HOTERES(週刊ホテルレストラン)では、これまで飲食店・宿泊施設に関する“ 喫煙・分煙・禁煙” について、セミナー、記事掲載等さまざまな形でレポートを行なってきた。今後もこのテーマについては引き続き追いかけていく予定だが、今回はこれらに加え今、さらなる大きな流れが起き始めているのでそれを紹介する。
それがVAPE(ベイプ)だ。
読者の方にはまだ聞きなれない言葉かもしれないが、欧米では既にかなり認知の進んでいる単語であり、2014 年にはオックスフォード・ディクショナリーにより「今年の言葉」として選ばれた「VAPE(ベイプ)」。「VAPE」はもともと「蒸気を吸う」という動詞であるが近年では「電子タバコを使う行為や、電子タバコそのものを指す言葉」として「VAPOR(ベイパー)、VAPING(ベイピング)」と共に普及している。一説によれば最初に電子タバコを指してこの言葉が使われたのは1983 年に雑誌に掲載された論文内とされ、その後ここ10 年の電子タバコ生産の増加に伴い徐々に普及したと見られている。
さらに「VAPE」という言葉の認知拡大と共に電子タバコ産業自体の可能性も昨今では期待されるようになっている。米投資銀行ゴールドマン・サックスが2013 年に発表した「今後成長が見込める八つの分野」でも1 分野として、日本でも既にその技術の高さが注目され
ている、3D プリンターと共に選ばれていることからしてもその将来性が大きいことは明らかである。
そんな「VAPE」であるが、日本で広く認識されている電子タバコとは違う。日本ではまだまだタバコに似せた形をした、いわいる「タバコの代替品」というイメージを持っている消費者が大方を占めているのが現状なのだが、欧米で広く愛用される「VAPE」のそれは「代替品」ではない。「VAPE」という一つのジャンルと言っても過言ではない別物の形状をしているのだ。


そしてこの「VAPE」、 海外では すでにかなりの 利用者拡大を見せている。
その象徴と言えるニュースが、先述したオックスフォードディクショナリーによる「今年の言葉」への選出であり、ゴールドマンサックスが見込む将来性の大きさである。
さらにイギリス・ロンドンでは、電子タバコカフェ「TheVapeLab」がオープンするなど、「VAPE」を楽しめることを主たる目的として成り立つ飲食店も登
場し始めている。この動向は既に文化的、商業的に市民権を得ている「シガーバー」などと類を同する嗜好品市場でも、電子タバコ文化の認知拡大がなされていることの証明でもある。
そのような流れに呼応し、日本でも一部の愛好家にさまざまなフレーバーの味や香りを楽しむ新しい嗜好品として電子タバコは海外製品をもって愛用されていた。ただ日本では法律の規制(日本では、ニコチンの入ったリキッドの販売は薬事法により禁止されている)があるため、なかなか欧米の商品をそのまま輸入するなどの形をとることが難しく、主にニコチンの入ってないリキッドが利用されている。ここに欧米における電子タバコ産業の拡大と日本の現状との間のズレが生じていた。が、ここに来て日本国内において、タバコメーカーからタバコ葉を使った「VAPE」が登場し始めている。その一石を投じたのが2013 年日本たばこ産業㈱がアメリカのベンチャー企業と提携して販売を開始した「Ploom(プルーム)」だ。本商品はタバコ葉の入ったポッドを電気で加熱してその蒸気を吸うことで喫煙を楽しむ形だ。また2014 年11月にはフィリップ モリス ジャパン㈱から粉末のタバコ葉をシート状にしたものを巻き、スティックにしたカートリッジを電子加熱し、そこに発生する蒸気を吸う「iQOS(アイコス)」という商品も登場し、日本の電子タバコ市場も徐々に活気を帯び始めている。
国際的な流れから来るトレンドとしてはもちろんのこと、日々肩身の狭い思いをしている愛煙家やファッションとして楽しむ層などさまざまな消費層に、従来のタバコとは違う、新しい嗜好品である「VAPE」が日本でも今後さらに普及することは予想に難くない。
さすれば飲食店や宿泊施設事業者においても顧客サービス、顧客獲得の両面から「VAPE」に対する正しい理解と対策が求められてくるだろう。もちろん、タバコに関する対策同様に、それぞれの施設によって、考え方は種々多様だが、例えば、「『喫煙』はNGだが、『VAPE 』ならOK」という施設の登場も大いに予想される(実際に徐々にではあるがそういった事例も出始めている)。
ホテレスとしても今後の「VAPE」の動向に大きく注目していくつもりだ。