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特別企画 一般社団法人全日本ホテル連盟 中部支部

業界団体として国や自治体と積極的に関わり、共に発展を目指せるパートナーとなるべき

2024年06月11日(火)
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 一般社団法人全日本ホテル連盟(ANHA)の中で北陸エリアから東海、中部エリアの広範囲をカバーする中部支部。ここでは中部支部長の藤橋 由希子氏に同会の活動内容や中部エリアのホテルマーケットの動向に加えて2024年1月に起こった能登半島地震の対応などについて伺った。
 



一般社団法人全日本ホテル連盟
中部支部 支部長
藤橋 由希子氏
(金沢の宿 由屋るる犀々 常務取締役)

新型コロナは収束へ、インバウンドは地域格差も

■全日本ホテル連盟中部支部の管轄エリアと加盟のホテル数について教えてください。
 
 中部支部は北陸エリアと東海エリアを管轄しています。北陸エリアは富山県、石川県、福井県、東海エリアは静岡県、愛知県、岐阜県、三重県と、日本海側から太平洋側まで広いエリアに渡っています。加盟ホテル数は昨年からは20ホテル近く増え、正会員が19ホテル、準会員が165ホテルの合計184ホテルです。準会員数が多いのは、チェーンホテルだと1ホテルが正会員、そのほかは準会員になるためです。
 
■昨年の活動状況はいかがでしたか。
 
 昨今は人手不足のためもあって、定例会を開催しても日程調整がつかなかったり、長時間ホテルを留守にできないと、活動に参加できないホテルが出てきました。そこで中部支部では会員ホテルが有益な情報や学び、交流の機会を得やすいよう、支部の域内事業だけでなく、隣接支部や本部事業についても情報発信を行い、意義ある事業には補助メニューを提示するなどして参加を促してきました。特にコロナ禍を経て、すっかり定着したオンラインでの事業は参加しやすいようでした。
 しかし会員ホテルと意見交換会を実施した際、「WEBの中には様々な情報があふれているように見えるが、実際は求める情報にはなかなか出会えない」という声を聞きました。そういう意味では議論しやすいリアルでの機会はやはり必要だと感じています。中部支部ではこのような声を支部活動に反映させてゆきたいと考えています。
 
■新型コロナ5類移行で、ホテルマーケットに変化が生じましたか。
 
 ようやく新型コロナのパンデミックが収束したというような感はありました。特に外国人観光客については、肌感覚でもコロナ禍以前よりも増えたと感じられます。通常ですとGW明けは一旦、観光レジャー需要が落ち着くのですが、昨年はオフシーズンの割には集客できていたようですし、その中に占める外国人比率は非常に高いものがありました。「自由に動けるようになったから来た」というような方々も多くいらっしゃったように見受けられました。
 
■稼働や単価は2019年水準に到達されているのでしょうか。
 
 中部支部では日本人の戻りは2019年に対して7〜8割ぐらい、インバウンドは北陸エリアと中京エリアでは状況が違っています。北陸エリアは2019年に匹敵する回復を見せるホテルや、場合によってはもう少し伸びたところもあるようです。一方で中京エリアは、中部国際空港発着の国際便が完全に復活していなこともあり、他地域と比べてインバウンドの復調に時間がかかっていると思います。
 また、単価に関してはどこも上がっているようです。いろいろな仕入れ価格が上がっており、ホテル業界は人材不足なのでスタッフの給料も上げなければなりませんから。そのためにも単価を上げている状況なのですが、中部支部下では中京エリアや金沢を筆頭に、とにかく人材不足が課題になっています。

 

社会的責任を担うためホテル業界としてのマニュアル策定も必要

■今年の1月に能登半島地震が発生しましたが、どのような状況だったのかお聞かせいただけますか。
 
 私自身金沢市内の宿泊施設を運営していることもあり、被災地エリアとして対応すべきことが多く、なかなか支部活動として震災対策に取り組む余裕がありませんでしたが、本部では支部に代わり、地震発生後の被害状況把握に努めてくれました。また、通常本部は台風等による局地的な被害の場合、見舞金など持って行くなどの対応をしていますが、今回の地震では被害が広範囲に亘っていることと、和倉温泉など非常に甚大な被害を受けている施設もあることから、連盟としての対応が難しいと判断し、被災地に義援金を送る形をとりました。あとは会員ホテルそれぞれの判断にお任せするというスタンスに切り替えたところ、募金箱を設置するホテルもあるようです。
 金沢市内の状況はというと、発災後最初にやって来たのが復旧作業員の受け入れ需要で、金沢市内のホテルの多くは一時パンク状態になっていました。その際に少し気になったことがありました。ホテル業界は価格を需要の変化に合わせる変動価格が一般化しています。今回も一部のホテルでは復旧需要を見込んだレベニューマネジメントで、びっくりするような高値になっていたようです。価格設定は現地ではコントロールできず、それをインターネットなどで見た方々から便乗値上げではないかという声も上がっていました。こうした事態は業界としてもあまり望ましいものではないと思います。日本のホテルはもう少し人道的で節度があってほしいと思います。
 
■被災者向けに自治体が客室を借り上げたようでしたが。
 
 1月初頭には自治体から被災者に客室の提供ができないかという調査が入りました。しかしながら金沢市内のホテルには復旧作業の方がたくさん来ていたので、回答しにくい施設も多かったと思います。復旧にいつまでかかるかもわかりません。また、受け入れ条件を素泊りか3食付きかで選ぶのですが、朝食なら提供できるビジネスホテルの中には、素泊まり設定を選択するしかなかったという声も聞きました。
 復旧に際しては国で対策検討委員会等が立ち上がると思いますが、こうした問題が起きないようにするために、そのような委員会の場には宿泊業界の人間も入るべきだと思いましたね。連盟としても要望を上げて欲しいとのお願いもしました。
また、ホテルには有事の際、避難所としての役割など社会的責任があるので、今後、水や食料の備蓄などを含めてマニュアルのようなものがあればよいと感じました。
 
■風評被害も感じられましたか。
 
 発災から2月の中ぐらいまでは風評被害があり、キャンセルという形で如実に現れましたが、3月からは春休みや桜のシーズンなので昨年の段階でかなり予約が入った状態でした。当館の場合、すでに入っていた予約に目立ったキャンセルは発生しませんでした。とはいえ、団体旅行はこうした事態に敏感なので、募集を取りやめるという決断はあったと思います。
 観光は人の流れを作り出さなければ成り立たないので、ネガティブな表現をするのではなく、応援という方向に切り替えた伝え方をしていただきたいですね。
 
■最後に、今年の抱負などがありましたら教えてください。
 
 中部支部エリアでは今後、さまざまなイベントが予定されています。例えば2026年には愛知・名古屋アジア競技大会および、愛知・名古屋アジアパラ競技大会が開催されます。アジアパラ競技大会には、選手だけでなく観客の方にもいろいろなハンディキャップをお持ちの方が来られるので、その方々がスムーズに動けるよう、アクセシビリティーのマニュアルを作ろうという動きがあり、私もオブザーバーとして参加しました。業界団体だからこそ入ってくる情報もありますので、会員ホテルにどのような準備を進めて行くべきかなどをお伝えして、理解を求めています。
 また、ホテル業界では障害者の受け入れ経験が少なく、対応に不安を抱える声も聞かれますが、今回、当事者のお話を聞くと自分たちはここまでできるから、ここの部分だけサポートしてほしいといった現実的な折衷案を持っていることが分かりました。施設改修ばかりが必要なわけではなく、スタッフのサポートで
クリアできるものも多いです。準備段階で不安なことは、当事者に気軽に相談すればアドバイスくれることをお伝えしたいと思います。お互いの立場への理解を深め、受け入れのハードルを下げて良い関係になれることを願っています。
 

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