消され、自分の話を聞いてくれる上司を、信頼できると感じてくれるはずです。

お客様と部下の、双方の言い分を聞いて、状況を理解したうえで、何故お客様が不快と感じることになったのか、「何がいけなかったのか」について、一緒に考えて、答えを導くようにすることです。
この「何がいけなかったのか」というところが、ものごとの本質です。この本質をきちんと理解できれば、この部下は同じ誤りを繰り返すことはありません。

「あいつは何度注意しても同じようなミスをする」という場合、上司が目先のミスだけを注意して「何故そうなったか」、「本来どうすべきなのか」ということを、考えさせていない場合が多いように思います。

このレストランのクレームの例で、クレームの報告を受けた上司が、忙しい営業時間のさなかに、部下に「お客様をおこらせるんじゃない!」とだけ一喝して終わりにしてしまった場合(実際にはこういうケースが少なくないようですが)、部下は一方的におこられたことに対して不満を抱え、自分の話しを聞いてくれない“頼りにならない上司”に対して不信感を持つでしょう。そしてその後に何かあった場合でも、もうこの上司に相談することはなく、一人で悩みや不満を抱えてしまうことになります。

また自分の何がいけなかったかを理解、反省しないままでは、クレームを付けたお客様へも悪感情が残り、対応が悪くなったり、同じ誤りを繰り返す、悪循環となってしまうことが懸念されます。

部下の成長のためには、改めるべき点について、きちんと部下を叱ってやることが必要ですが、それを理解させる為には、理性的に話をする必要があります。

「叱る」と「怒る」は違うことを肝に銘じてください。繰り返しになりますが「叱る」は相手の為を思って悟し、誤りを正す行為であるのに対して、「怒る」は自分の感情を発散する行為で、相手のためにはなりません。

相手に理解させる、という目的のためにも、叱る際にはあくまでも冷静に理性的に話をするべきで、決して感情的になったり、声を荒げたり、ということがあってはいけません。また、上司によってはとことん相手を追い詰めて、論破してしまう人もいますが、これも本来の「叱る」目的から逸脱しています。相手を追い詰めるまではせずに、どこかに逃げ道を用意しておくことも大事ですし、できれば相手の持っている良いところを認めたうえで、悪いところの改善を求めれば、相手はより受け入れやすくなります。

「君にはこういう良いところがあって、そこを認めてくれるお客様も多いのだから、ここを気をつければもっと…」と言われれば、誰しも前向きに受け止められるはずです。

「叱る」ことによって部下を成長させる、という本来の目的を効果的に達成するためには、相手に本質を理解させなければなりません。どうすれば相手が素直に聞いて、理解してくれるか、を考えれば、相手の言い分もよく聞いたうえで、わかりやすく状況を整理して一緒に考えることが効果的である、という結論にたどり着くはずです。

人を育てる、ということに関しても、目的を達成するためにどうするか、という戦略的思考が役に立つ、ということになります。

そして部下の力を引き出すためには、その上司に人望がなければなりません。

「この人に言われたら」「この人のためなら」という力を発揮する為のキーワードを部下に持ってもらうには、あなた自身が魅力的な上司でなければなりません。

では「魅力的な上司」とは…。

状況を客観的に把握し、きちんとしたビジョンと戦略を持って力強く組織を引っ張り、部下のことをちゃんと見て、必要な時に適切なアドバイスや励ましをかけてくれる、困ったときには逃げずに問題解決にあたる頼りになる存在。

ここまで読み進んでくださった方には、ご理解いただけることと思います。

あなた自身が、こういう魅力的な上司として部下に信頼され慕われる、人のマネジメントに於いても『付加価値のある存在』になって頂きたいと思います。

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