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第2回 高桑 隆の「良くも、悪くも、大変化。いま日本の農業と『食』を考える」

第2回 「農業の大規模化」は本当に、農業経営の唯一の生き残り策か……? 小規模農業でもやり方次第、創意と知恵で勝負

2015年11月02日(月)
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塚本さんの自宅兼事業所
明るく仲の良い塚本さん夫妻

新潟県燕三条市に、金属加工の工業団地がある。“円高”になると、マスコミがスプーン等の零細金属加工場を取材し、“円高でもう輸出は無理!これじゃつぶれるしか無い~!”と悲痛な声を取材して報道する。
 
しかしそうした会社の横の地場工場に、ハーレーダビットソン(米国製大型バイク)の計器板を作っている会社がある。
 
そこでは、日本の有名バイクメーカーの計器板も作っている。円高に負けない独自の技術力が、世界中の企業から評価されて注文が舞い込む。
 
驚くことにそこは、IT化された完全ロボット工場で、従業員は20~30名しかいないと聞いた。その他にも、世界が驚くような精密金属加工の技術を持っている会社がある。例えばステンレスのビアマグカップ。
 
このビアマグはビールを注いでも、冷やしているわけではないのに、いつまでもビールが冷めないのである。オールステンレスの金属駒が回っている。微妙なバランスで研磨されているため、何の力もかけないのに24時間以上回り続ける。
 
こんな驚くべき技術力を持ち、国内で無名、海外で超有目な企業が多数存在するのだ。
 
どうだろう……? 日本のモノ作りは、こうした中小零細企業によって支えられている。農家はもともと小規模な事業体だ。しかし、小さいが故に小回りをいかした家族経営こそ、実は強いのである。
 
お父さんとお母さん、娘さんと家族で農産物加工をして立派に経営している事業所も多い。千葉県匝瑳市、自分の田で収穫した米を使い、厚焼き玉子で巻いた太巻き寿司(750円)を作り、直売所や道の駅で年間3000万円も売り上げる農家がある。九十九里海岸近く、塚本さん御夫妻の自宅兼作業場がある。
 
「30年前、米が減反になったンだよね。それでさ、米余っちゃってヨ。しぁないな……と思っていたら、母ちゃんが言ったンだ。
“父ちゃん、私に米少しくんないか?”って。“どうすんだ?”って聞いたら、“朝市で、寿司作って出したいンさ”」
 
奥さんの“寿司が売れそうダ”というアイデアは見事に的中。
今では、直売所、道の駅、朝市など7ケ所に出荷して1日100本、特注でそれ以上売れ日も多いと聞く。
 
近頃は、米はJAに一切出荷せず、自家で使いきると聞いた。朝は五時起き。近くの奥さんや、嫁に行った娘まで動員しても製造が間に合わない。
 
「今じゃヨ、もち米の『揚げもち』や寿司詰め合わせも出荷してンだ……」
 
年間3000万円も売れたら、家族労働だけの自宅事業所では、利益が出過ぎて申告も大変だろう……と余計なことを心配してしまう。
このように、小規模だろうが、大規模だろうが、やり方次第で農業商売は成り立ってゆくのである。
 
米農家「つかもと太巻き寿司」
千葉県匝瑳市横須賀2355 (HP無し)

 

フードビジネスカウンセラー
㈲日本フードサービスブレイン 代表取締役
高桑 隆 Takashi Takakuwa
1950年北海道生まれ。神奈川大学経済学部経済学科卒業。74年、公開経営指導協会小売業通信教育「売場管理実務講座」文部大臣賞受賞。75年、㈱デニーズジャパン創業期入社。99年、㈲日本フードサービスブレイン設立。2000年居酒屋トレーニングセンター「長鳴鶏」を開店、脱サラ・独立開業支援。01年サッポロビール21世紀会(帝国ホテル)他、年間30回以上講演実施。02年法政大学にて「店舗独立開業講座」を開設、06年度第6期まで開講。04年服部栄養学園調理師専門学校で、フードマネジメント科目担当。05年産業能率大学非常勤講師に就任、ショップビジネス科目担当。06年桜美林大学非常勤講師に就任、フードサービス産業論担当。08年コンサルタント会館レストランマネジメントコンサルタント講座開設。

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