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第1回 健康がKeyword レジャー・宿泊産業の新たな地平 第3回

経産省も取り組む「宿泊型保健指導プログラム」

【月刊HOTERES 2015年04月号】
2015年04月24日(金)
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前回の当コーナーで厚労省が実施に向けて検証中の「宿泊型新保健指導プログラム」の概要を紹介した。端的に表現すると生活習慣病の患者予備群に対してすでに行われている保健指導のプロセスの一部を、ひとまず糖尿病予備群に限ってホテルなどに宿泊して行うことで効果を高めようというプログラムのことである。一方で、経済産業省も一部厚労省とも協力しながら、健康寿命延伸産業創出推進事業の一環として同様のコンセプトのプログラムを民間事業者と連携して実証事業を進めている。今回は、この両省の取り組みについて考察する。

似て非なる両プログラムの成り立ち

実は、経産省と厚生労働省が実現を視野に取り組んでいる宿泊施設への宿泊をプロセスに組み込んだ保健指導プログラムはコンセプトが非常に類似していることから、記者は当初同一の事業であると理解していたのだが、どうもそうではないらしい。

厚労省を含め関係者に確認をとったところ「宿泊型の保健指導プログラム」という基本コンセプトこそ同一だが、それぞれの事業の成り立ち・趣旨は異なるという。 整理すると、厚労省の取り組みはすでに行われている「特定健診・特定保健指導」(表 1)の延長線上にある新たなスキームという位置づけで、公的制度としての導入を目指すものであり、経産省の取り組みは「健康寿命延伸産業創出推進事業」(表 2)のモデル事業で、契約上は経産省の委託事業の一つ(表 3)ではあるけれど、あくまでも(株)ベネフィットワン・ヘルスケア(=民間事業者)の推進する事業という位置づけである。ちなみに、同社は厚労省の推進する「宿泊型新保健指導試行事業」の採択団体一覧にも名を連ねている。

いずれにせよ、どちらの事業も生活習慣病予備群を対象に、観光地において短期間で集中的に予防プログラムを実施する新しい「宿泊型保健指導」と、専門スタッフによる保健指導を組み合わせたハイブリッド型プログラムであるという点で共通している。

スマート・ライフ・ステイの概要

昨年、(株)ベネフィットワン・ヘルスケアが実施したスマート・ライフ・ステイプログラムの内容を簡単に紹介しよう。 参加者は、湯河原、長野、熱海など有名観光地のホテル・保養所に宿泊し、座学やグループワークを通じて正しい糖尿病の知識と服薬管理を学ぶほか、予防のため目標プランニングと生活改善のための食事および運動指導を受ける。また、地域の特性を生かしたトレッキング体験や、ヘルシーな地元料理による健康的な身体づくりなど、娯楽的要素を含んだプログラムを受講する。宿泊型保健指導終了後は管理栄養士や保健師などの専門スタッフが約 6カ月にわたり、電話やメールを通じて支援を行う。一次事業は 2014年 9月からスタートし、150名以上の参加者を集めた。検証作業が現在行われている。

「宿泊」+「保健指導」に寄せられる高い期待

そのスタートラインや地盤が違っているとしても、「宿泊型の保健指導」という新たなスキームの確立を目指すという一点においては両省の目標は共通であり、いずれもその効果測定事業を急ピッチで進めていることから、遠からず何らかの結論が出されることは間違いなさそうだ。

今後さらなる極端化が予測される少子高齢化社会をにらんで、フィットネスや健康食品関連をはじめ多様な事業者が「健康寿命延伸ビジネス」を成長分野と判断し参入を狙っている状況だが、厚労省と経産省がともに「宿泊」を重要なキーワードとして一つの枠組みを構成しようとしている点が興味深い。両省の「宿泊」+「保健指導」というスキームに寄せる期待の高さがうかがえる。

■表1:特定検診・保健指導とは
「特定健診・保健指導」とは、40歳以上 75歳未満(年度途中に 75歳に達する人を含む)の被保険者および被扶養者を対象として、メタボリックシンドロームの予防・解消に重点をおいた、生活習慣病予防のための健診・保健指導であり、医療保険者は実施が義務づけられている。
従来型の健診・保健指導は「病気の早期発見・早期治療」を目的としていたが、特定健診・特定保健指導では、内臓脂肪型肥満(メタボリックシンドローム)に着目し、その要因となっている生活習慣を改善するための保健指導を行い、糖尿病等の生活習慣病の有病者・予備群を減少させること(病気の予防)を目的としている。

■表2:「健康寿命延伸産業創出推進事業」とは
「健康寿命延伸産業」という概念は 2013年 6月 14日に閣議決定された「日本再興戦略」で掲げられたさまざまな分野の成長戦略の重要テーマの 1つとして「国民の『健康寿命』の延伸」が挙げられたことが発端となり誕生した。

「健康寿命延伸産業創出推進事業」とは急速に進む少子高齢化を背景に、「高齢者が健康な状態を長く保つことができれば、医療・介護に必要な社会保障費の適正化を実現できる」という考え方をバックグラウンドに、経産省が主体となって、医療機関と民間企業が連携してサービスを構築し、健康増進・予防や生活支援を担う市場が創出することを目的に行っている事業のこと

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